揺らぐ
「うわぁ。怒らせちゃったねぇ」
「また恨まれるな〜こりゃ」
そんなスフォルツァさんの表情に、ナイルとフェリオが他人事の様に言う。
いや、怒らせたのナイルとフェリオの会話だからね?
「いやでも、私は別に魅了なんてしてないから。きっと何か別の理由があると思うよ」
だから、ギリギリと唇を噛みながら睨みつけないで下さい、スフォルツァさん!怖い、怖いですから。
「シーナ、俺の後に隠れてロ」
すると怯える私を、コウガがスフォルツァさんの視線から庇うように隠してくれる。
「コウガ、ありがとう」
その頼もしさに思わずウルッとしながら、ヒョコッと顔だけ出して、前を向くコウガにお礼を返す。
そんな私達のやり取りを、魅了が解かれた兵士達が、まだ魅了が解けていない同僚達に、注目するように促している。
「おい!気をしっかり持て。ほら、聖女様が居られるぞ」
いやなんで?注目されると恥ずかしいんですけど。
そんな私の心中とは裏腹に、正気を取り戻した兵士達はその場に居る兵士全員へ声を掛けていく。
「見ろ、聖女様が怯えているじゃないか」
「お前も聖女様を見るんだ。気分がすっかり良くなるぞ」
「あぁ。聖女様がいながら、何故別の女性になど心を奪われたのか・・・」
いやいや、聖女じゃ無いし、最後のは何か違うし。
それに私の方を見た所で、流石にどうにもならないのでは・・・。
そう思いながら、促されてこちらへ視線を向ける兵士達には、取り敢えずニコッと笑顔を向けながら、コウガの後から様子を覗っていると・・・。
なんということでしょう。目の合った兵士達がみるみるうちに正気を取り戻し、こちら側へと集結し始めたではありませんか。
え、嘘でしょ?
まさか、まさか。そんな筈は・・・なんて思っている内に、スフォルツァさんに付き従っていた兵士達が皆、今度は逆に彼女に武器を向け包囲している。
『・・・・・・気に入らない、本っ当に気に入らない。あの小娘が私よりも魅力的だとでも言いたいの?そんなハズは無いわ。だってそうでしょう?私はこんなにも美しく、有能で、誰よりも稀な存在なのよ?だめよ、ダメ、認めないわ。でも・・・もっと・・・もっと美しく・・・誰よりも何よりも、私が一番美しく・・・もっと・・・もっと』
そして包囲された当の本人は、真っ赤な長い爪を噛みながら何やらブツブツと呟いている。
『フッ・・・フフフフフ。美しく、なるわ。私は、ワタクシは・・・もっと・・・・そうよ、美しさとあの方さえいれば、こんな男達必要ないじゃない・・・』
すると、スフォルツァさんから感じていた悪寒のような魔力の気配が急激に増していく。
肌を刺すようなその気配に、慌てて眼の色を青に戻してスフォルツァさんを視れば、纏っていた黒紫の魔力がユラユラと揺らぎながら増していくのがはっきりと視て取れた。
「魔力が・・・膨れ上がってる?・・・ッッ!!危ない」
膨れ上がった魔力が、突然グワッと牙を剥くようにスフォルツァさんを取り囲んだ兵士達を襲い、兵士達は突然の目に見えない攻撃に為す術もなく吹き飛ばされた。




