表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/136

理由

 この日訓練所内では、夜に行われるパーティーの準備で、教師に生徒が朝から慌ただしく動き回っていた。


 このパーティーは、見学者達も参加し、お目当ての生徒に声を掛けたり生徒が自分を売り込んだりと、お互いより良い人材の確保、就業先の確保を目的にした水面下の戦いが行われる、パーティーとは名ばかりの戦場だ。

 特に四年生の気合いの入り方は尋常ではなく、準備の合間には、目を血走らせ、あらかじめ情報収集していた見学者達の情報を頭に叩き込んでいたり、話し掛ける練習をしている姿がそこかしこにあった。



 そんな中、ユイは前日の魔力の使い過ぎで倒れた事でバーグ公認のサボりが認められ、部屋でのんびりと休息を取っていた。



 魔力は生命活動に無くてはならない力。

 使いすぎれば体が動かなくなるばかりでなく、命に関わる事もある。


 幸い、倒れたと言っても比較的軽い症状だったおかげで睡眠を取ると魔力は大分回復したのだが、普段二割の力で余力をたっぷり残しながら生活しているユイに取って、久々の全力投球の反動は大きく、一日経った今も怠さは消えず、ぐったりとベッドで横になっていた。



 静かな部屋の中で疲労した心身は睡魔を呼び、このまま眠りに身を任せようと目を瞑っていると、部屋の扉が開き、誰かが入ってきた気配を感じた。


 次いで、寝ていたベッドが僅かに沈み、頭を誰かに撫でられている感覚がする。

 撫でられている事に心地良さを感じ、更に眠気が襲ってくるが、誰かを確認しようと重い目蓋を開く。



 視界に写ったのは、美しい端麗なフィリエルの姿。 


 見学者の中にはフィリエルに負けず劣らずの美形の兄、アレクシスが来ていた事で、二人が並んでいる姿を見たいと言って女生徒達がうっとりしながら騒いでいたものだ。

 もし彼女達が目を開けて優しく微笑む麗しいフィリエルを目にしたのなら、興奮のあまりその場で気を失ってしまうのだろう。

 勿論、見慣れているユイは綺麗だなと思いこそすれ動じる事はなく、睡魔に負けないように眠い目を瞬かせている。



「起こしたか?」


「ううん、半分は起きてた」



 そう話している間もフィリエルは手を止めず撫で続けていて、今にも眠ってしまいそうなほど睡魔がそこまで迫っていた。



「体調は?」


「怠いだけ」


「そうか」



 短い受け答えを繰り返す二人の言葉だけを聞けば、どこか素っ気ない印象を受けてしまうのだが、その場に流れている空気も二人の表情もとても穏やかだ。



「総帥達のせいで酷い目にあった……」


「総帥達はよっぽどユイがお気に入りらしいな」


「すっごく迷惑」



 力を込めた嫌そうな声色に、フィリエルはくすくすと小さく笑う。



「合宿に参加している者達が聞いたら激怒しそうな言葉だな。

 あの方達があれほど誰かを気に掛けるなんて滅多に無い事なんだぞ」



 激怒どころではすまないかもしれないが、ユイにしてみれば本当に勘弁して欲しいの一言に尽きる。



「ユイはどれかの機関に入りたいと思わないのか?」


「軍は厳しそうだし、ギルドは総帥がウザい。教会は寮生活だからやだ。

 何より私はお祖父ちゃんのお店を継ぐって決めてるから……」



 そう言葉にした後、僅かにユイの手に力が入った。



「……私は将来お祖父ちゃんのパン屋を継ぐ」



 ユイは強調するようにもう一度同じ事を口にした。

 そしてうつ伏せに体勢を変え、フィリエルから顔が見えないよう顔を枕へ伏せる。



「……………だからエルに応える事は出来ない」


「そうか」



 一度断ったにも関わらず諦めていないフィリエルに加え、ベルナルトにまで結婚をほのめかされ、いい加減しっかりと断らなければと、意を決して話したのだが、そのあっさりした返答にユイは拍子抜けする。


 もっと引き留めたり、駄目だと反対するかと思ったのだ。 



「パン屋を継ぐ事がユイの本当にしたい事なら、俺は何も言わない。

 …………けど、違うだろう?それはユイの本当にしたい事じゃないだろ」



 諭すようなフィリエルの言葉に、よく注視していなければ分からないほど微かにユイの体が震えた。



「まだ父親が恐いか?」


「………………っ」



 今度は誰の目から見ても分かるほどユイの体が震え、ユイは何かを必死で耐えるかのように瞼を瞑り唇を噛み締める。



「ユイが心配する事は何も無い。

 親権は宰相が持っているのだから、あちらは何の権利も持たない。

 何よりあの宰相が、大事なユイに手出しをさせるはずがないだろう?」



 ユイの心情を分かってか、慰めるようにフィリエルは優しく語りかける。

 しかし、いつもは心が安らぐフィリエルの声が今は気に障った。



「分かってる!!」



 ベッドから勢い良く起き上がり声を荒げるユイ。

 怒るというよりは、八つ当たりと言った方が正しいが、こんなユイの姿は非常に珍しく、フィリエルは僅かに瞠目する。



「パパなら私が何か言うより前に手を打ってくれるし、何かあったとしても絶対護ってくれる。

 そんなの分かってる!

 ………分かってるけど………だけど………」



 ユイは今にも泣きそうに顔を歪める。

 フィリエルは興奮するユイを引き寄せ抱き締めると、慰めるように優しく頭を撫でる。

 優しい手の感覚とフィリエルの温もりに、次第にユイも心が落ち着いてきた。



「去年の大会の時に父親と会ったんだろ?」


「どうして知ってるの」


「ああ……まあ、な」



 歯切れが悪い理由は、情報をもたらしたのが、テオドールが過保護でつけた影からだからだ。

 その事をユイは知らないので、何故知っているか話すわけにはいかなかった。

 ユイもそこはあまり気にしていないようでそれ以上追求はしない。

 それよりも自身の感情に手一杯で他に気を回す余裕が無かったからでもあるが。



「そう、私ね…………もう大丈夫だって思ってた。

 離婚してから数年経っているし、夢で魘される事も、日常生活で思い出す事もほとんど無くなって、私も強くなったから大丈夫だって………」



 ユイは胸の奥に蠢く感情を押さえつけるようにフィリエルに縋り付く。



「あの人何て言ったと思う?

 使い道がないと思えば多少は使えるようだ、だって…………。

 結局あの人に取っては道具でしかないの。

 でも、それは良いの。そんなのずっと前から分かっていた事だから」



 そう分かっていた事だ。

 その程度の事で今更傷ついたりはしない。

 ユイが一番悲しくて悔しくて辛かったのは………。



「…………私何も出来なかった。

 身勝手な言い分に怒る事も拒否する事も出来ないで、ただ震えて、恐がって、逃げる事しか出来なかった」



 その時の何も出来なかった不甲斐なさを思い出し、自然と語尾が強くなる。



「だから、試合を棄権したのか?」


「それしか考えられなかったの。

 大会で結果を残せば利用価値があると見られてあの家に連れ戻されると思ったから」



 いや、間違い無く連れ戻されただろう。

 大会の上位者ともなれば軍からも目を掛けられる上、力があるのならリーフェでも嫁に欲しいという家が出てくる可能性がある。

 そうなれば迷わず政略結婚をさせて他の貴族と繋がりを作る為に利用する男だ。


 当時はまだレイスはシェリナの婚約者という立場だった為、赤の他人のレイスでは口を挟めない。

 但し、レイスならばそれがどうしたと難なく対処するだろうが、その時のユイには他の事を考える余裕が無かった。



 ただ、あの家には帰りたくない。

 あの人とは会いたくない。

 考えていたのは逃げる事だけだった。



「だから、エルと結婚なんて出来ない。

 私が王族と繋がりが出来たと分かったら、あの人は必ず利用しようと私の前に現れる。

 そうでなくとも、パーティーや王宮とかで顔を合わせる機会が多いもの」



 今はレイスの配慮でパーティー等社交の場には一切出席していないが、王族の伴侶となったからには、会いたくないから出席しないなどと、そんな我が儘は通らない。



「パパがそんな事させないのは分かってるっ。

 ………でも恐い……あの人とは会いたくないの……」



 震える声で思いを吐き出すユイ。


 もし父親が今更になって親権を主張してきた所で、既に親権はレイスが持ち、実父がどんな主張を繰り返そうがレイスならば片手間で対処した上、二度とそんな事が言えないようにするだろう。

 それに、ユイを可愛がり、オブライン家での扱いを知っているテオドールも放っては置かないはずだ。


 恐れる要素など一つもないのだが、幼少期に植え付けられた恐怖はそう簡単には克服出来るものではない。


 ユイが仕切りにパン屋を継ぐと言っているのも、目立たないようにと考えて。

 軍やギルドや教会に入る事で利用価値があると思われ連れ戻される危険性を回避する為で、本当はユイには別のしたい事がある事をフィリエルは気付いていた。



 どれだけ大丈夫だと、心配ないのだと説明した所でユイの不安は解消されない。

 これはユイ自身の心の問題だ。

 ユイ自身が乗り越えなければ意味のない事なのだ。



「ユイの不安はよく分かってる。

 ただ、一つ教えてくれ。

 もしその問題が無ければ、俺の気持ちを受け入れてくれていたか?」


「それは………」



 すぐに父親が頭をよぎりユイは口篭もる。 

 フィリエルは体を少し離しユイと視線を合わせた。



「父親の事は今は何も考えるな。

 ユイの素直な気持ちを教えてくれ」



 綺麗な緑色の瞳がユイの瞳を見つめる。


 ユイはフィリエルのこの瞳が少し苦手だ。

 フィリエルがユイを見る目はいつも暖かく、心が安らぎ安心するが、同時に言いたくない弱味や本心までを話して縋ってしまいたくなる。

 父親の事にしても、シェリナや兄達には一度も言った事の無い弱音も、フィリエルにはすんなり口から出てしまう。



「ユイが好きだ。

 ユイは俺にそう言われるのが……結婚するのは嫌か?」



 ユイの中で父親の問題は大きく、必ず会う事になってしまう王族のフィリエルとの結婚は絶対に受け入れられない。

 だから受け入れるつもりがないのなら、ここではっきりと断るべきだ。フィリエルの為にも……。

 そう分かっているのだが、ユイの弱さも理解した上で全て受け入れようとする強く真剣な瞳に、考えるより先に素直な言葉が出てきていた。



「エルと結婚するのは………嫌じゃない。

 きっと、私もエルが好きだと思う。………………まだ断言は出来ないけど」



 父親の事が胸に引っ掛かり、頷く事が出来ないでいるけれど………。

 嬉しいと思った。フィリエルから思いを伝えられて。


 恋愛経験のないユイにはこの感情が恋心だと、まだはっきりと断言する事は出来ないが、友人とも違う、兄達やレイスとも違うフィリエルへの好意は、他の誰とも違う特別なものだ。


 しかし、そう言葉にした後で頭に浮かぶのは父親への恐怖感。



「けど、やっぱりあの人の事があるから無理だよ…………」



 好意を示しておきながら己の弱さ故に突き放す。

 あまりに自分勝手な思いに、ユイはフィリエルの顔が見られず俯く。



 しかし、初めて好意を示してくれたユイに、フィリエルはそれどころではなかった。


 何度も先程のユイの言葉が脳内でリプレイされ、照れと嬉しさで平静を装おうと努力するが、自然と目尻が下がり口角が上がってしまう。

 締まりの無い顔をユイに見られないように片手で顔を覆い、一人悶えていた。


 反応の返って来ないフィリエルを不審に思い、ユイは顔を上げフィリエルの様子を窺う。



「エル?」



 ユイの問い掛けに、何とか表情を立て直す。



「いや、今はそれが分かっただけで十分だ。

 父親の事は俺が必ず何とかする、だからもう少し判断を下すのは待ってくれ」



 そうは言っても、これはユイが越えなければ意味の無い問題で、フィリエルに何とか出来るとは思えなかったが、恐れと共に何とかしたいという思いも有ったユイは少し悩んだ末頷いた。



「うん………分かった」



 ユイが頷いたのを見るとフィリエルはほっと安堵を浮かべ、ユイを強く抱きしめた。

 ユイもおそるおそるフィリエルに腕を回す。

 今まで無かった僅かな気恥ずかしさを感じながら。



「はあ……やっとか………」



 その一言には変わらない関係や進まない焦れったさから解放された色々な感情が感じられた。


 父親の事だけでなくまだまだ問題は山積みだ。

 魔王とか……魔王とか……魔王とか…………。


 それにまだはっきり好きだと言われたわけでもない。

 それでも、長い片想いを一歩前進出来たのは嬉しい事だ。




 少しすると、ポケットに入れていた通信用の魔具が震えだした。

 フィリエルは王子らしからぬ舌打ちをしそうになる。

 セシル辺りがパーティーの時間が来るから戻ってこいと知らせているのだろう。



「残念だが、時間のようだ」



 この場を離れたくはなかったが、王族である自分がパーティーをサボるのはまずい。

 それにセシルとカルロをベルナルトに紹介する予定だ。

 ベルナルトを待たせるわけにもいかない。


 後ろ髪を引かれながらフィリエルはユイを離し立ち上がる。



「ユイはどうする、一緒に行くか?」



 少し考えた末、ユイは首を横に振った。



「総帥達に捕まったら嫌だから、部屋で立て籠もってる」



 パーティーの食事は凄く興味があるが、それで総帥達に捕まったら楽しめるものも楽しめない。

 人前で勧誘をする事は無いだろうが、ちょっかいは掛けてきそうだ。

 部屋なら鍵を掛かければ総帥達も手が出せないだろう。

 食事はフィニー達に頼むしかない。



「そうか、でも気が向いたら顔を出すといい。

 総帥もさすがに昨日の宰相の件で少しは懲りて大人しいかもしれないしな」


「うん、分かった。

 ……でも、あの総帥が懲りるとは思えないけど」


「時間が空いたらまた来るよ」



 そう言ってフィリエルはユイの髪を一房手に取り唇を落とす。

 ユイは頬を紅潮させ固まってしまったが、構わず部屋を後にする。



 廊下には、セシルとカルロが待機していた。


 戻ってきたフィリエルの顔を見た瞬間、きょとんとした表情を浮かべセシルとカルロはお互いの顔を見合わせた後、にやりと笑みを浮かべる。



「フィリエルくーん。どうしたのかな、随分顔が緩んでるけど」


「とうとう、良い返事を貰えたのか?」



 カルロとセシルに詰め寄られると、フィリエルは顔をほころばせて口元を緩ませたが、直ぐに眉をひそめ思い悩むようなな素振りをしたかと思うと、落ち込んだように暗い表情となった。


 最初のフィリエルの表情から、上手くいったかと思ったが違っていたのだろうかと二人は反応に困る。



「もしかして、こっぴどくフラれたか?」


「いや、まだはっきりと断言出来ないが好きだとは言われた」


「……………」



 この期に及んでの曖昧な答えに、セシルとカルロは頭を抱えたくなった。


 セシルとカルロから見れば、どこからどう見てもユイはフィリエルに恋心を抱いているように見える。

 だと言うのに、ユイはまだ己の感情に確信が持てていないらしい。


 ユイ可愛さにユイへ恋愛感情を持つ人間を徹底的に排除してきたせいだろうかと、これまでの我が身の行動を振り返って少し反省した。


 それでも、そう話すフィリエルは嬉しそうにしていて、先程の落ち込んだ様子とは繋がらない。



「じゃあ、どうして浮かない顔をしてたんだ?」


「ああ……、伯爵の事を考えててな。

 分かっていたはずだが、ユイはまだ過去を昇華出来ていなかった」



 その言葉を聞いてセシルとカルロの表情も曇る。



「やっぱりユイがフィリエルとの結婚を断る一番の原因はあの男か」


「フィリエルには素直に話したんだな。

 相変わらずユイは俺達には何も話してくれない。

 心配させまいと思っての事だろうけど、少し寂しいな」



 違う意味で再び二人は落ち込んだ。


 まだフィリエルとも出会う前の小さな頃は、ユイも兄達に頼り、悲しいと感情を素直に話してくれていたが、いつしかそれは無くなり、兄達の前でもシェリナの前でも辛いだとか悲しいだとかを話さなくなった。


 それでも、未だユイが父であるオブライン伯爵に対して負の感情を持っているとセシルとカルロが知っているのは、ユイが唯一弱音を吐くフィリエルから話を聞かされているからだ。



 昨年の大会の時にオブライン伯爵がユイに会いに来た事もフィリエルから聞いた。

 フィリエルとは会えなかった間の事だった為、セシルとカルロはユイが何かしらの助けを求めてくるだろうと思っていたのだが、結局ユイは誰にも話す事無く言葉を飲み込んでしまった。


 それほどまでに自分達は頼りないのかとユイを問い詰めたい衝動に駆られたが、それはただユイを困らせるだけだと、何とか堪えた。

 そして、助けを求められない以上、逆に傷を深くえぐるのではないかと忌避してしまい、こちらから話を切り出す事も出来なかった。



 今回も、やはり自分達にはそんな素振りは一切見せなかったと言うのに、フィリエルにはあっさりと心の内を見せるユイ。

 言葉を飲み込んでしまうユイのはけ口となれるフィリエルの存在は有難いとは思うのだが、正直兄としては少し嫉妬してしまう。



 そんな二人を見て、フィリエルは苦笑を浮かべる。



「お前達はまだオブラインの家で暮らしているから、父親と諍いを起こして居辛くさせたくないというのも有るんじゃないか?

 特にカルロは怒鳴り込みに行きそうだしな」


「いくら俺でもそこまで短気に怒ったりしない…………と思う」



 そう口にしながらも、自分を顧みてカルロは断言は出来なかった。



「まあ、大人しくしているのは今だけだよ。

 来年の春には、俺達はオブライン家とは何の係わりも無くなるから、その時には今まで溜まりに溜まった鬱憤を晴らさせてもらうさ」



 そう言って凶悪な笑みを浮かべたセシルの顔を見て、フィリエルとカルロは自分が標的ではないと分かっていたが背筋にぞくりと悪寒が走った。



「……なあ、カルロ。

 セシルは最近宰相に似てきていないか?魔王な感じが」


「フィリエルもそう思うか?

 元々性格が似てたって気もするが、段々父さんみたいに凶悪さが増してるみたいでさ。

 このままじゃ確実に魔王二号だぞ」



 魔王二号………。

 それはガーラント国に取っても、あまり宜しくない事態だ。

 レイスと違って権力がない分害は少ないが、セシルの能力ならば将来確実に軍で権力を有する位まで上るはずだ。

 そうなれば軍にも魔王が…………。



 セシルに聞こえないよう、声を潜ませて話している二人。

 そこへ、セシルがにっこりとした笑顔で声を掛ける。



「何こそこそ話してるんだ二人共」




「いいえ何も!」とフィリエルとカルロは声を揃え、首を横に振る。


 戦戦恐恐としながら三人はパーティーが行われる会場へと向かった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ