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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
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〈影黒豹対策会議

 迎賓館の一室、宴が行われたのと同じ円卓には獣人族総長グルバトンと各族長、それからアクアディア王国一行からはラインヴァルトとナイルが席に着いていた。

 しかし、そこにコウザの姿は無い。

 何故なら、彼は宴の席ではっきりとアクアディア王国の助力を拒絶していたからだ。

 そんな者を、この席に着ける事は出来ないとグルバトンは判断したのだろう。

 そしてアクアディア王国側もまた、コウガを出席させる事は無かった。

 それはもちろん本人の意思であり、シーナを守る役として三人共納得しての事だった。


「しかし、まさかアクアディアの一行に双角の鬼人が居られるとハ」

「何故宴に出なかったのですかナ?」


 族長衆の中ではまだ若い、兎人族の族長と狐人族の族長が、警戒の色を隠しもせずにナイルへと問い掛ける。

 何故なら今現在、獣人族にとって鬼人族は警戒すべき敵だからに他ならない。


「それは・・・責任を感じているから、ですね」


 状況としてコウガに付き合って宴に出席しなかったという形にはなったが、ナイルの本心はこちらにあった。


「責任とハ?」

「今、フヴェルミルがミーミルに侵攻しようとしているのも、元を正せば僕等が国を守りきれなかったからなので」


 兎人族長の問い掛けに、ナイルは普段あまり見せない苦しそうな表情でそう答えた。

 今、フヴェルミルとミーミールの国境では両軍の睨み合いが続いている。

 クーデターを起こしたフヴェルミルの将軍ルブール・アルハリは、国内が混乱している最中クーデターの勢いのままに他国へと侵攻を開始したのだ。

 その為ミーミルの主戦力は今現在国境へと向いており、今回の影黒豹の被害が大きくなった原因一つとなっていた。


「確かにフヴェルミルでのクーデターは我々にも損害を(もたら)しタ。しかし、何者かの暗躍があったとの報告も受けていル。貴殿方がただ敗走したとは思っておらんヨ」

「グェイア総長、お気遣い痛みいります。今回の訪問に関しても受け入れて下さってありがとうございます」

「なに、双角の鬼人族であれバ、今のフヴェルミル主導者にとっては敵となろウ。敵の敵は味方という事ダ」


 グルバトンはそう言って席上の面々を見渡し、異論の無い事を確認すると居住いを正す。


「では、そろそろ本題に入ろウ。先ずはラインヴァルト殿、ナイル殿、今回の協力に感謝すル」

「いえ、影魔獣に関しては各国共通の脅威ですから、協力は惜しみません」

「僕は先程も言ったように、責任を果たすという意味でも協力させて頂きます」

「ウム。では、影黒豹についての報告をアスバン、頼む」

「はいヨ。先ずは町の防衛についてだガ、今は水魔法師が森に放水をしテ影魔獣の気を逸らしていル。だが、水には限りがあるからナ。そう何時までも持たんだろウ」


 影魔獣はどの個体も同様により水のある場所やものに集まる傾向にある。その為、森に定期的に放水することで町へ向かわせない様に仕向けているのだ。


「それから影魔獣についてだが、ゲートからは11頭出現。内2頭はゲートへ戻リ、2頭はその場で討伐、7頭が残っておル。あと普通の黒豹はあと10頭程と思われるガ、如何せん黒豹と影魔獣の区別がつき難いのが厄介ダ」


 討伐された2頭の影魔獣を討ち取ったのは、他でもないアスバンだった。

 彼は獣人族では希少な土魔法使いであり、この国の軍の要でもある。


「確かに厄介だナ。見分ける方法ハ?」

「影魔獣の目は真っ赤デ、額に魔石があル。だが、遠目からは見分けがつかン」

「そうカ。ならば各隊に一人魔法師を配置シ、状況に応じて各個対処するしか無さそうだナ。魔法師の数ハ?」

「身体強化以外の魔法が使えるのは儂を含めて4人。だが、内二人は夜通し放水せねばならんかラ、戦力的には火を使えるヤツと儂との実質2人だナ」


 影魔獣は暗闇に入り込むとその姿が全く見えなくなってしまう。それ故、日が落ちてからの討伐は困難となる為、討伐作戦は夜明けを待って行う事が決まっていた。


「2人カ、厳しいナ・・・。ラインヴァルト殿、助力を乞う立場デ申し訳ないが、魔法が使える者はいるだろうカ?」


 グルバトンはナイルの方へチラリと視線を向ける。獣人族や人間族よりも遥かに魔法に長けた種族、それが鬼人族だ。


「えぇ。なので、私とナイルの2人がこの会議に参加させて頂きました。私は雷を、ナイルは―――」

「僕は地と火だよ」


 正確に言えばラインは雷と光、ナイルは別の属性なのだが、ここでは2人とも特殊な属性を伏せている。


「ホゥ。お二方とも魔法が使えるのカ。それは心強イ」

「お役に立てて何よりです」


 ニコリと笑顔を見せたラインに、グルバトンは無愛想に見えるその顔に僅かに笑みを見せ、安心したように一つ大きく頷いた。


「ヨシ!後は編成を組んで配置を決めなければナ!そう言えば、嬢ちゃんは大丈夫だったかイ?」


 明日に向け気合いを入れたアスバンは、ふと先程倒れた錬金術師の事を思い出した。

 倒れた直後に疲れが出たのだろうと聞いてはいたが、若い娘があの惨状を見てショックを受けたのではないか?と責任の一端を感じていたのだ。


「今は部屋で眠っているはずです。ここまで長旅だったので、ゆっくり休めば大丈夫でしょう」

「そうカ。嬢ちゃんが起きたラ、本当に助かったと礼を言っといてくレ。嬢ちゃんのポーションがなければ、多くの者が命を落としただろうからナ」


 アスバンが改めて礼をすると、そこにいた族長衆が皆一様に頭を下げ、グルバトンが加えて告げる。


「私からも改めて本人へ礼をさせて貰うつもりだガ、今日のところはゆっくりと休むよう伝えてくレ」

「分かりました。伝えておきます」


 こうして、影魔獣対策会議は終了した。

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