炊きたてごはん 実食編
「姫、懐かしい味なんだね」
「やはり、無理をしていたんですね」
「お嬢さん、垂れ麦が食べたくなったラいつでもおいデ」
「ウンウン」
いや、本当に。ごはんは食べたかったし、懐かしいと思うけれど、そこまで心配されてしまうと、どんな顔をして食べればいいのか分からないです。
ここは早々に炊きたてごはんのインパクトでこの空気を上書きしてしまおう。
「炊き上がって蒸らし終わったごはんは、こうしてふんわりと、粒を潰さないように混ぜながら、こちらの器に移します」
お釜の蓋を外した瞬間ふわっと漂う香りは、紛う事無き故郷の香り。
そこへ蓋と一緒に作っておいた杓文字を差し入れ、これまた作っておいたおひつに移しながら更にふんわりと解していけば・・・
まずは完成、炊きたて玄米ごはん!
そして次に開けたお釜の中、純白に輝きふっくらと炊き上がった艶々のそれを、更に注意深くふんわりとおひつに移せば・・・
遂に完成、炊きたて白米ごはん!!
因みに、昨日張り切って作った羽釜と蓋は、5合釜2セットと一升釜1セット。杓文字とおひつも3セット作ってある。
「おぉ!これが"ごはん"か。楽しみだ」
「凄いネ、垂れ麦がこんな風になるなんテ。これなら確かに主食になりそうだヨ」
「量も増えた気がしますね」
「なんだか、お腹の空く匂いだしね」
みんながごはんを覗き込みながらそんな風に感想を口にする中、クズリさんはいつの間にかメモを取りながら真剣にごはんを見詰めていた。
「どうしてこの器ニ?」
「美味しく保存する為です。こうしておくと、ごはんが乾き難いので」
「なるほどナ」
「それでは、食べてみましょうか」
私の号令に、クズリさんが深皿とスプーンを用意してくれる。本当ならお茶碗が欲しい所だけれど、流石にそこまでは用意してなかった。まぁ、箸は作ったんだけどね。
「では、まずは玄米ごはんから―――」
お皿に少しずつ玄米ごはんをよそい全員に行き渡ると、各々炊き上がったごはんを観察してから、少し恐る恐るといった感じで口に運ぶ。
私もそんな皆を見ながら、「いただきます」と手を合わせ、待ちに待った瞬間を堪能するべく玄米ごはんを一口。
口に入れると、仄かに糠の匂いが口に広がり、固めの食感は少しパサついていたけれど、噛み締めていけば次第にお米の甘さが感じられた。
食べ慣れた白米とは少し違うけれど、それでも久しぶりのごはんはやっぱり美味しい。
でも、お米を食べ慣れた私には美味しく感じられたけれど、他の人はどうだろう?パンとは食感も味も全く違うから、もしかしたら受け入れられないかもしれない。
心配になって様子を窺うと、皆が真剣な顔をして無言で咀嚼している。
最初に口を開いたのは、ラインさんだった。
「―――うん。パンと違って食べ応えがありますね」
「面白い食感になるね」
「パンとは全く別物なんだな」
「パンと比べるト、少し味気無い気もするネ」
「デモ、噛んでいると不思議と甘みを感じル」
期待したような「美味しい」の一言は聞こえなかったけれど、それでも受け入れられたようで、少しホッとする。
それならば、真打ち登場で次こそは「美味しい」と言わせてみたい。
「じゃあ、次はこちらの白米ごはんを―――」
皆が食べ終わった所で、今度は白米ごはんをお皿によそう。
「白くしただけデ、そんなに変わるのかナ?」
テンジン様は懐疑的な言葉を口にするけれど、そこは食べてみてのお楽しみ。
私は待ちきれず、一足先にパクリと一口。
口に入れた瞬間、ごはんの匂いがダイレクトに鼻腔を抜け、空気を含んでフワリと解れたお米の粒はモチモチと柔らかく、数回の咀嚼ですぐにごはんの甘さが口に広がる。
これ。これなのよ!やっぱりごはん美味しい!!
「ンンッ?これハ――――――」
「こんなにも変わるものなのですね」
「モチモチしてて、さっきよりも甘みを感じるね」
「確かニ。甘みが強く出テ、味が上品になるナ」
「アチチッ―――ハフハフッ」
猫舌?のフェリオが熱そうにしながらも、食べるのを止めない上に、他の皆も明らかに先程よりも反応が良いのを確信し、私は期待を込めて問い掛けた。
「どう、ですか?」
すると、
「美味しいヨ」
「とても美味しいです」
「すっごく美味しい!」
「これは、美味いナ」
「スゲー美味い!ちょっと熱いけどな」
と、みんな口々に「美味しい」と言ってくれる。
そうでしょう、そうでしょうとも。
故郷の味を褒められるのは、存外嬉しいものらしい。
「良かった。ごはん、美味しいですよね!それに、ごはんは他のおかずとも良く合うんですよ。食べ方も色々で、炊き込みごはんにしたり、チャーハンや雑炊なんかもいいですね」
ごはんを褒められ嬉しくなった私は、ついつい調子に乗ってしまった。
「タキコミ?チャーハン?それは料理の名前カ?詳しく教えロ!いや、教えて下さイ!」
だから、そんな私の勢いにクズリさんの料理人魂が更に油を注いで燃え上がり、その後数十分に渡って垂れ麦を使った料理や、ごはんに合うおかずの話で盛り上がり、他の皆を呆れさせたのは致し方のない事なのだ。




