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解決後

「これでようやく静かになりそうだね、フィリエル」


「ええ、兄上」



 王宮の廊下をフィリエルとアレクシスは並んで歩きながら、これまでを振り返っていた。



「ずっと張り付いていた護衛の人数も減らすみたいです。

 ようやく、自由に動けるようになって肩の荷がおりましたね」


「全くだよ、馬鹿な貴族のおかげで刺客やら不審な事故やらでずっと誰かがくっついてくるし、行動も制限されるし、毒も混入しているかもと一杯の水も気を抜けなかったから、息が詰まりそうだったからね」



 全くだと、アレクシス同様の生活を送っていたフィリエルは苦笑する。



「そう言えば彼女はどうしてますか?」


「彼女?」


「厳重な警備の中、部屋にまで侵入して暗殺に来た刺客で、兄上に一目惚してこちらに寝返った……。

 おかげで、有力な証言をペラペラ喋ってくれましたけど」


「ははは……うん、あの時は別の意味で身の危険を感じたよ」



 その時の事を思い出してアレクシスは乾いた笑いと遠い目をした。



「彼女は裏ではかなり優秀な人間だったみたいでね。

 本人希望の私の侍女兼、護衛の仕事をちゃんとしているよ」


「……………大丈夫なんですか?」



 フィリエルの大丈夫かとは、裏切らないのかではなく、アレクシスの貞操がという意味だ。



「……………多分」



 アレクシスを見ると浮かべていた笑顔が引き攣っている。




「おーい、フィリエル!」



 廊下に響いた声にフィリエル達は声のした方に目を向けると、フィリエルの護衛であるジークが手を振りながら歩いてくる。



「あっ、申し訳ありません!

 アレクシス殿下もご一緒でしたか」



 いるのがフィリエルだけでなく、アレクシスも一緒だと気付き、ジークは慌てて礼を取る。

 本来ならどんなに仲が良くても人目のある場所で臣下が王族を大声で呼び止めるなど不敬と言われてもおかしくない。


 しかし、アレクシスは気にする事もなく笑顔を向ける。



「フィリエルの護衛は賑やかだね」


「……申し訳ありません兄上」



 フィリエルは苦笑を浮かべる。 



「周りに私達以外いないから大丈夫だよ。

 けど次からは気を付けないとダメだよ、うるさいのがいるからね」


「はい!」


「非礼申し訳ありません。

 そしてアレクシス殿下、この度はおめでとうございます。」



 直立不動のジークをよそに、一緒に来ていたルカはきちんと臣下の礼をとり挨拶する。



「ああ、ありがとう」


「そういえば俺に何か用事があったんじゃないのか?」



 フィリエルは普段は俺と言ったり少し砕けた話し方をする。

 しかし、公の場でそうはいかないので、普段と公の場で話し方を使い分けている。



「そうそう、お前の落とし物を届けに来てやったん……いえ、お届けに参りました!」



 いつも通りの砕けた口調で話始めたが、ここにはアレクシスもいることに気付いて、すぐさま言い直す。



「くっくっく、誰も来ないようだし気にせずいつも通りに喋れば良いよ」


「はっはい!お心遣い感謝します。」



「この馬鹿者っ」とジークの後ろでルカが呟く。



「落とし物?」


「ああ、これお前のだろ」



 見せられたのはフィリエルが持っている物と同じデザインのペンダント。

 フィリエルは一瞬自分のかと思ったが、自分の首に確かにあるのを確認する。

 それに、ジークが持ってきた物は形は同じでも一カ所……石の部分が自分のとは違う事に気付きフィリエルは目を見開く。



「これをどこで拾ったんだ」


「学園だけど……」



 動揺したようなかすかに震える声で問うと、俯いて少し考え込んだ後フィリエルは勢い良く顔を上げ、アレクシスに向き直る。



「すみません兄上、用事を思い出したのでこれで失礼します」



 アレクシスに軽く頭を下げると、アレクシスが声を発する前にフィリエルは足早にこの場を去っていく。



「突然どうしたんだろうね?」


「何でしょう?」




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