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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ3
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帰宅

 カリバの町までの道程は、危険な獣に出くわす事もなく、初めての夜営でルパちゃんと料理をしたりと、比較的安全で楽しいものだった。

 まぁ、コウガとナイル・・・いや、フェリオの所為で精神的疲労はあったけどね。


 ただ、その中で衝撃を受けたのは・・・森を抜けた先に広がっていた、荒れた大地。

 これまで森の中と、岩場の続く山道は通った事があったけれど・・・所々立ち枯れた木々に疎らな下草、森だったはずのその場所は、カサカサに乾いた落葉と剥き出しの大地によって土色に侵食されていた。


 水の近くには森がある。だからその近くに町を作る。

 そんな暮らしの中にいた私が知らなかっただけで、この世界では水源に乏しく雨が降らない場所には、こうした荒野が多く広がっているのだとラインさんが教えてくれた。


 ――――――水不足。私はもっと、その現実と向き合うべきなんだろうか?



「―――ィナ、シーナ。大丈夫カ?」


 考え事をしていた私の肩をコウガが軽く叩き、心配そうに覗き込んでくる。

 ハッとして顔を上げれば、ナイルもルパちゃんも、ベグィナスさんも、心配そうにこちらを見ていた。

 しまった、会話の途中で考え事してた。


「―――ッッ!あ・・・ごめん、なに?」

「いや、ほら―――もう着くゾ」


 そう言ってコウガが視線を向けた先には、見慣れた町並み。カリバだ・・・。


「ほんとだ!やっと・・・着いたぁ」


 それまで考えていたモヤモヤも、この光景を見たら心の奥に引っ込んでいく。

 早くみんなに会いたい!早く帰るって約束したのに、また心配掛けて・・・怒ってるかなぁ。

 怒られると思いながらも、ついつい笑顔になる私に、さっきまで心配そうにしていた面々もホッとしたように笑顔に変わる。


 町の門を抜け、見慣れた町並みを通り過ぎ、少しだけ町の外れへと向かえば・・・。

 暮らしていた期間はまだほんの少しだけ、離れていた期間だってそれほど長くは無い。それでも懐かしいと感じるその家の前には、馬車を見付けて駆けてくる、二つの影。


 家の少し手前で停車した馬車から急いで降りれば、その二つの影は真っ直ぐ私の元へと飛び込んで、ギュッと抱き締めて迎えてくれた。


「ねぇちゃん!」

「おねぇちゃん!」

「トルネ、ラペル!!遅くなってごめんね」

「ホントだよ。何やってるんだよ」


 トルネはクシャッと顔を歪め、泣き笑いの表情で怒ったような事を言い、ラペルは顔を埋めたままギュウギュウとしがみついて離れず、その表情は分からない。

 ラペルの背中をポンポンと叩いて落ち着くのを待っていると、背後からの不穏な声に反応したトルネが、ゴソゴソと私の腕の中から脱け出してしまった。


「ナイル、あれが二号のトルネだ」

「彼がそうなんだ。あの小鳥は妖精?錬金術師とはまた手強そうだなぁ」


 ちょっと、そこの二人。

 感動的な再会を台無しにするんじゃありません。

 声を聞いて飛び出して来たマリアさんも、状況を見た瞬間に「あらあら~」なんて楽しそうにしないで下さい。


 そんな大人達はさておき・・・。

 馬車から降りた他の面々が揃い、ルパちゃんがラペルと話したそうにそわそわしているのに気付いた私は、ラペルにそっと耳打ちをする。


「ラペル。珍しいお友達を連れてきたの。ラペルもきっと会いたかったと思うな」


 私の言葉にやっと顔を上げたラペルに視線で示せば、ラペルの顔がパッと明るくなり、涙も止まった様で一安心だ。

 するとラペルは、涙に濡れた顔を身に付けていた可愛らしいエプロンでグシグシと拭くと、眩しいくらいの笑顔を私に向けて言った。


「おかえり!」

「―――おかえり」


 ラペルの言葉にトルネも漸く笑顔を見せて、同じ言葉をくれる。


 “帰ってきた”。

 そう実感して、何だか不思議な気分になる。

 本来なら、元の世界へ戻って初めて本当の意味で“帰った”ことになるんだろう。

 今だって祖父の事は心配だし、会いたいと思う。

 でも、こうして“おかえり”と向かえてくれるこの家が、確かに私の帰るべき場所なんだと思えるから・・・。


「――――――ただいま!」

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