重なる悪意
心の中でごめんなさい、と言いながらスマホでソバカス兵士君を撮影すれば、ヒトヨミの鏡のデータに新着のマークが表示される。
それを確認すると───
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名前:ジョージ
性別:男 種族:エルフ
年齢:23歳
職業:アメリア聖教会信徒
体 力:238/427
魔 力:207/207
攻撃力:22 敏捷:18
筋 力:20 耐力:27
知 力:42 運:24
技能:算術 ごますり 迎合
状態:麻痺 魅了 魔力汚染 薬物中毒 (複数:バンプ・ヤランヤラン)
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へぇ、ソバカス兵士君はジョージって名前なのね。うん。なんだろう、それっぽい。
魔法属性の表示が無いって事は、彼は魔法は使えないのか。まぁ、使えてたら今頃反撃されてたかもしれないよね。
問題は・・・やっぱりこの状態の所だ。
「麻痺は私の所為として、薬物中毒に魔力汚染・・・それに、魅了?」
「状況から考えて、魅了はカロリーナ・スフォルツァの仕業だろうな」
「そうだね。でも魅了されたからってここまで妄信的になるもの?」
何故か私の技能にも"魅了"がある訳だけど、私の周りにはこんな風に妄信的になる人は居ない。
魅了自体、どうやったら発動?するのか分からないから、私が魅了を使えていないだけかもしれないけれど。
「それはこの辺りの所為じゃないか?」
私の疑問にフェリオがスマホ画面を指差す。
「薬物中毒?」
「あぁ。この手の症状は精神的に不安定になるから、魅了の効果が強く出たんじゃないかな」
「なるほど。でもこの薬物中毒、これもスフォルツァさんが?」
魅了と魔力汚染はスフォルツァさんが関係していると思われるけれど、薬物中毒だけはまだ断言できない。
以前、カリバでもヤランヤランという麻薬効果のある薬草を使っていたから、スフォルツァさんの可能性が高いとはいえ、使われている薬草がバンプとヤランヤランの二種類というのが引っ掛かる。
スフォルツァさんの一件の後、個人所有禁止の薬草について調べた時に、バンプも一覧に載っていたから少し覚えているけれど、バンプは少量であれば精神安定効果のある薬草で、長期に渡り摂取することで思考力の低下等の副作用を起こすはず。
中毒になるほど長期に摂取していたとなると、少なくとも半年以上バンプを摂取していた事になる。でも、スフォルツァさんの事件からまだ3ヶ月程。
それ以前にスフォルツァさんがミーミルに来ていたとは考え難いけれど、短期間で中毒を起こす程の量を摂取させるとなると、急性中毒により意識が混濁し、筋肉が弛緩した結果、呼吸困難により死に至る危険な行為だ。
スフォルツァさんがその辺りを気にするとも思えないけれど、彼が今こうして無事とは言えないまでもちゃんと生きている事を思えば、バンプの中毒は長期的なもので間違い無いだろう。
「ヤランヤランはそうだとしても、バンプの方は違うんじゃないか?」
一緒に薬草を調べたフェリオも、私と同じ考えのようだ。
「やっぱりそう思う?でも、だとしたらどうして・・・」
精神安定効果がある事から、不安感を払拭するために常用してしまう人がいる、と調べた書物に書いてあったけれど、彼はそのタイプなのだろうか。
「あの司教、コイツが具合悪くなった時に言ったよな。もう切れたかって」
「・・・言ってた。それに、彼の様子が奇怪しいのを持病だって。今思えば、あれは禁断症状だったよね」
「あぁ」
「じゃあ、あの司教が彼にバンプを飲ませていた?」
「だろうな」
「でもなんでそんな事」
「大方、自分に従う人間が欲しかったって所じゃないか?」
「そんな事の為に・・・」
話をしていた時も思ったけれど、あの司教本当にロクでもない。
じゃあ、このソバカス兵士君改めジョージ君は、司教にバンプを盛られて思考力が低下している所に、スフォルツァさんに魅了を掛けられ、更にヤランヤランまで盛られて中毒が加速、精神が不安定になり攻撃的になってしまった被害者、という事になる。
───二回もスタンガン使って、本当にごめんなさい。
私はグッタリと横たわるジョージ君に手を合わせて頭を下げると、そっとスマホからマメナポーションを取り出した。
お詫びと言っては何ですが、キッチリ回復させて頂きます。




