表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーナの錬金レシピ  作者: 天ノ穂あかり
レシピ5
139/264

どうしよう

 どうしよう。

 え?・・・どうしよう。

 トルネが、私を・・・好き?

 しかも、キスまで。

 

 あぁッ!!どうしよう。トルネ、びしょ濡れにしてそのまま来ちゃった。

 いやでも、そこで私が謝ったらアレが私の所為だって認める事に。いや、そこはもうバレバレかもしれないからやっぱり謝らなきゃ。

 でもそこで「なんで?」なんて聞かれたらどうしよう。

 20歳以上年の離れた子に、まだ未成年の男の子にときめきましたって?

 言えるわけなーい!!


「ぇ様―――姉さま。だいじょうぶ?」


 頭の中でグルグルグルグル考えて、一人でウワァ~!!となっていた私は、ルパちゃんに膝に乗り上げられ下から覗き込まれて、漸く呼ばれていることに気付く。


「えッ!あ、うん。大丈夫、大丈夫だよ?」


 動揺を押し隠し、何でも無いよ?と笑顔で返す私に、ルパちゃんのやけに真剣な眼差しが返ってきた。


「姉さま。ナイル兄さまとも、ちゃんと仲良くしてあげてね?」

「えッ!?」

「そうだよ姫。僕だけまだなんだからね。なんなら今からでも―――」


 対面の座席に座っていたナイルが、私の頭上に手を突き覗き込んでくる。

 上からナイル、下からルパちゃんの挟み撃ちだ。

 微妙に逃げ場の無い状況に、冗談だと分かっていても慌ててしまう。


「ちょっと、危ないからッ」

「大丈夫、だいじょぅグッ」


 馬車がガタンッと揺れて、ナイルが元の座席に勢いよく戻る。

 いや、戻ったと言うよりは、引き倒された、と言うべきか。


「虎君ヒドイよ」

「馬車の中デ立ってるヤツがワルイ」


 どうやらコウガに服を掴まれ、後ろへ引き戻られたらしいナイルが抗議の声を上げるけれど、コウガは何食わぬ顔で腕を組み直す。


「・・・姉さま。ナイル兄さまのこと、キライ?」


 ナイルが離れてホッとした私の表情を見て、ルパちゃんが悲しそうに問い掛けてくる。


「ルパちゃん・・・嫌いじゃ無いよ」

「ほんとう?」

「もちろん」

「だったら、スキ?」

「え?えぇと・・・」


 うぅ。ルパちゃんの無垢な眼差しが痛い。

 ナイルの事は信頼してるし、親しい人だとは思うけど、この状況で『好き』かと聞かれたら、そういう恋愛的な意味での『好き』よね?


「そうね。頼りにしてる」


 微妙に意味を逸らした答えにルパちゃんは頬を膨らませるけれど、こればかりは許して欲しい。


「仕方無い。今はそれで我慢してあげる。でも、いつでも僕の胸に飛び込んでおいで!」


 そう言ってニヤリと笑う一瞬前の、妙に優しいナイルの表情にドキリとする。

 その後に続く言葉が無ければ、コポッと揺れた魔力が溢れてしまう所だった。


 もしかして、ナイルは本当に私の事を?



 ―――なんて、考えた事もありました。



「ひ~め♪」


 旅に出た初日は野営だった。

 火を起こして食事を作り、キャンプみたいでちょっと楽しいかも、なんて思っていた矢先。

 突然後ろから抱き締められたかと思うと、頬にチュッと既に馴染みつつある感触が襲う。


「うひゃぁッ!?」

 ――――――――――バシャン!


 あまりにも突然で、雨で誤魔化す事も出来ずに空中で水が弾ける。

 そしてその水を、桶を持ったベグィナスさんが一滴残らず回収していく。


 流れるような一連の動きに、ポカンとその光景を見詰める私を抱き締めたまま、ナイルが楽しそうな声で呟く。


「うん。役得、役得」


 要するに、水が欲しかっただけ?その為にこんな事したの?

 この男、やっぱりチャラい!!チャラいだけだ!

 なんなら、私の事を井戸か何かだと思ってるに違いない!

 ナイルの腕から抜け出しキッと睨み付けるけれど、満足そうなナイルの表情に言葉を詰まらせる。


「―――ナイル、水が欲しかったの?」

「そう。馬達にあげる水が欲しくてさ。怒らないの?」

 そこはもう誤魔化しもしないのね。それに、怒ってはいるのよ?

 でも確かに、水場の少ないこの世界で旅をするのに、私の能力が役に立つのは事実なのだ。

 ここまでバレてるのに隠しても意味が無い気がするし、護衛も御者も出来ない私が役に立てる唯一の方法でもある。

 だからって乙女(ごめんなさい、乙女じゃ無いです)の純情を弄んでいい事にはならないんだけどね!?


 ・・・ん?でもちょっと待って。

 もしかしなくても、錬水の条件バレてない?


「えっと・・・それでどうしてあんなッ、抱きついたり・・・したの?」

「うん?前に同じ様な状況で雨が降ったから?」


 確かに同じ様な状況で雨を降らせた記憶はある。要するに、その状況を再現しただけでまだ錬水の条件を把握した訳では無いって事だよね?

 今ならまだ誤魔化し様もあるよね?


「みッ水が欲しいのは分かったけど、私だってそう何度も驚いてたら疲れるんだからね!心臓に悪いんだから!」

 こう言っておけば、驚いたから錬水したと思ってくれるはず。

「ふぅん?分かった。じゃあ、次からは気を付けるよ」

「うん。気を付けてくれるならいいの」

「良かった♪」


 何とか誤魔化す事に成功した私は、満面の笑みで去っていくナイルに胸を撫で下ろし、ハッと気付く。


 あれ?今の会話だと、錬水自体は受け入れてる事にならない?

 この先旅の間、今みたいに水が欲しいって言われたら・・・どうしよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ