容赦ない2人
「さて、どうかな〜」
心なしかフェリオがスタンガンを警戒の眼差しで見ている気がするけれど、私だって無闇矢鱈と振り回したりはしないので安心して欲しい。
なんて思いながら、茶色に変色させていた瞳の色を元に戻してソバカス兵士君を観察する。
「やっぱり、魔力が汚染されてる」
「影の魔力か?」
「うん。これは・・・ナガルジュナで聖水を飲んでいた人達と同じような感じ」
ソバカス兵士君の魔力は緑。けれど全体的に黒紫の魔力が混ざっている状態だ。
「魂源までは汚染されてない感じか?」
「魂源は・・・うん大丈夫、かな。あッ!これ、ココ。え~と」
魂源を確認しようとして胸元を確認すると、それよりも少し上、鎖骨の辺りに黒紫の魔力が一点に濃く集まっている場所がある。
それを確認しようと、ソバカス兵士君の立襟のシャツのボタンに手を掛けると、グッタリとしていたソバカス兵士君が僅かに身動ぎをする。
「おい、シーナ。抵抗出来ない人間の服を脱がすなんて・・・」
フェリオにも信じられないモノを見る様な目を向けられ、私はそこで漸く状況を思い出し、バッと手を引っ込めた。
「ちょッ!違くて!脱がそうとした訳じゃ無いの!いや、ボタンは外そうとしたけど、首元を確認したかっただけでッッ」
説明してるだけなのに変な汗が出てきた。
「ククッ、シーナ慌て過ぎ・・・クククッ」
慌てる私に、フェリオが可笑しそうに笑う。
それを見て、ようやく揶揄われた事に気付いた私は、カッと頬が熱くなる。
「ちょっと!こんな時に変なこと言わないで!!早くしないと誰か来るかも知れないでしょ」
「悪い悪い。でも、シーナが考えなしに男の服脱がそうとするから」
「言い方ッ!だったらフェリオがやってよ。多分ネックレスか何かを着けてると思うの」
「はいはい。えーと、これか?」
クスクスと笑いながらフェリオはソバカス兵士君の襟元を寛げると、そこから細い紐を引っ張り出した。
それには小さな布袋が付いていて、中に何か入っているようだった。
「やめ・・・それにさわ・・・な」
布袋を開けようとするフェリオに、ソバカス兵士君がぼんやりとした表情ながらも、手を伸ばして抵抗する素振りをみせる。
「あぁ。やっぱりコレか」
無いに等しい抵抗をあっさりと無視したフェリオが、手のひらに布袋の中身をコロンと取り出すと、それはうっすらと青く色付いた白い石。虹色珊瑚の化石だった。
既にお馴染みとなってしまったこの石もまた、この事件に影憑が関わっている証拠だ。
「う゛ぅ~。持ってるとやっぱ変な感じする」
その石を手のひらに置いたフェリオは、ゾワゾワッと身震いしたかと思うと、パッとそれを床に転がす。
「ぁッ・・・ぁあ、なんて事、を」
「あ?あぁ、悪い悪い」
それを見たソバカス兵士君が、信じられないとでも言いたげに抗議の声を上げたけれど、フェリオは気にした風もなく、軽い調子でそう謝るとそのままのトーンで更に続ける。
「これもあの女、カロリーナ・スフォルツァから貰ったのか?」
「そ、ぅだ。貴ちょうなモノを、下さったの・・・だ。おれの、俺の、だ」
「貴重なモノ?いやいや、危険なモノだろコレは。没収だ没収」
「ヤメ・・・ヤメ、ロ」
「シーナ」
「はいは~い」
フェリオに目配せされた私は、床に転がった石に手を翳しスマホに収納する。
大切な石が突然跡形もなく消え去ったのを目の当たりにしたソバカス兵士君は、愕然とその場を凝視し、言葉にならない呻き声を漏らしてガックリと力尽きてしまい、少し気の毒になってきた。
「う~ん、これじゃ話も聞けないよね。マメナポーションで回復できるかな」
「イケるんじゃないか?でもその前にシーナのスマホでステータス見てみろよ」
「そうだね。気は引けるけど、この場合は仕方無いよね」
フェリオに促され、少し躊躇っていた私も覚悟を決めてソバカス兵士君にスマホを向ける。
ステータスを確認すれば、彼がどのような状況なのかハッキリするはずだから。
───カシャッ




