表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える?【異世界トランザニヤ物語】  #イセトラ R15    作者: 楓 隆寿
第0幕 序章。 〜妄想図鑑と神代魔法士〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/107

桃色姉妹の登場とーー垂れ耳の少女。




「いよいよか」


「ああ、やっとあの頃のように、末裔たちが集まったな」


 神シロと黒銀の友の目尻が下がる。


 神々は下界を覗き込んだ。








◇(主人公のゴクトーが語り部をつとめます)◇


 


 

 

 


 熱気と喧噪で満ちている、ビヨンド村の冒険者ギルド支部。


 周囲には酒とTAKOBAタバコの匂いが漂う。


 中央には大きな『刻の魔導具』が静かにカツカツと小刻みな音を奏でる。


 ギルド支部の広間でーー俺たちは桃色姉妹の到着を待っていた。

 もちろんパーティーを組むためさ。

 

 妖艶な魔女のようなーー紅のパメラ。

 両性類的な存在感を放つーー緑のノビ。

 鴉のようなーー黒の俺。


 ひときわ目立つ俺たち。

 視線が気になり、思わずテンガロンハットを目深に被った。


 

 ドクンと俺の心臓が動く。

 胸の『鼓動』が今にも出てくるような合図を俺に寄越す。

 まぁいつもの癖なんだがーーカチッとした音が脳内に響く。

 【妄想スイッチ:オン】俺は自分の”癖”の世界へ入っていった。


 ──ここから妄想です──



 「旦那、似合ってやすぜ」


 胸の『江戸っ子鼓動』が揉み手をしながら一言。


「おひけぇなすって。 黒、似合ってると思いますが……あっしみたいに赤のが目立ちますぜ」


 "ボォ༄༅”

 

 赤絹・シタギがそう言って神代魔法の炎を灯す。


「シタギさん、派手っすね。そのコスチューム……炎も、でやすが」


「鼓動君……その目、そりゃぁ、おませな発言ですぜ」


 シタギにそう言われ、鼓動の顔が真っ赤になった。

 

【妄想スイッチ:オフ】


 ──現実に戻りました──




「ってか、お前たち、勝手に出てくるな!」

 

 俺の一喝で二人は、『妄想図鑑』の中に収まるようにーースッと消えた。


 意識を戻し、我に返った。


「やばい、どんどん境界が曖昧になっていくーー」


 猛省しながらため息をつく。


 何か気を紛らわせなきゃ、と姉妹たちの姿を思い浮かべる。


 気になるな。

 どんな、装備で来るのやら……。


 待ち合わせをしている心は膨らむ。


 そりゃワクワクさ。

 二人とも美人姉妹だし、スタイルも良いしな。


 ふと今朝のアカリとジュリの姿が目に浮かぶ。


 ブルーも黒も透けてたからな。


 あれを万度見せられちゃ、俺の心臓が持たない。


 「いいか”死線”。下着まで透視するな。目のやり場に困るからな」


「あい、わかった」


 思わず心の中で念を押した。


 話を戻そう。


 居並ぶ冒険者たちに受付嬢が忙しなく対応する中、ただ時間だけが過ぎていく。 申請の終えたパーティーが意気揚々とダンジョンへ向かう。


 焦りが募る。

 そんな中ノビが緑色の身体を揺らし、しゃがみながら口を開く。


「先生……あの姉妹(じまい)、まだ来ないですね……」

 

 今にも飛び跳ねそうな勢いだ。

  

 そんな様子に俺は内心気が気でない。

 

 案の定、その発言を受けて、また一段とパメラの表情が濃くなっている。

 

 こわいんですよ、その顔。

 

 思いながらも俺は黙っていた。

 

 パメラがノビに向かって一喝。


 「まだ時間前だ! 気を急くな!」


 そう言いながら眉間に皺を寄せる。その声に苛立ちを感じるのは気のせいじゃない。しかしどこか諭すような優しさも感じられる。


 見ていて俺はふと、師匠とのやりとりを思い出す。


「ゴクトー、その癖、へんたいスキルだな。はっはははは」


「師匠こそ……その変な笑い方ッ!」

 

 そのやり取りは常。師匠は俺を揶揄ってるように見えていたがーー実は彼なりの褒め言葉だったと、なぜか今はそう思える。

 

 二人のその『恒例行事』に、俺の頬も自然と緩んだから。

 

 受付で待つ冒険者パーティーが列をなす。

 彼らの背中を見て俺の手がわずかに震える。

 

 ダンジョンに挑むんだ。

 当たり前だ。 初の経験なんだぞ。


 しかし緊張する。


「ダンジョンは危険が隣り合わせだが、面白いぞ」

「その分、報酬もでかいからな」

「一攫千金の宝箱も、あるらしいいぞ!」

「魔物を倒せば、*ドロップアイテムなんかも出るらしい」

「だが、帰ってきてない冒険者も大勢いるようだ……」

 

 冒険者たちの話し声が耳に飛び込んでくるからだ。

 

 次の瞬間、ノビが動いた。


「先生……」


「な、何を……貴様!」


「……ケロンロケ!(こわいんさ!)」


 ノビはカエル語でパメラに抱きつく。


 ……ノビ、お前なァ……。


 「っえ?」

 

 思わず声が漏れた。

 パメラは先程とは打って変わり、ノビの頭を優しく撫でる。

 その光景を見た瞬間、俺は驚いた。


 この状況下、目立たないのがおかしい。

 見ていた杖を持つエルフの女性が声を上げた。 


 「あれ、一体何を……?」


 魔導士だろうか? 


 その声に周囲の冒険者たちが騒つく。


 一方、ノビは気にしないにも程がある。 

 当の本人はへっちゃらな様子。


 ノビは「先生が……いつでも守るってくれるんさ」と、小声で漏らす。


 パメラの顔は、まんざら気を悪くしているという風には見えない。

 相変わらずノビの口元は、緩みっぱなし。


 何がしたいのやら?……と、俺は呆気に取られた。


 一方のパメラは、やや顔を朱く染めて戸惑ってる感じにも見える。


 ……ってか、ノビのやつ、甘えすぎだろっ!

 蛇に守られるカエルだな……タフなやつだ。



 俺の思った印象だ。

 

 "ニタリ”と口元が緩むってもんだろ?


 俺の思いを他所に、パメラが胡乱な視線で、『刻の魔導具』チラッと見て、ため息をつく。


 彼女が俺を一瞥。


「もうすぐ、11クロックよ、ゴクちゃん……宿は一緒だったんでしょ?」


 確認するかのようにそう言った。

 

 パメラは不安げな顔だ。


 たが、俺は口には出さず黙っている。

 まぁ、いつものことだがな。

 

 

 突然、何かを感じたのか?と、思うほどにパメラの肩がビクッと震えた。 

 その表情は変わり、思い立ったようにノビを引き剥がす。


 すると、ノビも急に真剣な表情を見せたーーその時。



「「「「「「「おおおおおおおおお───!!!!!!」」」」」」」




「ん?」



 入口の方から冒険者たちのざわめきが広がる。

 気になって目を向けるとーー堂々と闊歩する桃色の姉妹。



「あれ?……」



 その後ろ、小柄な銀灰色が瞬時に背後に隠れた。


 

 ま、気になるが、放っておこう。

 それよりもーー桃色姉妹だ。



 思いながら前を歩くジュリに視線が奪われる。

 俺は彼女が眩しく見えた。

 その装いはどこか妖艶さをまといつつも、愛らしさを感じた。


 黒いレザーキャップが独特の〝らしさ〟を際立たせる。

 黒絹のノースリーブシャツは、薄暗い中、ギルドの照明を受け輝いている。


 

 ジュリ、まずいんでは? 

 それッ!

        

 彼女の光彩奪目から、逃げるように逸らした。


 そんな俺を他所にノビが一歩踏み出し、ジュリを見て手を振る。


 「ジュリさ───ん」


 彼は笑顔でジュリを呼び込む。

 応えるようにこちらに笑顔で手を振るジュリ。

 彼女の金のヘソピアスがシャツ越しにチラリと覗き、さりげ無くも挑発的なアクセントを見せていた。


 コツ… コツ…


 闊歩する音が近づく。

 俺と目が合うとジュリが口の端を上げる。


 「どう? この、引き締まった美脚、わたし、足には自身があるの……これにしてみたの」


 そう言って「ふふっ」と笑った。


 黒いレザーミニスカートが俺の目を離さない。


 

 大胆すぎだろっ!

 それッ!

        


 俺はジト目を向けるジュリに内心ツッコム。


 口に出さないのが、唯一の取り柄なのだ。


 

 その瞬間、紫髪が靡かせるパメラは、率直な言の葉を添える。

 

「青い短杖、珍しいわねん。〝キュート〟な『魔道士』って感じよん、ジュリちゃん」


 しっとりした口調で、その姿を褒めていた。


 周囲の冒険者たちの顔は、ジュリの姿にまるで魔法にでもかけられたかのように赤らんでいる。


         

 小悪魔って、感じだなっ!



 俺の素直な感想だ。


 ジュリは照れているのかーーそれとも何かを隠しているのかーー俺にはわからない。


 だが、ジュリの無防備な姿に心が揺れる。

 

 一方で、俺を見るアカリの視線に気づく。

 彼女は桜色の着物を優雅に着こなしていた。

 そのアレンジは洗練され、翡翠の(かんざし)でまとめられた桃色の髪と見事に調和。肩を大胆に露出させ、豊かな胸を強調したデザインが気になる。

 

 その下には、*鎖帷子(くさりかたびら)がほんのり覗く。


 思わず目を奪われ、”死線”にも注意を払うよう心で告げる。


 細い腰には鞘色が同じな*【桜刀】。細身だが威厳と勇猛さを感じさせる。


 チラッと俺を見たアカリ。

 彼女は白檀の扇子を仰ぎ、自分の香りを振り撒く。

 

「視線が……あついわね」


 その声はどこか照れているようにも聞こえる。

  

 風に乗った桜の花びらのような香りが俺の周囲に漂う。


 大胆すぎやしませんかッ!? 

 艶っぽすぎるっ!

 まぁ、見てる方は嬉しいけども……。


 思っても口には出さない。 察しろッ!


 払拭するかのように頭を一度整理する。


 しかし、俺の目はアカリの姿から離れようとはしなかった。


 彼女は凛とした姿勢でこちらに歩み寄る。

 先程までジュリを褒めていたパメラは、何気ない毒を吐く。

  

「着物の丈、短くない?アカリちゃん。その鎖帷子と黒い網タイツに見えるのって繋がってるの? いいわね、色っぽいわ……」


 ジュリと同様にアカリを褒めたのか疑問が残る。

 パメラの目は笑っては、いなかったからだ。


 言い終えた瞬間、眉は少し上がっていた。

 その顔を見たアカリの艶やかな唇が動く。

 


 「下着はパンティだけなの……」


 少し顔を朱くしていた。


 その言葉に『鼓動』が跳ね上がる。


「鼓動、動くな!」

 

 思わず心の中で叫んでしまった。

 

 随分とこれまた、 〝セクシー〟な『武士』ですけども……。


 もちろん口には出さない。

 

 得意技だ。 わかるだろ? 


 そうは思いながらも気になったのがーーもうひとつ。

 

 姉妹の背後にひっそりと隠れる小さな影。


 銀灰色の毛並みが目を引く。


 パメラが愛しむように近づいた。


 そして彼女が笑みを浮かべる。


「この子、可愛らしいわねん」


 その声は、雑談していた冒険者たちの耳にも届く。

 周囲の目が一斉にこちらに向く。

 

 パメラはお構いなしに、まるで幼い子を見るような目でその少女を見ていた。



 その時、空気を読まないノビが口を開いた。


 

「垂れ耳が可愛いんさ!」












 お読みいただき、ありがとうございます。


 気に入っていただけたらブックマークをお願いします。

 リアクション、感想やレビューもお待ちしております。

【☆☆☆☆☆】に★をつけていただけると、モチベも上がります。


 引き続きよろしくお願いします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ