*作中補足*『妄想図鑑』 No.06: 真紅の蝶ーーブラ・アカノ
紙をめくる音が、やけに遠くで響いた気がした。
頁の向こうは夜空。赤い星々が舞い散り、ひとひらの絹が風に揺れる。
その光景は懐かしくも恐ろしく、そして抗いがたく美しい。
ーー『妄想図鑑』は、俺の魂の奥底に眠る「未完成の物語」を呼び覚ましていく。
■ 図鑑No.05 真紅の蝶ーーブラ・アカノ。
ーーこの蝶は、夜の記憶とともに羽ばたく。
■ 分類名
艶魅変性体。
■ 種別
蝶化霊装型妄想体。
■ 発動条件
江戸っ子鼓動の「動悸・不規則三連跳ね」× 「視覚刺激による瞬間思考偏位」
■ コードネーム」(通称)
「背徳の夜羽根」
■ 外見描写
蝶の羽根を背にした、夜を纏う艶やかな妄想精霊。
黒髪ロングに、背中が大きく開いた衣装。赤い装飾が映えるコントラストは、まさに“停止系ビジュアルトラップ”。
視線が交わった瞬間、空間が“止まった”ように錯覚する静寂が訪れる。
その装束は戦闘衣装というより、視覚魔法そのものーー露出に意味があるのだ。たぶん。
(*真紅の蝶ーーブラ・アカノのバトルコスチューム)
■ 性格と振る舞い
あまり喋らず、視線と所作のみで存在感を放つタイプ。
ごく稀に微笑むが、それが意味するものを考えた時点で、ゴクトーの『鼓動』は限界を突破する。
「何かを守るために戦っているらしい」が、「何を守っているのか」は、ゴクトーにもわからない。
■ 神代魔法との関係性
出現予兆魔式ーー【蝶焔境界】。
出現直前、空気の匂いと光の反射が変質する“予感”の魔術。
■ 発動スキル
【魅誘分身】
残像を伴う超高速移動。敵の視認追従力を崩壊させる。
【煉視】
見つめた者の「視線の記憶」へ干渉し、戦意そのものを蒸発させる魔眼。
【背中の約束】
“守るべき者”にだけ蝶の羽根が見えるーーという演出を持つ妄想型守護術。
■ 備考
江戸っ子鼓動曰く。
「旦那……あの蝶ァ、危険すぎやす。見ちゃいけねぇ色してやす」
ゴクトーの深層記憶と強くリンクしている可能性が高く、神代魔法との親和性は特級。
赤絹シタギや非常用グチなど“瞬発系妄想体”とは異なり、
静的、持続型妄想の代表格として分類されている。
■ 図鑑メモ
「目が合ったとき、何かを“思い出しかけた”。
……でも俺は、それを忘れたいと、思ったんだ」
ーーゴクトー(記録者不明の妄想時間より)。
図鑑の頁は閉じた。
けれど、想像の扉はまだ、閉じてはいなかったーー。
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