表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える?【異世界トランザニヤ物語】  #イセトラ R15    作者: 楓 隆寿
第0幕 序章。 〜妄想図鑑と神代魔法士〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/107

ノビの装備とパメラの装備  

 


「ちょっとだけ、手助けしてやるか……」


 黒銀の目の友の声が嬉しそうに話す。


「そりゃ、面白くなりそうだ。

ダンジョンには、七星のあれが眠っているからな」


 神シロも黒銀の目の友と笑った。


 神々は下界を覗く。




 ーーその頃、ゴクトーはダンジョンアタックに向けての準備を整えていた。



 


 ◇(主人公のゴクトーが語り部をつとめます)◇






 部屋に戻った俺はーー頭にはしっくりとくるテンガロン。

  腰には【*桜刀】を二振り。


 そしてーー『*アイテムボックス』を確認した。



「ヨシ!」



 気合を入れーー集合より早めに部屋を出る。

 例の”方向音痴スキル”が発動するからだ。

 


 だが、玄関に差しかかった所で声をかけられた。



「待ちなさい!」



 振り返ると、腕組みをした女将さんが【覇気】丸出しで仁王立ちしていた。



 その瞬間ーー覚えのある【覇気】だ、と俺は背筋を伸ばす。

 まるで俺の身体に馴染むような独特の【覇気】だった。


 ふと、師匠の言葉が頭をよぎる。


『ゴクトー、くれぐれも*神代魔法は使い所を間違えるなよ。はっははは』


 師匠はそう言って俺に奥伝まで授けてくれた。


 まるで師匠の【覇気】を纏ったようなーー女将さんがさりげなくポツリ。


「これを持って行きなさい。  ……”ふん”」


 鼻息を交えつつ、彼女はそう言ってずしりと重い紙袋を俺に寄越す。

 

 覗くと焼きたてのパンがぎっしり。


「あ、ありがとうございます……」


 突然のことに驚きながら頭を下げた。


 女将さんは再び、「ふん」と鼻を鳴らし、頬を朱に染めながら宿屋の奥へと戻っていった。


 やっぱり、聞いてたんだな。

 パン、買えなかったこと、食堂で。

 まるで“ツンデレ猪”……

 でもーーいい女将さんだな。



 感謝しつつ、宿を後にした。


 赤壁の路地を抜け、村のメインストリートに出る。

 雲ひとつないーー朝日が気持ちいいくらいの橙を彩らせる中、

 すれ違う狼の獣人が息を切らせて走っていくーーその影とともに泥をつけた、ぽにゃぽにゃっとした足跡が石畳に残っていく。


 「もう、そんな時間か」


 オープン準備を始める、商人たちを見ながら零す。

 メインストリートの両脇からカラン…、ギィィ…と、各店それぞれの扉の音が耳に飛び込んでくる。


 カツヲ節の香ばしい香りも、通りすぎる屋台から漂っていた。



 しばらくすると、肉屋の前でおばちゃんと目が合う。


「おや、行くのかい? ダンジョン。気をつけるんだよ~」


 そう言いながら、おばちゃんが目の前まで歩み寄ってくる。

 彼女の手には、鋭利な肉切り包丁が握られていた。



「ああ、行ってくるよ」



 ちょっと怖いですけども、と思いながらもーーテンガロンハットを軽く上げ挨拶。



「頑張んな!」


 笑顔で背中をおもいっきり叩かれた。


 イタタタタッ!

 柄で秘孔を突くな、神業かっ!ったく!


 苦笑しつつ別れた。


 あのおばちゃん、力加減を覚えて欲しい……と、ため息をつき、肩をすくめた。


 だが、その数分後ーー俺の身体には力が漲る。


「不思議だ」


 独り言ち、歩みを進めた。

 特殊スキルーー”方向音痴”発動中の俺は、彷徨いながら歩く。


 西の空のやや上方に、上弦の月がうっすら微笑む。 陽が追いかけられるように北西に傾き、メインストリートに俺の影を伸ばした。

 

 まだ苔むしる石畳にはまだ朝露が光り、桜の花弁がチラチラと舞う。

 少し暖かくなった風とともにーー

 

 ゴォ〜ン… ゴォ〜ン…

 

 教会の鐘が*10オクロックの刻を奏でる。

 その音に導かれるかのように、俺は鐘の鳴る方へ歩き出した。


 やがて、教会を過ぎるとギルド支部が見えてくる。

 俺は緊張と期待が混じり始め思わず唾を飲み込んだ。


 あの二人、もう来てるだろうか?

 集合時間前には、着かなきゃなッ!


 胸は高鳴り、景色も目に入らず足は自然と速くなっていく。


 特殊スキル”方向音痴”をなんとか凌ぎ、ギルド支部に辿り着いた。

 

 緊張しながらドアノブを握る。


 ───ギィィ…



 いよいよだ、って感じだ。 


 そう思いながら足を踏み入れる。


 受付の前には、ダンジョンアタックを申請するパーティーが列をなしていた。

 居並ぶ冒険者たちの顔色は様々で、どこか不思議な緊張感が漂う。



 周囲を見渡せば、“キョロキョロ”している二人が目に入った。



 目が合うノビは、ニカっと白い歯を見せ、いきなりしゃがむ。


「ゴクどーさん、よろじくお願いじまづ!」



 ピョンッ!



 目の前に、勢いよく飛び込んできて思わず怯んだ。


 「ち、近い」


 いや、それよりもむしろ、ノビの装備に驚いた。


 彼の装備は圧倒的なインパクトで異彩を放っていた。



 髪にはしっかりと固定されたゴツいゴーグル。

 彼が動くたび、それが光を受け淡く輝く。

 その輝きはまるでーー古代魔法を封じ込めた遺物のよう。


 ギルド支部の照明を受け、輝きを放つ全身を覆う緑色のラバースーツ。 

 そのスーツは、彼の身体にピタリと貼りつく密着感。

 第二の皮膚のようで、動く度に筋肉の動きが見て取れる。


 さらに、両拳には金属製のメリケンサック。

 それは黒鉄製で、シンプルながらも力強さを感じさせる。


 胸には特殊な胸当てを着け、それもラバースーツとの対比で目立ち、いかにも防御力を重視した堅実な選択に見えた。


 キュタンキュタン


 ノビが歩く度、わずかな音を周囲に響かせ、どこか両生類的な異質な存在感を放つ。


 足元は、黒色のブーツを履いているが、これも一風変わっていた。


 ブーツの踵は、水掻きのような形状ーー彼が水中での機動性を重要視していることを暗示していた。


 

 その瞬間、師匠の言葉が頭をよぎる。


 そう言えばーー『*フロッグマンの特技は潜水だ』って言ってたよな。


 ノビを見て、さすがフロッグマンとの混血……と、納得した。




 「HAHAHA……」と、コリン語で苦笑しながら、パメラに目を向ける。


 


 誰もがーーその姿に目を奪われずにはいられなかった。

 別の意味で強烈。 

 彼女の装備は”紅”を基調としていた。


 トレードマークの紅の鍔広帽が目立っていた。

 だが俺を見た途端、帽子をそっと外した。

 彼女は紅いレザーのブルゾンの袖口を掴むーー艶やかな光沢が照明に映えた。


 そのブルゾンの丈は短く、目を奪われるほどのヘソだしスタイルで大胆。

 揺れるたび宝石が怪しく光るへそピアス。


 そんな中ーーノビは憧憬の眼差しを向け、パメラをじっと見つめている。

 当然、周囲からも彼女は注目を集めていた。

 自然と俺の目もパメラに戻る。


 パメラのスカートは短く、美しい脚線美を霰もなく晒す。

 レザーの裏地が歩く度にチラリと覗く。


 黒のガーターストッキングは、脚のラインを見事に強調している。

 透けて見えるベージュの肌が照明に照らされ、妖艶に煌めく。

 腿丈のブーツで闊歩するその様は気品すら漂う。

 板の間をコツコツと音を立てて歩く彼女の姿は、さらに注目を集めていた。


「どう?ゴクちゃん?」


 彼女は俺を見ながら、紅い杖を手にゆっくりと一周する。


 杖の先端には蛇の彫刻。その杖の先は真紅の光が魔(マナ)に反応して揺れていた。

 開かれたジャケットからは弩級のーー『爆弾(ダイナマイト)』が微かに揺れる。

 それに煽られるようにギルド内には微風が巻き起こった。


 揺らすなよ!

 

 柔らかそうだな。

 ……って、何、考えてんだ、俺っ!


 この状況だ。 察しろッ!


 思いながらも俺の妄想眼”死線”がパメラの装備からーー離れられなくなった。 


 ゴクッ…


 じっと見つめてくるパメラの喉が鳴る。

 さらにどこか上機嫌で腰をくねらせた。

 彼女の顔立ちと艶やかな瞳がさらに、その神秘的な魅力を引き立てる。

 笑みを浮かべた彼女は、(なまめ)かしい声を鼻に”かける”。


「あたいのことは、パメちゃんと呼んでね」


「呼べん……が、飲み込まれるようだ……まるでヘビに……」


 ほんとにほんとに小さな声で俺は漏らした。


 その格好ッ!男はイチコロってわけかッ!

 狡猾ですけども……。


 思ったが口には出さず。 

 得意技炸裂だ。


 面映ゆい羞恥心が感情を麻痺させ、複雑な心境に陥る。


 汗もじっとり滲んだ。


 こりゃ、周りからも目を引くよな。


 なんて思ってたーー矢先、空気を読まない男が動き出す。


 ノビが物申すと言わんばかりに言葉を投げる。


「先生さ、パメちゃんだなんて、呼べねぇんさ」


 ポツリとつぶやく。


 パメラを見るその目は、真剣そのもの。


 先生って、なんだか色っぽい響きだよな……と、思いながら俺はノビをつつく。


 次の瞬間、真っ赤になったノビの淡い思いがーー耳打ちされた。

 ノビは”*カルディア”の魔法学院時代から、ずっとパメラに好意を寄せているらしい。


 これな。 

 言われてもなァ……。


 困惑したさ。 わかるだろ?


 案の定、ノビの言葉にパメラが反応。少し眉根を寄せてはっきり。


「貴様には、言っておらんぞ!」


「なんなら、この場であの世に、送ってやっても良いのだぞ!

 ノビぃぃぃ!!」


 怒鳴るパメラにあっさりとノビが打ち砕かれる。



 だがしかし。 

 それに対しノビが「ケロッ」と、宙返り。

 見ていた俺は”ひっくりガエル”だな、なんて思う。


 『恒例行事』に自然と口元も綻ぶ。  

 だが、同時に息もついた。


 彼らから見た黒一色の俺はまるで鴉のようだろう。


 3人が異彩を放つ装備で揃ったこの場は、どう見ても目立つ。

 そんな中、改めて挨拶した。


「よろしく頼む」


 ノビとパメラもほぼ同時に微笑み返す。


「よろしぐ」


「ゴクちゃん、よろしくねん」


 テンガロンハットの鍔を軽く持ち上げ、二人に頭を下げた。


 先程のパメラの怒号の叫びと相まって、ギルド支部がざわつき始める。


 どこか血生臭い……風が漂い、場の空気が一瞬で変わった。

 見ていた冒険者、怪しい雰囲気を醸すドワーフが声を上げる。


「あの美人……へへへ。おいどんの好みだ」


 ドワーフの目がパメラを射抜く。


 気になった俺はドワーフの連れのパーティーを見た。



 先頭を歩く一人は、大剣を背負う男で気配、いや【覇気】が異質。

 多分このパーティーのリーダーだろう。

 

 フードを被る耳長のエルフーー魔力(マナ)の量が半端ないことぐらい、俺だって一目でわかる。

 

 目しか見えない盗賊のような出立の黒頭巾の男。

 こいつも諜報系のスキルを持ってそうだ。

 

 そして、半裸なーー巨人族の男はやはりデカイ。

 天井に頭が届くほど。初めて実物を見た。

 そのニヤつく顔はどこか異常者のように感じだ。



 見るからに怪しい”ハイランク”の五人パーティーだ。


 こいつら、何かが違う。 

 ダンジョンで出くわしたら厄介そうだな。


 思っていた矢先、突然体温は上昇ーー沸き立つ血、喉の渇きを抑え、彼らの背を見送った。


 俺たちのような奇妙な3人組に、ギルド全体がざわつくのは無理はなかった。


 桃色姉妹を待つ中、俺はひとり口にする。


「さあ、これからが本番だ。どんなダンジョンアタックになるのか……楽しみだぜ!」














 お読みいただき、ありがとうございます。


 気に入っていただけたらブックマークをお願いします。

 リアクション、感想やレビューもお待ちしております。

【☆☆☆☆☆】に★をつけていただけると、モチベも上がります。


 引き続きよろしくお願いします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ