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二番目の王子

「この間の食事会どうだった?

 またレイス様暴走したんじゃない?」


「うん、今回は特に大変だったよ………」



 ルエルと学園の廊下を歩きながら、その時を思い出してユイは苦笑いする。



「相変わらずみたいねレイス様は」



 ルエルがレイスと初めて会ったのはユイの父親になって直後の事だ。


 ユイの母親が再婚する話は聞いていたのだが、新しい父親がユイの友人と会ってみたいと聞き、ルエル、ゲイン、フィニーの三人でユイの父親の家に遊びに行ったことがある。


 最初、ルエルに対し優しい笑顔と丁寧な物腰で全員が優しい紳士という好印象を持った。


 だがしかし、ゲインとフィニーの男二人を見た瞬間レイスの目がギラリと剣呑に光った。

 その顔は確かに笑顔なのだが目が全く笑っていなかった。


 ユイと付き合っているのか、好きなのかと次々問いただし、あまりの鬼気迫る勢いに二人は身の危険を感じ逃げ出そうとしたが、その前にシェリナに諫められ何とか事なきを得た。


 ちなみに、ルエルが今まで言い寄る男からユイを守っていると知ると、レイスに大層気に入られ、それからは定期的に近況報告をしている。

 内容は主にユイに言い寄ってくる害虫の事だ。



 食事会での話を聞き終えたルエルは、いつも以上の暴走っぷりに堪えきれず笑い出す。



「あははははっ」


「笑い事じゃないよ、大変だったんだから」


「まあでもレイス様の気持ちも分からないでもないわよ」


「?」


「だってユイって小動物っていうかなんというか、庇護欲をかき立てられるのよね。

 いろいろ心配なんじゃない?」


「………それって私が頼りなさそうって事?」



 ユイは心外だと言うようにむくれた顔をした。



「違うわよ、可愛いって言ってるの」



 納得がいかないという表情を崩さないユイに苦笑を浮かべる。



「それに、親子だけあってユイはシェリナさんに似てるから余計に可愛がるんじゃない?」


「うん、それは言えてるかも」



 ロイクの話ではレイスは学生時代から片思いしていたらしい。

 尻込みして横からかっさらわれてしまったので、その頃のシェリナの面影があるユイの事をあの時出来なかった分も含めて愛情表現しているのかもしれない。




「あれ何?」


「何だろ?」



 二人が歩いている先で生徒達の人だかりが出来ていた。

 同じく気になった生徒達が集まりどんどん人だかりは大きくなっていっている。



「あっ、あそこにフィニーとゲインが居る」


「行ってみよ」



 人だかりの後方で前方の様子を窺おうとしているフィニーとゲインを見つけ近付く。



「フィニー、ゲイン」


「おお、ユイにルエル、お前達も野次馬しに来たのか?」


「何でこんなに人が集まってるのよ」


「うーん、それが人が多くて分からないんだよね」



 四人が居るのは人だかりの後ろの方なので、背伸びしても飛び跳ねても前で何があるのか全然見えない。

 周りの生徒達も同様で、周囲に何があるのか聞き回っている。



「よし!あんた達、跪きなさい」



 要するに足場になれと言うことだ。



「何がよしだよ、全然良くねぇ!

 どこの女王様だよお前!」


「ねえ、あっち」



 冷静に周りを見ていたユイが人が少ない場所を見つけ指を指す。

 あそこからなら様子が見えそうだ。



「ユイ偉い!行ってみましょう」



 さっさとユイを連れて歩いて行くルエルの後ろから、げんなりとしたゲインとその様子に苦笑いしながらフィニーが着いて行った。





「ここからならよく見えるな。

 おっ、なんか美形な男がいるぞ、誰だあれ?」



 移動してきた場所は先程より人が少なく、生徒達が興味津々に見ている先が見えた。


 その方向の先には、離れた所からでも分かる優雅な佇まいをした男性がいた。

 男性は鮮やかな緑色の瞳に黒い髪、鼻筋の通った誰の目から見ても美しいと感じさせる容姿をしている。

 学園の制服を着ている事から学生である事が分かる。

 周りと同じ制服を着ているにも関わらず、何故か気品を感じさせる。

 そのせいか、ある一定距離から見るだけで誰一人近付こうとしない、そうさせない空気が彼の周りにあった。



 その男性を確認するやルエルが思わず声を上げた。

 何故ならその人は本来ここに居るはずのない人物だったからだ。



「ちょっと、あれってフィリエル殿下じゃないの!?

 何でこんな所にいらっしゃるのよ。

 殿下はAクラスだから北棟なのに?」


「さあそれは分からないけど……。

 だからこんなに人だかりが出来てたんだね。

 殿下の姿を見る機会なんてほぼないから」



 ガーラント国の第二王子フィリエルは現在学園の四年に在籍しているが、Aクラスの彼は北棟の校舎で、西棟にいるユイ達を初めとした生徒はその存在は知っていても、姿を見たことのあるものはほとんどいない。


 その為、少しでもお目にかかろうと、来ていると噂を聞きつけた人が集まって来たのだ。



「おぉ、俺初めて見た……。

 それにしても男の俺が見ても美形だな、周りの女達が目の色変えてるぞ」


「うん、なんかギラギラしてるね」



 周りにいる男子生徒はただ興味津々という感じだが、女子生徒は並外れて容姿の良いフィリエルに獲物見つけたがごとくの視線を向けている。



「そりゃあ王子で金も権力もあってあの見た目じゃあ、お近付きになりたいって思うのも仕方ないわよ。

 ねえユイ?」


「……うん」



 どこか上の空ではっきりしない返事にルエルは具合でも悪いのかと窺うような視線をユイに向ける。






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