表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える?【異世界トランザニヤ物語】  #イセトラ R15    作者: 楓 隆寿
第2幕 転章。  〜魔性のロカベルとハゴネの旅〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/108

『ロカベルの魔法薬材と薬店』5   Merry Christmas!!  〜いや、男だからッ!仕方ないっ! 〜





 天界から覗く三柱。


「まだ進展はなさそうじゃ、

 ちぃと『永劫の残影』の世界の様子でも、覗いてくるかの」


「あなた、どうしたんですの、急に?」


 神シロの言葉に女神東雲は、目を丸くする。

 一方、黒銀の目の友こと、トランザニヤはポツリと零す。


 「違うパラレルワールドか」


 彼は下界を眺めながら、腕を組み紡いだ。


 「そうか、ここは他の神々に言わせれば『黄泉光の彼方』。

 兄の末裔ガーランドの呪詛ーー

 その”ねじれ”が生んだ、もうひとつの並行世界。

  ……そう、『永劫の残影』か」


 トランザニヤは言いながら、黒銀の目を赤く光らせた。

 女神東雲は、ふっと軽く息をつき零す。


 「ーー彼らがどう過ごしているのか…… 気にはなっていましたわ」


 

 三柱はスッと立ち上がると、雲の上を歩き出し、

 もう一つの世界への『長い橋』を渡って行った。



 


  

 ◇(もう一人のゴクトーが語り部をつとめます)◇




 「雪か ……」



 宿屋の丸い窓から覗きながらつぶやくと、窓ガラスが白く曇る。


 ダンジョン攻略のために訪れたビヨンド村。


 『アドリア公国」北西部の村だ。


 商店のショーウィンドウや道端の木々が『クリスマス』という華やかな儀式を迎える準備に忙しそうだ。


 その飾り付けは荘厳に光り輝き、見る者の心を和ませるだけでなく、

 まるで別世界に誘うような魔法をかけているようだった。



 コリン教会で育った俺は、

 この特別な日を心の奥深くに大切にしまっていた。



 思い出すのはーー


  

 雪が降るあの晩、暖炉の前で言ったシスターの言葉。


  「クリスマスには神様が贈り物をくださるのです。

  感謝いたしましょうね。さ、ゴクトー君、お祈りを……」



 懐かしいな。


 

 俺は思い出しながら降り積もる雪を眺めていた。


 目に入ったのは路地の先にある小さな教会。


 一際目を引く巨大なケドの老木がそびえ立っていた。


 そのケドの木は神々しくも威厳に満ち、まるで村の守り神かのよう。


 そして、今日のクリスマスーー華やかなクリスマスツリーとしての一面も見せている。


 色とりどりのオーナメントが飾られ、

 眩い光を放つその姿は、

 見る者を幻想的な世界へと誘いどこか心が癒えていく。


 宿屋の窓からぼんやりと眺める俺は、

 心のどこかで、静かにクリスマスの夜に想いを馳せていた。


 この特別な日を迎えるために誰にも気づかれぬよう、

 こっそりと出かける準備を始めた。



 ゴンゴン。


 湿り気を滲ませるノックの音。



 驚いて振り返った。



「ん?」


 ガチャッ!


 いきなりドアが開き、アカリがその姿を現した。


「ダー様… クリスマス一色で、村が綺麗なんです。

 一緒にお出かけしませんか?」


 浮かぶ笑み、まるで彼女全身が眩い光を纏っているかのよう。


 

「”ふふふ” これで…… ダー様を今日こそ落としますわ……!」



 その小声の言葉は俺には聞こえなかった。



 ”サンタコス”のアカリは琥珀色の鋭い瞳孔を閃かせ、恥じらいもなくその胸を”ボイン”と揺らす。

 

 そしてーー何気ない仕草で俺の部屋に、腰を下ろした。


 


 挿絵(By みてみん)


 

 その瞬間、上目遣いのアカリの存在感に圧倒される。


 彼女のコスプレはクリスマスの装飾に溶け込んでおり、

 美しさを一層引き立てていた。

 その目は俺の目をじっと見つめ、艶っぽい声で問いかける。



「どうですか?似合ってますか? ダー様ァ……」



 頬を朱に染めたその姿は♡の奥ーー『鼓動』をきゅんと刺激する。



 その時ーー背後から囁く声が聞こえた。



 挿絵(By みてみん)



「どう?へんダー?似合ってる?」


  

 振り返ると朱に染めた頬を膨らませ、ジュリがペタリと座った。


 一瞬、目の前が激しく揺れ、身体がぐらつく。

 カチッとした音ともに脳内のスイッチが入った。


 【妄想スイッチ:オン】

 

 ──ここから妄想です──



「旦那!限界ですぜ!」


 瞬間、『鼓動』が跳ね上がり、猛烈に駆け抜けた。


 【妄想スイッチ:オフ】


          

 ──現実に戻りました──


 「旦那、目がいやらしいですぜ!」


 ニヤリと口元を緩め、『鼓動』は、『妄想図鑑』に逃げるように収まった。


「っく!鼓動め!」


 意識とは裏腹に身体は反応してしまう。


 二人の視線が鋭い矢のように俺を貫く。



 恥ずかしいしッ!情けないっ!

 いや、男だからッ!仕方ないっ!

 こんな聖夜に……ってか、シスターが知ったら、

 きっと悲しむよ。




 いつまでも顔を伏せこの瞬間から逃れたい気持ちが募る。


 けれど、胸の高鳴りは止まらない。


 選ばれし宿命の者としての心の葛藤とともに、

 俺の心は、"クリスマスの魔法”に包まれていた。


 瞬間が重なり合う中で、彼女たちとの時間がどうなるのかーー


 期待と緊張、運命までもが交錯していたーー。




 ***【天上の三柱】***



「相変わらず、じゃのう」


「ええ、世界は違えど、わたくしたちの末裔ですもの」


「そうか、今日はーークリスマスじゃったな」


 神シロの言葉に、女神東雲が微笑みながら立ち上がった。


 二人の神は『長い橋』を渡っていく。

 一方の黒銀の目の友こと、トランザニヤは二人を追いながら零す。


 「がんばれ!ゴクトー! Merry Christmas!! 」


 










 お読みいただき、ありがとうございます。


 気に入っていただけたらブックマークをお願いします。

 リアクション、感想やレビューもお待ちしております。

【☆☆☆☆☆】に★をつけていただけると、モチベも上がります。


 引き続きよろしくお願いします。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ