〉コウガ~黒虎、焦燥す~
今年もよろしくお願いします!
これまで通り、金曜更新で頑張ろうと思います。
新年早々、短話ですみません。
「クソッ!!」
全身ズブ濡れのまま子供を抱え、急いで戻った先には、無情にもその姿は消えてなくなっていた―――。
シーナが指差した先、俺はフラフラと歩く子供の下へと向かったが、あと少しの所でその子供は湖へと落ちてしまった。
子供は、湖へ落ちたことで意識が少し浮上したのか、それまでの様子から一変しジタバタと手足をバタつかせてしまっている。
子供を引き上げる為、湖に飛び込もうとした俺の視線の先、シーナがこちらに駆けてくるのが見える。
―――ッッ待てと言ったのに!!
嫌な予感に踵を返したくなる。だが―――
湖に落ちバタバタと藻掻いていた子供がいよいよ沈んで行くのを確認してしまえば、そちらを優先するしか無い。
湖に落ちた子供は、後ろからしっかりと支えてやっても恐怖からかなかなか大人しくならず、酷く怯えた表情で尚も手足をバタつかせながら、必死に声を絞り出している。
「―――いゃ、やだぁッガボッ・・・ゲホッ!!―――やだ、暗い・・・ゴボッこゎいッ・・・出して、出してッ―――――れ、ん―――術、様!!」
意識が有るのか無いのか、うわ言の様なその言葉の違和感に、急激に身体が冷えていくのが分かる。
―――錬金術師、だと?
焦りで硬直する身体を無理矢理動かし、半ば強引に子供を桟橋の上へ押し上げると、自らも素早く水から上がって、こちらへ向かっているはずの人影を探す。
どこだッ!!
ゴホゴホと咳き込んではいるが、無事息をしている子供を抱え、来た道を急いで戻ってみるも、最初に待てと言った場所まで戻っても、やはりシーナの姿は見つからない。
せめてもの希望、とフェリオの姿を探すが、屋根の上や更に高い所まで見渡してみても、やはりどこにも居なかった。
こちらに向かって来ていた事もあるが、シーナの性格なら一人で帰るなんて事はしないし、子供を放ってどこかへ行くとも思えない。
可能性として一番濃厚なのは―――連れ去られた、という事。
「クソッ!!」
―――落ち着け、まだ分からない・・・それに、手掛かりはある。
水滴と共に、頭と身体を鈍らせる焦りを吹き飛ばそうと、少し強めの風を纏う。
こんな所で立ち止まっている暇は無い。
まずはラインの所だな。この子供を預けなければ。
それに、シーナが騎士団に助けを求めに行った可能性も少なからずある。
もし、シーナに何かあれば―――俺は・・・
ギリッと奥歯を噛み締め、真っ直ぐ前を見据える。
いや―――そんな事には、絶対させない。必ず、見つけ出してやる。




