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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
220/264

青キノコ、ダメ絶対!

 ───とまぁ、実験に至る迄に諸々あった訳ですが・・・実験の結果は上々でした。

 一番毒性の低いキノコの毒の成分を錬金術で抽出。それを更に弱毒化しつつ実験用のポーション(ちょっと気分が悪くなる薬)に改良して、三人にそれぞれ宿から数メートルおきに距離を取った後に飲んで貰い、スマホから解毒ポーションを送れるか試してみた。

 すると、凡そ50メートル迄は問題無く送ることが出来たけれど、遮蔽物や離れ過ぎて視認出来なかったり、相手が窓や入口の閉じた屋内に居たりすると送れない事が分かった。

 流石に見えない相手に送ったり、壁をすり抜けたりは出来ないんだろう。

 それから、最初にコウガに送った時にはポーションの中身だけが飛んで行って、コウガの顔面にバシャッとなった訳だけど・・・普通に瓶ごと送る事も可能だった。

 あの時はコウガが獣型だったから、瓶よりも液体の方が都合は良かったんだろうけど、それを判断したスマホのAI?が有能過ぎてちょっと怖い。

 それに、皆の話では急に目の前にポーションが現れるから、キャッチするのが大変らしい。

 みんな反射神経が良いのか、落とすことは無かった様だけど、私なら確実に落としてるよね。来るって分かってても無理なヤツ。

 まぁ基本的に皆強いから、普段ポーションが必要になることは殆ど無い。だからいざという時、例えば意識が無かったり、麻痺や何かで身体の自由が効かない時の為の切り札だと思えばこの機能は心強い。

 後は、やっぱりスマホで個人情報を取得した人以外には使えそうも無い事と、個人情報を取得したとしても必ずしも送れる訳じゃ無い事も分かった。

 これに関して、通りすがりの全然知らない人で試してしまったのは本当に申し訳無いと思っている。ナイルとフェリオが検証には絶対必要だからと、いつの間にか写真を撮ってたのよね。ロックを解除してあれば誰でも使えちゃうのは問題かもしれない。

 だけどポーションを送るには何かしらの条件が必要っていうのは、確かに知っておくべき事だったから、怒るに怒れないのが辛い所だ。


 と、そんな感じでしっかり検証も終わり、皆各々自分の部屋へ帰って行ったんだけど、私は悩んでいた。


「ねぇ、フェリオ」

「ん~」

「みんなの個人情報を見たんだから、私のデータもみんなに見せるべきかな?」

「んん~」

「そうだよね。やっぱり自分のだけ隠すなんて良くないよね」

「ん~・・・」

「ちょっと、聞いてる?」

「んん~?」


 人が真面目な話をしているのに、フェリオから返ってくるのは明らかに生返事ばかり。

 一体何をしてるんだ?とフェリオを睨み付ければ、フェリオはベッドの上でゴロンと寝転んで何やらスリスリと身体に擦り付けている。


「フェリオ?」


 まるでマタタビを貰った猫の様なその姿に、私は首を傾げてフェリオが擦り寄っている物を覗き込む。


「これはッ!?」


 フェリオが擦り寄っていたもの。それは、真っ青でキラキラした硝子細工の様に美しい・・・キノコだった。

 そう言えばこんなキノコもあった!!いつの間に持って行ったの?

 無毒だったはずだけど、フェリオの様子を見る限り何かしら状態異常があるかもしれない。

 私はそのキノコの鑑定結果をもう一度良く確認する。


真っ青でキラキラキノコ

『無毒 食用可だが取り扱い注意』

通称:妖精の酒杯

※妖精がこのキノコの匂いを嗅ぐと酩酊状態となるので注意が必要。症状は一時的で依存性は無い。


 ───コレだー!!!!

 まさに猫にマタタビ。妖精に青キノコ!


「フェリオ、大丈夫?」

「んぅ~?シーナ?」

「気持ち悪いとか無い?解毒ポーション飲む?」


 私はそ~ッとフェリオの腕の中から青キノコを取り上げ、フェリオの背を撫でながら様子を窺う。


「いやぁ?寧ろすっげー楽しい♪」


 今思えば、ナイルとスマホ操作してる時も妙にハイテンションだったかも。じゃあアレは酔っぱらいの悪戯ってこと?

 なんて思い返していると、ポフンッとフェリオが猫から人へと姿を変え───


「ふぅ~アッツい」


 次の瞬間、頬が上気し金色の瞳は潤んで、開いた襟元から鎖骨を覗かせた美青年が、私のベットに横たわっているという・・・。

 

 ───ふぁッ!!!?

 ちょっと待って!ナニかがダダ漏れてるから!

 慌てて背を擦っていた手を引っ込めようとした私の腕を、何故かガシッと掴んで止めたフェリオにジッと下から見上げられ、私はなんだか居たたまれなくなる。


「フェリオさんや?ナゼ人の姿になったんだい?」


 何時ものようにフザけた態度で冗談だと言って欲しくて、少しおどけた言い回しでそう問い掛けた私は、不意に腕を引かれそのままフェリオの上に覆い被さる様に倒れ込んでしまった。

 先程よりも近くなったフェリオの顔に、ブワワッと覚えのある感覚湧き上がる。


 ───ウソッ!?ダメダメ!フェリオは妖精で、パートナーなんだから!


 弾けそうな魔力を、何とか押し留めようとグッと耐えると、魔力がギュウゥッと一点に圧縮されていく。

 もう少し、あと少しで、抑えられそうな気がしたその時───


「・・・こっちの姿なら、オレでも雨降らせられるかなぁ~と思って」

 

 フェリオが腕を掴んでいたのとは反対の手で、私の頬をそっと撫でる。

 その表情にフザけている様子は微塵も無くて・・・。


 ふぇッ!?

 ───ザァァァァァ・・・・


 今日この町には、三年分くらいの雨が降ったかもしれない。

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