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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ3
69/264

サパタ村

 ガサガサッッ!!

「グローニア!見つけたぞ!!」


 転んだ体制のまま、ビクッと身体を強張らせた私に向けられたのは、何処か怒った様な・・・おじさんの声だった。

 それに続き、複数の人が顔を出す。


「グローニアはいたか?」

「さっきの悲鳴はグローニアだったか?」


 どうやら彼等は森に入ったグローニアを探していたらしい。

 私は強張って縮こまった身体を何とか起こし、彼等に顔を向ける。


「――――――誰だ?」


 いや、誰だって言われても。

 お探しの人じゃ無くて申し訳ないけども。


「私はカリバのシーナと言います。あなた方は?」

「おらぁ、この先のサパタって村のもんで、ゴビってんだ。後のもみんなサパタ村のもんだ」


 サパタ村!私が目指してた場所じゃない。

 それに、どうやらグローニアの知り合いらしい。

 ならこの人達に事情を話して、馬車なり何なりを貸して貰えないだろうか?


「あなた方が探しているグローニアさんとは、金色の髪と青緑の眼をした女の子の事ですか?」

「あ、あぁ・・・そうだが。なんであの子の事を?」

「それは・・・歩きながら話しますので、取り敢えず森から出ませんか?この森をいくら探しても、グローニアさんはもう見付かりませんし」


 私は一分一秒だって惜しいのだ。

 こんな所(森の中)で立ち話なんてしてる場合じゃない。



 そうして私はこれ迄の経緯を話しながら、村の人達と一緒にサパタ村へ向かう事になった。

 まぁ、私が錬金術師だとか、パートナーであるフェリオが拐われた辺りは伏せている。

 境界の森でグローニアと出会い、しるべ草を無理矢理交換されてここに来た事。早々にカリバへ戻りたい事などを話しながら村に着いた時には、サパタ村の人達の顔がどんよりと陰っていた。


「じゃあ、グローニアはアンタのしるべ草を奪って境界の森を抜けて、今カリバに居るってのか?」

「――――――えぇ、恐らく。怪我も無く無事に到着しているはずですよ」


 マリアローズは特別な花だ。フラメル氏の庭先にあるちょっとした林に出ることが出来るから、危険な事も無いはずだ。

 だから取り敢えずグローニアの心配は要らない訳で。それなのに村の人達の顔は、むしろ青褪めていってる様にも思える。


「なんて事だ・・・それじゃ明日には」

「・・・鬼の機嫌が・・・」

 

 後方では何やら顔を突き合わせ、深刻そうにヒソヒソとしているし・・・どうしたんだろう?


「兎に角、村のもんが迷惑掛けたみたいで申し訳ねぇ。ちょっとばかり不自由な村だが、村長の所になら馬車があるはずだ。今日は留守だから、明日になったら聞いてみるといい」

「そうなんですね・・・分かりました。でしたら、この村に宿は有りますか?」


 本当は直ぐにでも馬車を借りて帰りたい所ではあるけれど、所有者が留守ならば仕方がない。他を当たろうにも、この辺りにはサパタ村以外の村や町が無いのは地図を見て知っているし、歩いて行くよりは安全に早く辿り着けるはずだ。


「いや。そんな大層なもんはねぇから、うちに泊まるといい」

「ゴビさんの家に?」

「子供が二人もいるもんで、ちょっとばかし騒がしいたぁ思うが、そこは我慢してくれ」

「いえ、それは全然構いませんが。いいんですか?」

「まぁ最初に言っとくが、ロクな飯は出せんけどな」

「いえ。泊めて頂けるだけで十分です」



 そうして話が纏まった頃、サパタ村に到着した。


 サパタ村は、何と言うか・・・活気の無い村だった。

 村の周囲には畑が広がり、一見のどかな農村そのものではあるけれど、畑仕事をしている人も行き交う人々も、皆痩せていてどこか疲れきった様な表情をしている。


 ――――――畑自体はとても立派だし、作物もきちんと育っているのに、どうして?


 畑には、濃い緑と橙の縞々模様をした、カボチャっぽい作物。

 葉は若干萎れてる気もするけれど、ちゃんと実はついている。


 けれど、村の真ん中にある井戸に眼を向けた私は、その違和感に気が付いた。

 その井戸はおそらく、この村の水源なのだろう。

 けれど蓋の閉められたそこには、水を汲む人の姿所か、最近使われた形跡もない。


 もしかして、井戸が枯れている?


「さぁ、着いたぞ」

 そんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にかゴビさんの家に到着していた。

「おーい、帰ったぞ!」


 ゴビさんが呼び掛けると、家の中から二人の女の子が顔を覗かせた。


「おとう、おかえり!」

「・・・誰?その人」


 7歳くらいの女の子は、私の方を興味津々といった感じで見ているけれど、12歳くらいの女の子は、明らかに不審人物を見る様な、迷惑そうな顔でこちらを見ている。

 

「おぅ!森ん中で会ってな。今日はうちに泊めることにした」


 物凄くザックリした説明だけど、お姉ちゃんの方がとても嫌そうな顔して睨んでますよ!本当に泊まって大丈夫なんですか?


「あの、カリバから来ました、シーナです。この村には宿が無いとの事なので・・・一晩お世話になります」


 それでも野宿なんて出来ないから、なるべく愛想よく笑顔で挨拶をしてみるものの、私をスッパリ無視してお姉ちゃんがゴビさんに詰めよっている。


「お父、この人もご飯食べるの?うちに余分な食料なんて無いのよ?」

「しょうがねぇだろ?グローニアの奴が迷惑掛けちまったんだから」

「だったらグローニアん家に泊めればいいじゃない。なんであんな女の尻拭いを家でしなきゃなんないワケ?」

「仕方ねぇだろ、あいつん家は親父さんしか居ねぇんだから」


 ――――――うわぁ。気まずい、スゴく気まずい。


「・・・・あ、あの・・・・あのッ!!食べるものなら自分で何とでもなるんで、寝床だけ貸していただければ大丈夫ですから!」


 遠慮がちに声を掛けても父娘喧嘩真っ最中の二人には届かず、居たたまれなくて大きな声で一気にそう告げれば、お姉ちゃんからは胡乱気な目を向けられてしまったけれど、妹ちゃんが不思議そうに私を見上げて言った。


「お姉ちゃん、ごはん持ってるの?」


 その視線の行きくつ先には決して大きくない、私のバッグ。


「うん。ほら、こんな感じで」


 私はダミー用の魔法鞄経由で、スマホからナガルジュナで買ったパンを取り出す。


「スゴイ!!――――――パンだぁ!」


 ――――――え、そっち?

 オカシイな?魔法鞄も結構珍しいって聞いてたんだけど。


 見れば、お姉ちゃんの方も魔法鞄よりもパンに釘付けになっている。

 ちなみに、ゴビさんは・・・パンに生唾飲み込んでますね。パン凄いな。


「えっと・・・食べます?」


 本当はこれからの旅路を思えば、食料の備蓄は沢山あった方がいいんだろうけど・・・そんな三者の視線に晒されたら、誰でもこう聞くだろう。


「いいの!?たべる!!」

「コラ、エリー!」


 元気に返事をした妹ちゃんは、エリーというらしい。ゴビさんに咎められてしゅんと項垂れている。


「フンッ!何よ。そんな風に見せびらかして。どうせくれる気なんて無いんでしょ」

「トリアッ!何てこと言うんだ」


 ツンとしたままのお姉ちゃんはトリアと言うらしい。こちらはゴビさんに怒られてソッポを向いている。


 二人の反応と言動を考えると、どうやこの村ではパン等の食料が不足しているのだろう。

 泊めて貰うお礼としても、明日早々に村長に引き合わせて貰う為にも、ここは惜しまずパンを提供するべきだろう。

 何よりエリーちゃんのような幼い子供が、こんな風に飢えているなんて見過ごせないし。


「じゃあ夕食をご馳走するから、その代わり、今夜一晩泊めて貰えないかな?それなら良いでしょ?」


 私の提案にトリアちゃんは驚いた様に大きく目を見開いて、その後に小さく呟いた。


「それなら・・・いいけど」


 こうして私は、この日の寝床をなんとか確保できたのだった。

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