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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
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黒虎、語り続ける

「―――呪い、の?」

「あぁ。デモ、シーナに会った夜に外れタ」


 それは、私とコウガが初めて会った日の事だろうか?

 あの時コウガは大怪我をして、ポーションを飲んで眠っていたはず。私はそんなコウガの傷跡を綺麗にして、その後一緒になって眠ってしまったのは覚えてる。

 それ以外、特に何かしたわけじゃない。

 でも、コウガは私がその魔道具を外したと思ってるんだよね?


「どんな呪いだったか、聞いてもいい?あッでも、言いたくなかったら、言わなくても」


 呪いと付くぐらいだから、もしかしたら人には言いたくない様なことかもしれない。


「いや、大丈夫ダ。―――アノ魔道具の呪いハ、虎の姿から戻れなくなるものダッタ」

「それって、今みたいに人の姿になれなかったって事?」

「そうダ。オレは14の時カラずっと、虎の姿ダッタ」


 14歳・・・コウガは確か17歳だったから、3年もの間ずっと虎の姿だったの?

そりゃ虎の姿も格好いいし、生きては行けるだろうけど、獣人でも純血の獣人以外は獣化出来ないコミュニティの中で、人の姿になれないコウガが生活するのは難しかっただろう。

 でも、私が想像出来る範囲なんて限られているから、その3年間のコウガの苦しみなんてきっと分からない。


「大変、だった?」

「まぁ・・・ナ。でも、だからこそシーナには感謝シテル」


 確かに、あの日隣で眠って、次に目を覚ました時には人の姿だった。しかも全裸で。

 ―――今は、余計な事は思い出さなくていいの。


「でも、それが私のお陰かどうかは分からないんじゃない?何か呪いを解く条件があったの?」

「条件は、オレに・・・」

「うん」

「虎人族として接する者。でも多分、ソレだけじゃナイ。シーナだったカラ、だと思ウ」


 虎人族として接する?

 確かに、あの時私はコウガを知性ある者として接していたけれど、獣人の存在すら知らなかったのに?

 

「シーナの手を舐めた時、身体が軽くナッタ気がスル。多分、アレが効いた」


 ・・・確かに舐められたけど、人の姿で言われると、ちょっと恥ずかしい。それに、どうしてそれが効いたと思うんだろう?私をな、舐めた所で、何の効果も無いと思うけど。


「シーナの魔力の所為じゃないか?」


 私の疑問に、それまで黙って聞いていたフェリオが口を出す。


「私の魔力?」

「うん。あの時、コウガはシーナの涙を舐めただろ?シーナは知っての通り、魔力が有り余ってるからな。シーナの涙にも多量の魔力が含まれてるはずだ。シーナの魔力なら、多少強引にでも魔道具に干渉出来たんじゃないか?」

「でも、錬金術を使ったワケでも無いのに?」


 私の疑問に、フェリオは私の耳に顔を寄せ声を落とす。


「うん。その辺も、今考えるとマザーツリーが干渉してそうな気がするんだよなぁ」

「マザーツリーが?」

「確証は無いけどな」


 母なる大樹(マザーツリー)、妖精界にある世界樹。私に夢で語り掛けてきた存在。

 そのマザーツリーが私を介してコウガを助けたんだろうか?


「シーナ。どんな形であれ、オレはシーナに助けられたと思ってル。だかラ、ありがとう」


 だけどコウガは、私が解呪したと確信しているみたいだった。

 意図してそうした訳じゃ無いし、本当に私が解呪したのかも分からない。でも、ここで私じゃ無いと固持しても、コウガの気持ちを無下にする気がした。


「うん。コウガが、自由になれて良かった」


 本当に、コウガに出会えて、助けになれたのなら凄く嬉しい。


「まぁ、そうだな。結果が良ければ何でも良いよな!・・・それにしても、どうしてその義弟はそんなモノ持ってたんだろうな」

 

 話を強引に纏めたフェリオが、当然の疑問を口にする。

 そう。コウガの義弟なら、少なくとも14歳以下のはず。そんな子が呪いの魔道具を?

 魔道具はそうそう手に入るモノじゃない。ましてや呪いの魔道具は、どの国でも作製、販売が禁止されているらしい。


「多分、魔道具を手配したのは、アイツの母親ダロウ」

「母親?」

「あぁ。アノ女の生家なら、錬金術師のツテもある。何より、アノ女にとってオレは邪魔だかラ」

「邪魔だからって・・・」


 コウガの家庭にどんな事情があるかは分からない。けれど、一夫多妻でも無い限り、父親一人に母親と子が二人ずつ居れば、禍根が生まれるのも当然の成り行きで・・・。

 でも、だからってそこまでするなんて・・・。


「少し喋り過ぎたカ・・・まぁ、ソノ、なんだ・・・魔道具が外れた今となっては、オレにはもうどうでも良いことダ。だから、そんな顔するナ」


 そう言って、コウガは困ったように笑った。

 その顔は、私の反応にただ困っていて、寂しさや怒りといった感情は無いように見えた。

 きっと、コウガにとって本当にどうでも良い事で、彼等に"家族"という感情を抱いていないのだろう。

 それが良い事なのか、悪い事なのかは分からない。けれど本人が良いと言うなら、それ以上私が口を出す事じゃ無い。


「うん。話してくれてありがとう」

「いや、オレの方こそ、話せて良かっタ。ずっと礼を言いたいと思ってたんダ」


 本当に、ミーミルに行く前に聞けて良かった。

 だって、もしミーミルでコウガの家族に出会ってしまったら、コウガは何とも思っていなくても、向こうはそうとは限らないもの。

 うぅん。呪い魔道具を使うくらいだから、またコウガに何かするかもしれない。

 事情を知っていれば、そうなった時にも対処出来るし、予防策だって考えられる。


 それに・・・コウガはどうでも良いって言ってるし、私が口を出す事じゃ無いって分かってるけど・・・。

 どうしたって腹は立つ!

 コウガに酷いことした人達に、これ以上好き勝手になんて、絶対させない!もし会ったら、コウガは私達と一緒に毎日楽しく過ごしてるんだぞって自慢してやるんだから。

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