海を越えて届いた春節の年賀状
挿絵の画像を作成する際には「Ainova AI」と「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
日本の大学に留学しているお姉ちゃんが台南市の実家へ一時帰省したのは、私達一家が台北旅行から帰宅してすぐだったの。
「今年の春節は大学の春休みと上手く重なったからね。」
そこで今年の旧正月は、久々に一家四人水入らずで過ごせたんだ。
お陰で春聯を貼った私の家は、こんな賑やかになっちゃったの。
「う〜ん!水餃子を肴にやるビールは効くなぁ。こうして年菜で一杯やれば無病息災は確実だよ。」
「おお、美竜も良い飲みっぷりだね。」
日本でゼミ友と飲み歩いているからか、又お酒が増えたみたい。
お父さんと差し向かいで飲んで、すっかり上機嫌だよ。
「飲みすぎちゃ駄目よ、美竜。今は休診してる病院も多いんだし。小竜さん、貴方からも言ってあげて。」
「まあまあ…良いじゃないか、白姫さん。美竜も久々の実家なんだし。」
うちの両親は今でも名前で呼び合うんだから、見てて照れ臭いよ。
そこで私は話の流れを変えようと、勿体付けながら居間に入ったんだ。
「さっきポストを見てみたら、賀年卡(賀年卡)が沢山入ってたよ。」
「おっ!珠竜ったら気が利くじゃないか。」
そうして賀年卡の束をお父さんに引き渡し、仕分ける流れになったんだ。
やはり春節には紅包と賀年卡がないとね。
私やお姉ちゃんは学校の同級生、お父さんは同僚や取引先のような会社関係者、お母さんは幼馴染や保護者会。
そんな具合に大体の傾向はあったね。
だからこそ、その一通の風変わりさが際立ったんだ。
他の賀年卡がみんな封書に入った二つ折りのメッセージカードなのに、それだけが葉書だったの。
しかも富士山を描いた日本的なイラストだったんだ。
「えっ、『明けましておめでとう御座います』って日本語で書いてる…これ日本の年賀状じゃない!」
「見せて、お母さん!この二人分の筆跡、片方は見覚えが…」
そうして私と両親が訝しむ中、お姉ちゃんだけが微笑を浮かべて冷静だったの。
「そっか…私の方が先に着いちゃったんだね。」
どうやらあの日本式の年賀状は、日本でお姉ちゃんが国際郵便で送った物だったらしいの。
「ゼミ友の蒲生さんに勧められ、連名で出したんだ。一通位は日本式の年賀状で届くのも面白いと思って。」
「それで年賀葉書を取り置きしたの?お姉ちゃんもよくやるよ…」
賀年卡の中に一通だけ混ざった、日本式の年賀状。
それは私達一家の楽しい思い出になったんだ。
それにお姉ちゃんとゼミ友さんの仲の良さも垣間見えたからね。
楽しくやってるようで何よりだよ。




