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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
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成長促進ポーション

 成長促進ポーションのレシピが気になりながらも、その後はディーノさんと共にバンカの移植を手伝うことになり、結局様子を見に来た皆も一緒に夕方まで農作業に勤しんだ。


「みてみて!どろんこ!!」


 最終的に泥遊びになっていたルパちゃんは、全身泥まみれになって嬉しそうだ。

 ・・・うん。子供らしくて可愛いと思う反面、その泥汚れをどうしようか、という懸念が・・・。


「おや、確かに泥だらけだね」

「パパもだよ!」

「あぁッ!僕もだ!」


 ベグィナスさんとナイルがルパちゃんの泥を払い落とそうとして、自分達も泥で汚れていることに気付いて慌てている。

 よく見れば、皆それなりに泥だらけだ。

 まぁ、農作業に慣れているディーノさんは殆ど汚れていないし、私は泉の洗礼の効果のお陰で、服についた汚れも払い落とせば綺麗になる。とはいえ手や足に着いた汚れは洗い流した方が良さそうだけど。


 するとディーノさんが少し呆れた様に畑に流れる水路の先を指差した。


「オヌシ等、水路の先に水浴び場がある。泥を落とすついでに水浴びでもしてくるといい」

「はーい!」

「では、お言葉に甘えて」


 初夏の陽気に畑仕事をした面々は、ディーノさんの言葉に嬉しそうに従い、水浴び場へと足を向けた。

 私も行こうと足を一歩踏み出し、そこでディーノさんが黄色の液体が入った瓶を取り出したのを見て足を止める。


「それが成長促進ポーションですか?」


 レシピを聞かなければ大丈夫だよね?と好奇心に負けてディーノさんに駆け寄れば、ディーノさんも特に嫌がる素振りもなく私にその瓶を手渡してくれた。


「そうじゃ。これを作物に撒くと倍の早さで野菜が育つんじゃ」


 倍の早さ!


「凄いですね!二十日大根なら十日で収穫出来るって事ですもんね」

「二十日大根?」


 しまった。つい元の世界の野菜の名前を。

 見知らぬ野菜の名前にディーノさんが食い付いてしまった。


「いや、えっと・・・例えです。例え」

「なんじゃ、例えか。それにしてもオヌシ、このポーションが気になるのか?」

「それはッ・・・気になるに決まってるじゃないですか。だって野菜が倍の早さで育つんですよ?凄いですよ!」

「そうじゃろう、そうじゃろう。都の錬金術師には全く相手にされんかったが、分かるヤツには分かるもんじゃ」


 ディーノさんも錬金術師としては色々と苦労があったのだろう。自分のレシピが褒められた事が嬉しいみたい。

 でも、どうして他の錬金術師達はこの画期的なポーションに興味がないんだろう。

 疑問が顔に出ていたのか、ディーノさんはどこか諦めたように笑って、その理由を教えてくれた。


「このポーションは売れんのじゃよ」

「えッ!?こんなに良いものがですか?作物が早く育てば食料難にもなりませんし、水だって少なくて済むじゃないですか」


 水不足に悩むこの世界で水が大量に必要な農業をするには、このポーションはとても重宝されるんじゃないの?


「農家はポーションなんぞ買わん。そんな金無いからのう。そして錬金術師は売れんもんは作らん。そういうもんじゃ」

「こんなに良いものなのに・・・」

「それにな、このポーションの素材はちと手間が掛かる上に、錬成に必要な魔力も多い。魔力の少ないワシには、作れても1日に精々この瓶3本が限度じゃ」


 手間が掛かる上に必要な魔力が多いんじゃ、確かに営利目的の錬金術師達は作りたがらないだろう。


「こんなに良いものなのに!!」


 グヌヌッと黄色の液体を凝視する私に、ディーノさんは少し照れたように髭を撫でると、私の手から瓶を取り上げてバンカの畝へと撒きながら、視線を落としたままで言う。


「そんなに気に入ったのなら後でレシピを教えてやるわい。じゃからオヌシも水浴びしてくるといい」


 ―――レシピを教えてくれる?

 ぶっきらぼうな言い方だったけれど、確かにそう聞こえた。


「いいんですか?」


 恐る恐る聞き返してみれば、ディーノさんは髭を撫でる手を早める。


「いいと言っておる。ホラ、さっさと行け」


 突き放すような、不機嫌そうな声とは裏腹に細められたディーノさんの目に、私も自然と笑みが溢れる。


「はい!ありがとうございます。行ってきます!」


 深々と頭を下げて、水浴び場へ向かう。スキップしたいくらいだけど、うっかり畑の作物を踏んでしまいそうだから我慢する。


「良かったな、シーナ。これで新鮮な野菜を作り放題だ」


 私の肩で一連のやり取りを見ていたフェリオも、満足そうに頷いている。


「本当に。そうだ!これから行く先で色んな野菜の苗や種を探してみよう。成長促進ポーションがあれば、少しくらい気候が合わなくても育てられるだろうし」

「いいな、それ。そしたらまた新しい料理を作るんだろう?」

「もちろん。それにバンカが私の知ってる野菜と同じなら、それだけでも料理の幅がずっと広がるんだから」


 あぁ、トマト!

 美味しい上に健康にも良くて彩りまで豊かになる、まさに万能野菜!

 サラダはもちろん、スープやソースに炒め物、出汁だって取れちゃうんだから。


「へぇ~。楽しみだな♪」

「うん。すっごく楽しみ♪」


 私はトマト料理に思いを馳せながら完全に油断した状態で、ウキウキと水浴び場に向かった。

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