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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
209/264

謝意~グルバトン・グェイアの場合~

 翌日、私達は初日に行われた宴の席と同じ部屋に全員揃って招かれていた。

 そこには勿論グェイア総長が居て、私の隣には"不本意"と顔に書かれたコウガも居るが、コウザとグェイア夫人改めイジャランの姿は無かった。

 そして、コウガを目の前にした他の族長達が明らかにザワついているのも、ありありと感じられた。


 そりゃそうだよね。コウガとグェイア総長、そっくりだもん。


「まず始めニ、今回の影魔獣討伐への協力、心から感謝スル。貴殿等が居なければここまで迅速に討伐を完了するコトは出来なかっタ。そうで無ければ、我が国に甚大な被害が出ていたのは間違いなイ。それに多くのポーション提供にも助けられタ。一人の犠牲者も出さずこの戦いヲ終える事が出来たのは、シーナ殿のお陰ダ」


 そう言ったグェイア総長に並び、他の族長様方も頭を下げる。

 確かに、今回このタイミングで私達がミーミルに滞在していた事は、彼等にとって僥倖だっただろう。あまりにもタイミングが良すぎて、これすらも母なる大樹(マザーツリー)の導きなのでは?と疑ってしまう程に。


「今回はこちらの都合で滞在させて頂きましたし、ウールズへ向かう街道となれば他人事ではありませんでしたから。それにこちらとしても、これを機にミーミル共和国との友好が更にが深まれば、と考えているのですが」


 族長揃って示された謝意にラインさんが代表して応える。こうして見ていると、ラインさんの堂々とした振る舞いは流石貴族といったところだろうか。


「そう言って貰えると助かル。勿論、アクアディア王国とはこれまで以上に友好的な関係が築けると確信していル」


 ここまでは国の代表同士のやり取りだった。

 堂々と前を見据えていたグェイア総長の視線が揺らぎ、私の左横辺りを彷徨ったかと思えば、フッと落ちる。


「それかラ、今回は虎人族が迷惑を掛けタ。錬金術師であるシーナ殿を危険に晒すナド、言語道断。コトを起こした者に代わり謝罪をさせて欲しイ。シーナ殿、本当に申し訳ナイ」

「いえ、そんな。メイリンさんには十分過ぎるくらい謝罪して貰いましたし、特に怪我も無かったので」

「いや謝罪をしなければならないのハ、メイリンだけではナイ。メイリンから聞いたと思うガ、この件の元凶は我が妻のイジャランと息子のコウザにあル。本来ならば此方から出向き謝罪させるべきなのだガ・・・アレ等は別件の容疑と今回のコトを合わせて今は拘束されているのでナ」

「別件で・・・拘束?」


 それはコウガの事だろうか?

 三年前、イジャランとコウザはコウガに呪いの魔道具を嵌め、黒豹だと偽って追い立て、更にはその命までをも奪おうとした。


「・・・我が家の、いや私の過ちダ。本当に申し訳なかった」


 その謝罪は、一体誰に向けられたものだろうか?

 グェイア総長がコウガの名を口にする事は無かったけれど、その想いはコウガに向かっている様に思えた。

 でも、今この場で公式に謝罪を受けているのは私だから・・・。


「今回の件は私にも落ち度がありましたし、ミヤマコモモという貴重な素材も手に入れられたので・・・()()謝罪を受け入れます」


 謝罪を受け入れる事で、これ以上の謝罪は必要ないと名言する。あくまでも私は、だけど。


「寛大な言葉、感謝すル。後程、約束していたポーションの代金と材料、それから垂れ麦を届けさせル」

「垂れ麦はもう頂きましたよ?」

「詫びと感謝の印だと思って受け取ってくレ」

「そういう事なら、有り難く頂きます」


 垂れ麦を追加で貰えるなんて、なんて有難い。ここは素直に受け取りますとも!

 それにこれで貸し借り無しって事になるしね。


「ウム。では、引き続きこの後の予定等を確認したイ。ラインヴァルト殿、宜しいカ?」

「勿論です。こちらからもお願いします」

「それならばテンジン翁、ラインヴァルト殿に街道封鎖の解除について説明と、アクアディア王国との国交強化について具体的な内容を協議してくレ」

「キュキュッ。任せておくレ」


 そんな訳で、ラインさんとアクアディアの騎士達はテンジン翁と共に別室へと移動していった。

 そして気が付けば、ナイルはアスバン様と二人で何時に無く強張った表情で何やら話し込んでいる。


「じゃあ―――ミルとの国境は――――・・・」

「アァ。アチラさんは―――・・・」


 どうしたんだろう?と思いながらも、その真剣な雰囲気に割り込む訳にもいかず、チラリとコウガの様子を窺う。

 実は、必要ないと断るコウガをこの場に半ば無理矢理連れて来ていたのだ。

 少しでもグェイア総長と話す時間があれば、なんて思っていたんだけど、コウガは相変わらず我関せずといった態度を崩さない。

 しかも、グェイア総長も物言いたげにコウガを見てはいるものの、声を掛ける所まで至らない。

 これじゃなんの進展も無くこのまま解散になってしまう。この寡黙親子ッ!!

 なんて内心焦っていると、グェイア総長では無く兎人族の族長レッキス様がコウガの元へやって来た。


「君は、スイメイの息子だろウ?」

「・・・あぁ」

「今更な事は重々承知の上で言わせて欲しイ。君とスイメイには辛い思いをさせタ。本当にすまなイ」

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