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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
246/264

相棒は斯くも頼もしき

「フェリオ!!」


 私は扉が完全に閉まり、司教達の足音が去ったのを確認してから、フェリオの檻に飛び付く。


「具合悪い?大丈夫?」


 私が呼び掛けると、それまでグッタリとして微動だにしなかったフェリオが、ヒョイッと何事も無かったかのように頭を上げる。


「ん?大丈夫だ問題無いぞ」

「本当に?」

「あぁ。心配したか?」

「そりゃするでしょ!変な魔道具の檻に入れられてグッタリしてたらッ」

「悪かった悪かった」


 私がどれだけ心配して・・・なのになんでそんなに元気なの!?いや、元気なのは良いことだけども。


「この檻に入ってると、少しずつ魔力を奪い取られるんだよ。外からの魔力も遮断されるし、普通のケットシーなら多分ああなる」

「えッ!?魔力を奪うって、大丈夫じゃないじゃない」


 パートナーからの魔力を遮断した上に、更に奪うなんて、そんな危険な魔道具だったの!


「いやいや。オレならこのくらい問題ないぞ。それに、魔力を遮断するって言っても限度があるみたいだ。いつもより少ないけど、シーナの側に居ればそれなりに魔力が入ってくるしな」

「本当に?無理してない?」

「してないしてない。その辺はシーナの溢れる魔力のお陰だ。自分の魔力量に自信持って良いぞ」


 確かにそう言われると溢れる魔力があって良かったとつくづく思う。とは言え、それでもいつもより送られる魔力が少ないのは確かなのよね?


「そうは言っても、全く害が無い訳じゃ無いでしょ?」

「まぁ、こんな所に閉じ込められて気分良くはないな」


 それはそうだろう。誰だって檻に閉じ込められるなんて嫌なものだ。その上呪いの様な副作用まである檻だ。

 何より、フェリオはオーベロン級の妖精で、自分が保有出来る魔力が元々多いから大事にはなってないみたいだけど、本物のケットシーだったらどうなっていたか分からない。

 錬金術師である私を偽の聖女として使いたい司教が何故そんな魔道具を使うのか、理由が全く分からない。

 だって、錬金術を駆使して聖女のフリをしていると思ってるだろうに、妖精が居なくなってしまったら意味がない。

 もしかして、あの司教はこの魔道具が魔力を奪うって知らないんじゃ。

 もしそうなら、司教にあの魔道具を渡した人物(錬金術師)には、もっと別の目的が・・・。

 そこでまた一人の人物が頭を過る。

 思い過ごしならいい。でも思い返してみれば、さっきのソバカスの兵士の様子は、あの時のゲルルフによく似ていた。


「おい、シーナ!そっちこそ大丈夫か?顔が真っ青だぞ」

「あ・・・うん、大丈夫。ごめん、早く出たいよね。前みたいに壊せるかな?フェリオ、出来そう?」


 そうだ。今は不確定要素に怯えている場合じゃない。

 前回はフェリオが捕らえられていたワケじゃ無かったから上手く出来たけれど、今回はフェリオの魔力に限界がある。

 しかも檻の所為でお互いの魔力を遮られた中で、錬金術が上手く発動するかも未知数だ。


「あー・・・多分。試しにちょっと檻の中に手を入れてみてくれるか」

「うん、分かった」


 確かに。フェリオと直に接していた方が魔力を渡しやすいだろうし、檻に魔力を遮られる事も無いかもしれない。


「う゛ッ・・・」


 けれど、檻の隙間から指を一本差し入れると、覚えのある不快感が私を襲う。

 自分の中に異物が入ってくる様な不快感。

 フェリオは大丈夫だなんて言ったけれど、この不快感の中にずっといて、大丈夫なはずが無かった。

 フェリオを注意深く観察すれば、息は上がっているし、首を上げただけで身体まで起こそうとしていない。心配掛けまいと不調を隠してるに違いない。


「悪い、気持ち悪いよな」

「そんなのッ!フェリオの方こそ本当に大丈夫なの?錬金術使っても平気?」

「あぁ。シーナの指に触れてればなんとかなりそうだ。ただ、一気に錬成は無理そうだから、一個ずつ解除してこう」

「そうだね。だったら最初にこの不快感をどうにかしよう。多分この辺に───やっぱり、この檻にも青い石がついてる」


 檻の頂点に嵌め込まれた青い石。恐らくこの不快感はこれの所為だと思う。これを白い石に戻せば───


「いや、まずは魔力を遮ってる方を何とかした方がいい。そっちを壊せばオレの使える魔力が増えるはずだ」


 私は早くフェリオの不調を治したいとそればかりが先に立って、フェリオの魔力が万全でない事を失念していた。

 全く、自分の余裕の無さに情けなくなる。


 私がしっかりしなきゃいけないのに。

 こんなんじゃ、成功するものもしなくなっちゃう。

 焦りや自己嫌悪、不安や怒り。そういった感情は一度リセットするべきだ。


 ───すぅぅぅ~はぁ。

「よし!ごめん、そうだよね」


 自分の頬をバチンッと叩き気合いを入れ直した私に、フェリオがギョッとした顔をしたけれど、今は気に留めている暇はない。


「お、おう。じゃあ、よろしく頼む」

「任せて。今回も多分・・・うん、あった」


 なるべく揺らさない様に、グッと力を込めて重量のある檻を持ち上げると、その底には魔方陣と黒紫の魔石。

 恐らく魔方陣で魔力を遮断し、魔石が魔力を奪っているのだろう。


「底に魔方陣と魔石があるから、先ずは魔法陣を破壊しよう。フェリオ、お願い」

「おう!」


 ───シュゥゥッゥゥッゥゥッゥゥッゥッゥッッ。


 前回、フェリオが捕らえられた魔法陣付き布袋越しの錬成は、魔力の通りが悪くて手こずった記憶があるけれど、今回はあの時よりも更に魔力の通りが悪い。

 まるですっごく細~いストローでシェイク飲んでるみたい。

 もどかし過ぎで息が詰まりそう。

 これ、ちゃんと成功するの!?

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