表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える?【異世界トランザニヤ物語】  #イセトラ R15    作者: 楓 隆寿
第0幕 序章。 〜妄想図鑑と神代魔法士〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/108

姉妹冒険への第一歩!

 



 

 二柱は”もうひとつの天上界”へと足を踏み入れた。


 「……やっと見つけたわい」


 神シロは肩で息をしながらポツリ。


「おい、動き出したぞッ!」


 黒銀の目の友が神シロの肩を叩く。


「これはワシが語らねばなるまい」


 神シロは額に筋を入れながら”もうひとつの下界”を覗きこんだ。

 そして独り言ちながら言の葉を落とす。


「さすが我が末裔、ダークエルフが治める、まずあの国を目指すか……」





 ***【神シロの語り】*** 



 


 

 『ヤマト』は島国であり、大陸に渡るには貿易船に頼るしかない。

 海を挟んだその先ーー『*ファルダット自由国』とは、唯一交易をしていた。


 

 アカリは『巫代家(ミシロ)』と取引のある、グリッド船長に懇願した。

 グリット船長に詰め寄りながら、特有の焦茶で長い耳に囁く。


「ねぇお願い……」


 彼女が懇願しながら桃髪を耳にかけ、見上げる。


「お姫様方、勘弁してください! 『巫代家』の姫様を、我がダークエルフが治めるファルダットに連れ出せば、私の商売がーーそれに私にも、双子の娘が……命が危うい!」


 怯えるグリッド船長を見つめ、アカリは笑みを浮かべた。

 

 グリッド船長の話など気にも止めず、少しだけ首を傾げ、アカリがあっけらかんと言い放つ。


「心配いらないわ。『巫代家』には、カヤノ叔母上がいるから!」


 表情は変えずに、すっと目だけを細めた。


 結局、大層な額の『大判金貨』を渡され、折れたグリッド船長は姉妹を船に乗せることを承諾した。




 ***【貿易船の出航】*** 



 潮風を受けながら貿易船は、大陸を目指して進む。

 海の魔物に襲われることもあったが、腕利きの船員達の奮闘、姉妹の活躍で切り抜けた。


「ここは後ほどな、長くなる。わかるだろ?ククク」


 天界から覗く神シロは、零しながら笑っていた。



 ***【入国】***




 ーー数日後。


 

 ついに姉妹は『ファルダット自由国』の港町に到着した。


 時を待たず、グリッド船長に『冒険者ギルド』の支部へ案内して貰う。



 

 ***【初めて訪れる冒険者ギルド】***



 姉妹は興奮と緊張が入り混じった表情を浮かべる。

 船長も彼女たちに付き添い、ギルド支部の入口をくぐった。

 その瞬間、喧騒と独特な空気に姉妹は圧倒される。

 

 土埃がふわりと舞い、酒や葉巻の匂いが鼻につく。


「……わ、これがギルド……?」

 

 姉が小さく息を呑む。


 初めての場所に緊張しながら、姉妹は板張りの床へ足を踏み入れた。


「見てよ、ネーあっち。装備してる人ばっかり……!」

 

 妹は姉の肩を軽くこずく。

 

 あちらこちらで、冒険者達が武具を手入れしている。


 掲示板に貼られた依頼書の数々、使い込まれた調度品、奥には賑やかな酒場も。

 

 黒いケモ耳を立てながら、「おい、こっちにもエールをくれ!」と。

 カウンターにジョッキをドン!と置く獣人が声を張った。

 肩当てを外したその瞬間、銀色の突起がきらりと光る。


 空気には魔力(マナ)の粒子が舞い、まるでギルド全体の活力が息づいているかのよう。

 

「すごい……本当に冒険者の世界だ」


 姉は思わず声が漏れた。


 3人は、緊張した面持ちでカウンターに恐る恐る近づく。

 受付に立つ、制服を着る女性その様子に、ニコリと微笑む。

 

 覚悟を決めたかのように、アカリが一歩前に出た。


「冒険者登録、お願いしたいのですが……」


 その声は上擦り、顔もどこか堅い。


 受付嬢は慣れた手つきで、引き出しから一枚の魔法紙を取り出した。

 そして穏やかな表情で唇を動かす。


「こちらに、必要事項をご記入ください」

 

 一瞬の間、だがすかさずグリッド船長が声をあげた。


「姫様方、ここは私にお任せください!」


 彼は得意げに手慣れた仕草を見せる。

 ”魔法が込められた羊皮紙”にグリッドは、ペンを走らせていく。


 アカリとジュリは、初めての体験に赤碧色の目を輝かせた。


 しばらくして、受付嬢が声を出し姉妹が呼ばれる。


「アカリ・ミシロさん、 ジュリ・ミシロさん、 お待たせしました。 登録が完了しました」


 視線の先、彼女がニコッと微笑みながら「お二人の冒険者カードです」と、スッと二枚差し出す。


 姉妹は手に取り『冒険者』カードを眺める。


「簡素なものね」

「ちぇー、……錆びた鉄色」


 姉妹たちが仏頂面で、顔を上げると受付嬢と目が合う。

 口元を緩める受付嬢が丁寧に説明を始めた。


「お二人のランクは『F級』です。最初は薬草の採取や小型の魔物討伐、その他、雑用が主な依頼となります。E級への昇格も、同様の依頼をこなしていただくことになります」


 流れるような早口に姉妹は小さく頷く。


「……なるほど、これが、最初の一歩というわけね」と、カードを見つめつぶやき、アカリが少し眉を寄せる。


 ジュリも同様にカードを眺め、肩をすくめた。


 心の奥底で、ジュリは小さな不安を抱え姉を見る。

 だが、アカリはすぐに微笑み、力強くカードを握りしめた。



 ***【姉の覚悟】***



「ジュリ、これでようやく『冒険者』になれたわ! さあ、ここからが本番よ!」


 明るい声で言う姉にーージュリも思わず笑みを零した。

 今更、もう後には引けない彼女たち。

 アカリとジュリが笑いながらギルドの外に出ようとしたーーその時。


 アカリの視界が歪んだ。 

 一瞬世界の時が止まったように感じる。


 金属の軋むような音とともに、アカリの耳に“何か”が囁いた。


「……七星が揃う時、血が流れる」


「選ばれし肉食の姫よ……刃を向けるは、愛しき者かもしれぬ……」


 思わず足を止めるアカリ。

 耳鳴りのように残る声は、ジュリには聞こえていない様子。


「……いまのは、いったい……?」


 

 背筋を伝う、名状しがたい寒気。

 明るく始まった異国での冒険にほんの一筋、不吉な影が差した。

 

 汗まみれの笑顔を作る、彼女の胸中を妹は知らない。

 だが、アカリは息をつき、あっけらかんとつぶやく。


「暑い……ジュリ、この国、暑すぎない?」


 アカリは扇子で仰ぎながらギルド支部の椅子に腰を下ろす。

 彼女は黒い着物の胸元を大胆に引き下げ、美脚を組んだ。


 その艶っぽい仕草にーー周囲の冒険者たちも目を奪われていた。

 いやらしい男どもの視線など、まるでお構いなし。


「ジュリ、私たちの格好、目立ち過ぎるわ。着替えましょう」と。


 アカリは船長にウィンクを送りつつ、街へ向かう準備を整える。

 見ていたジュリが、ふと小言を落とす。


「ネー、胸と脚を自慢してるの?」

 

 そう言いながら、悪戯っぽい目でジュリが微笑む。

 その小言にアカリは目尻を下げ、口元を緩めた。


「さあ、どうかしら?」


 彼女の性格通り、あっけらかんとジュリに答えたのだ。


 姉妹は「ゲラゲラ」と笑い、「行こう」と声を大にしながら、冒険の第一歩を踏み出していった。


 広大な異国の地で姉妹を待ち受ける運命は、まだ誰にもわからないーー。











 お読みいただき、ありがとうございます。



 気に入っていただけたらブックマークをお願いします。

 リアクション、感想やレビューもお待ちしております。

【☆☆☆☆☆】に★をつけていただけると、モチベも上がります。


 引き続きよろしくお願いします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ