噛みつき小僧
言葉だけ威勢の言い男がおりました。
村人は言い返します。
「お前の母ちゃん出ベソ」
これだけで泣くのです。
言葉だけは威勢の言い男がおりました。
村人はまた言い返します。
「やんなら相手してやるぜ」
でも、彼は逃げるのです。
何故でしょう。
彼にも理由はあるのでしょう。
いつも彼は言葉汚く罵るのです。でも逃亡。
常に彼は人の言葉に耳を貸さず、逃げるのです。それもどこまでも。
噛みつき小僧、と人は申します。
村人はお坊さんに相談します。
「性根が捻じ曲がってしまっては、それを直すのは容易ではない」
お坊さんの言葉は難しく、村人はさらにお坊さんに尋ねます。
「なら、おらたちどうするだ。相手するのも飽きただ。せめて芸でも見せてくれればいいのになぁ」
仕方なく、お坊さんは言葉を重ねます。
「期待するだけ無駄じゃ。疲れるまで放っておきなさい。どうせなにも出来ないのじゃからの」




