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シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
140/264

危険な旅路

 旅に出て三日目。

 私は既に疲労困憊だった。

 身体的に、というよりは精神的に。


 あれから・・・休憩の度に代わる代わるやってくる彼等に、何度心臓に負担を掛けられた事か・・・。

 ナイルの次はコウガがやって来て、急に真っ正面から抱き締められた挙げ句に首にキスされたし、ラインさんはラインさんでぎこちない仕草でやって来たかと思えば、手を握られジッと見つめられて・・・照れたように赤くなった頬にこっちまで恥ずかしくなってしまったり。

 お陰で水に困る事は無かったし、なんならスマホに入ってた樽に貯水まで出来ている。


 いや、過剰でしょ。


 ベグィナスさんはただ穏やかに笑って見守っているし、ルパちゃんは遠巻きにキャーキャー言ってて助けてくれる気配は無い。

 やっぱり、錬水の事実は意地でも認めるんじゃ無かった。いや、私はハッキリ認めた事なんて無いはずなのに、いつの間にか公然の秘密のような扱いになっていたのは何故だ?


「シーナお疲れ~」


 休憩になってラインさんがやって来るといつの間にか消えていたフェリオが、ニヤニヤと笑いながら私の肩に戻って来る。


「フェリオ。どこ行ってたの?」

「そりゃあ、ほら。邪魔しちゃ悪いだろ?」


 何を?なんて聞かずとも、この悪いニヤけ顔を見れば察せずにはいられない。

 寧ろフェリオが彼等をけしかけているに違いない。だって楽しそうだもの。

 そう。凄く楽しそうだもの!


「ねぇフェリオ?楽しそうで何よりだけど、今日これから寄る所がどんな場所か知ってる?」

「ん?シーナが絶対寄りたいって言ってた所だろ。確か、マリアローズを創った錬金術師の所だよな?」


 今日は少し寄り道をして、フラメル氏の知り合いの錬金術師の所へ行く事になっている。

 フラメル氏と付き合いがあるくらいだから、その彼もまた錬金術師としては異質の存在と言われているんたけど、彼が異質なのにはもう一つ理由がある。


「そう。大きな農場を経営してて、錬金術で色んな野菜や花の品種改良をしてるんだって」

「へぇ~珍しいな。でもどうして今その話になったんだ?」


 首を傾げるフェリオに、今度は私がニヤリと笑って返す。


「大きな農場ってことは、カリバじゃ手に入らなかった野菜もきっとあると思うんだ」

「ん?そうだな」

「品種改良って事は、より美味しい野菜を作ってるって事でしょう?」

「まぁ確かに」

「そしたら・・・料理のレパートリーも増えると思わない?」


 ここまで言うとフェリオはハッとした顔で此方を凝視してくる。でも、もう遅いのよ!


「あぁ。でもフェリオはご飯食べなくても良いんだもんね。珍しい野菜はきっと値段も高いだろうし・・・」

「あ、いや。シーナ―――」

「フェリオの分は要らないよね?」


 もちろん、ニッコリ笑った私の眼の奥は笑っていない。


「食べる!食べたい!!いつもシーナの料理を楽しみにしてるのにッ」


 木にしがみつく猫みたいにガシッと私に貼り付いたフェリオが、ウニァ~ンと頭を擦り付けて来るけれど、今の私にはその姿だけじゃ癒しが足りないのよ。

 可愛いだけじゃ許してあげない。


「えぇ~。フェリオは今日すっごく楽しそうだったし、これ以上は必要無いでしょう?」

「オレが悪かった」

「ふぅん?」

「オレはアイツ等が水の心配して川沿いの道を行こうとしてたから、水の心配ならしなくて良いだろって言っただけなんだ。方法はアイツ等が勝手に考えただけで、オレはなにも言ってないぞ!」


 やっぱり最初にけしかけたのはフェリオじゃない。


「普通に川沿いの道を行けば良かったんじゃない?」

「川沿いの道は危ないんだぞ。獣が多いし、野盗が出やすいって言ってたし」


 そうなんだ?

 数少ない水場を求めて獣は集まってくるかもしれないけど―――。


「野盗とかいるの?」


 そんな物騒な単語は初めて聞いた。

 まぁ、元の世界にいたら一生縁の無い単語だったけど、こっちに来てからも野盗が出るなんて初めて知った。


「カリバの辺りは大丈夫だけど、この先は出るらしいぞ」

「さっきから、らしい、らしいって誰に聞いたの?」

「トルネが言ってた。アイツ、王都までの危険な場所を全部調べてたぞ」

「トルネが?」


 確かにトルネは勉強熱心だけど、そんな事までしてたなんて・・・。


「まぁ、ライン達がいればそんなに心配することも無いんだけどな。自分も何かしたかったんじゃないか」

「そっか」


 トルネって、本当に男前。

 ハッ!いかんいかん。思わずキュンッとする所だった。

 でもそのトルネに―――――アァ~~~!!ダメだ。考えたら駄目。今はちょっと保留。


「そうなんだよ!オレはトルネが心配してたから、なるべく安全に旅が出来るように考えてただけで!だから、な?」

「あ、それとこれとは別だよ?だって、明らかに楽しんでたもの」


 ブワワッと込み上げるムズ痒さが、フェリオの窺うような物言いにスンと落ち着く。


「そんなッ!嘘だろシーナ!」


 イタタッ痛いよフェリオ!!

 フギャァッと逆毛を立てたフェリオの爪が刺さって地味に痛い。

 フフッ。でもその必死な顔に癒されたから、ちょっとくらいは食べさせてあげても良いけどね。

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