リーフェの特徴
ちょっとした事件はあったものの、その後は何事も無く放課後になった。
「それにしてもあいつ思い出しても腹が立つ、もう一発蹴っておけば良かった」
「あれだけやりゃあ十分だろ、殺す気か」
「あれでも一部には人気があるらしいよ。
一応男爵だし、バッツ家はそれなりに資産があって、頭と性格は悪そうだけど顔はそれなりみたいだし」
「あれが!?私なら絶対無理だわ、趣味が悪すぎる」
フィニーの情報にルエルがあり得ないっと驚愕の声を上げる。
ユイもその横でうんうんと頷く。
「なあユイ、お前これで何人目だっけ?」
「確か三人目?」
「違うわ、四人目よ!」
「よく覚えてるね」
「まだ三ヶ月なのに結構いたね」
あそこまで強引にする者は初めてだが、まだ入学して三ヶ月の間にユイに告白してきた者が四人もいた。
ちなみにユイはその全てを断っている。
告白して来たのは全員ユイとは初対面、もしくはほとんど話した事がないような人達。
それ故にユイは疑問に思っていた。
「何で私みたいな愛想もない人間のどこをどう思って告白なの………リーフェが珍しいとか?」
ユイも親しい人の前では笑いもするし怒りもするが、あくまで親しい人の前でだけだ。
普段は、マルクが勘違いしたようにほとんど無表情で愛想を振り撒いた事もない。
それなのに、ほとんど話した事もない人が表情の乏しい自分に告白に来るのか、ユイにはとんと理解が出来なかった。
実際、最初は罰ゲームか何かだと思っていたのだ。
分からないと悩んでいるユイを見ていたルエルは、内心何故分からないんだと思っていた。
確かにユイは表情にあまり出にくいが、その容姿は一般的に見ても可愛い。
リーフェには身体的特徴があり、ユイは少し金色が混じったような薄い茶色の髪に水色の瞳、マルクの場合は金髪金目と皆総じて肌も色白で髪や瞳の色素が薄い。
ちなみにリーフェでない一般的な人は濃いめの茶髪や赤毛や黒髪が多く、瞳の色も濃い色がほとんどだ。
美人というより可愛いユイの容姿は、リーフェ特有の色素の薄い色もあり儚げな印象で、守ってあげたいと庇護欲をかきたてられる雰囲気を持っている。
しかも、普段表情は乏しいが、親しい人だけに見せる笑顔は破壊力抜群、それを見て人知れず好意を持っている者は少なくない。
中にはノレのように強引な者がいるのだが、そこは今回のようにルエルが一網打尽にしていた。
だが、ユイ本人は自分がリーフェで物珍しいからだと思っている、鈍感という訳ではないのに何故か気付いていない。
しかし、多少は仕方ないと思う理由もあった。
中等学校の時はルエル達の他に三人、よく一緒にいた友人がいた。
その三人は現在三人共Aクラスになったのだが、その三人は容姿が良く、Aクラスに入るほどの実力も兼ね備え、ユイはその内の誰かと付き合っていると思われていたのだ。
その為中等学校の時から恋い焦がれる者はいたが告白される事はなく過ごしていた。
しかし、学園に入ると中等時代の噂を知らない者達から次々告白されるようになった。
そういった背景を知らず突然告白され始めたユイにはそれが訝しく思う原因となったのだ。
溜め息を吐きゲインとフィニーに視線を向けると同じ事を考えているのか二人共苦笑を浮かべていた。
「そう言えばユイ、今日は早く帰らないとダメなんじゃなかった?」
「あっそうだった、ごめん先に帰るね。
バイバイ」
「バイバイ」
「おー気を付けて帰れよ」
「またね」
ルエルに言われ朝の母親との会話を思い出したユイは、すぐに荷物をまとめると急いで教室を後にした。
ユイが帰った後の教室ではルエルがフィニーを問いただしていた。
「ねぇフィニー、あんたあの貴族に何て言って黙らせたのよ。かなり怯えてたけど」
「ああいう権力振りかざす奴は中々引き下がらないはずなのにな」
「ああ、簡単だよ。
ユイを溺愛してる魔王様の事を話しただけ」
フィニーはニコニコと笑いながら答えた。
「あー、なるほど、その手があったわね」
「そりゃ誰だって怯えて逃げ出すな。
ちょっと……いや、かなりあいつが可哀想になってきたかも」
魔王様の恐ろしさを知る、ルエルは満足そうな顔をし、ゲインは史上最凶の人物を敵に回しただろうノレに憐れみを感じた。




