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アレクシス達と別れた後、フィリエルはある部屋の前までやって来た。
「フィリエルです」
「入りなさい」
扉をノックし、許可する声を聞くと扉を開け中に入る。
「失礼します、お祖父様」
部屋には現国王の父親でフィリエル、アレクシスの祖父である先代の国王のテオドールが椅子に座っていた。
テオドールは白い髪で顎には白い髭を伸ばし、伸ばされた髭はキチンと手入れのされ不潔な印象は一切なく、彼に威厳を感じさせる。
白い髪をしているが、彼はリーフェではない。
ただ単にその年齢故のものだ。
しかし、白い髪とは相反して顔や手の皺は少なく若々しく見える。
「どうしたのだ、随分慌てているようじゃな?」
「俺が来た理由は分かっているでしょう」
「何の事じゃ?」
惚けたように答えるが、その顔は面白そうにニヤニヤと笑っている。
「冗談は止めて下さい、分かっているでしょう」
フィリエルはテオドールを睨み付け低い声を出した。
「そう怖い顔をするな、ちょっとからかっただけじゃろ。
余裕のない男はあの子に嫌われてしまうぞ」
嫌われてしまうと言われると、ピタリと怒気を収めた。
その変わりようにテオドールは声を上げて笑う。
「(全く、いつだってこの子をこんなにも感情的にさせるのはあの子だけだの)」
その強過ぎる魔力を暴走させない為、落ち着いた様を崩さないフィリエルが、ただ一人の為に怒り、喜び、動揺したりと感情を露わにする事にテオドールは嬉しさを感じる。
「俺を王にと言い出した者達に、彼女の存在を知られれば利用されるとお祖父様が言われて会うのを止めていましたが、無事に兄上が王太子に選ばれ暗躍していた者達も一掃しました、だから……。
だからもう、会ってもいいですよね」
最後に確認するように真剣な眼差しでテオドールに問い掛ける。
「しかしのう、まだアレクシスが王となるまではまだ安全とは言い難いぞ?」
こっちは四年も耐えて我慢の限界だというのに尚もからかうような言い方をする祖父にフィリエルはとうとうキレた。
テオドールに低い声ですごむ。
「お祖父様」
「分かった分かった、好きにすれば良い、これ以上からかうと目で射殺されそうじゃからな。
ただし、かなりの障害は覚悟するのじゃぞ、なにせ最凶最悪の魔王に双子の手下が相手だからの」
「わ、分かってます」
本当なら絶対に相手にしたくない者達を思い浮かべ、わずかに口元が引き攣る。
「では、失礼します」
話が終わり、部屋から出たフィリエルの顔は緩みきっていた。
引き締めようと力を入れるがすぐ緩んでしまい無駄に終わり手で口元を隠す。
ペンダントを取り出し、ようやく会える少女の顔を思い浮かべ喜びを噛みしめた。
「やっと……やっと会える」




