第99話 信じがたい現実 1
目の前で起きた出来事を見た私は何が起こったのか理解ができなかった。
いや、理解したくなかったのかもしれない。
「そ、空?」
目の前には腕や足が絶対に曲がらない方向に折れ曲がっていて、いろんなところから血が出ていてピクリとも動かない空がいた。
嘘だ。
「ねぇ、空? どうして、どうして? 返事してよ」
私がどれだけ彼に問い掛けても空は答えてくれない。
動いてもくれない。
「きゅ、救急車呼ばないと」
ここから先は私も何があったのか詳しく覚えてない。
目の前の光景が信じられなくて。
ただひたすらに救急車を呼んで空の名前を呼び続けて救急車に運ばれて。
◇
「永遠姉さん、大丈夫ですか?」
「……美空ちゃん、ごめんなさい私のせいで。私のせいで空が」
「永遠姉さんのせいじゃないです。悪いのはトラックの運転手です。自分を責めるのはやめてください。お兄はそんなこと絶対に望んでません」
「…………」
救急車に運ばれた空は今集中治療室で治療を受けていた。
救急車に乗っていた時点で心肺が停止した状態だったらしいけど今はもうどうなっているかわからない。
「とりあえず永遠姉さんは少し休んでください。その様子だと全く休んでいないみたいですし何かあったらすぐに起こしますから」
「いや、そういうわけにはいかないわ。空が起きるまで私は寝ない。空の顔が見たい」
「わかりました。とりあえずこれ病院の人から借りてきた毛布です」
そういって美空ちゃんは私に毛布を掛けてくれる。
救急車に乗ったときに急いで連絡をして病院に来てもらった。
来たときはかなり焦っていた美空ちゃんだが私を見てからすぐに落ち着いたようだ。
自分より焦っている人間を見たから帰って冷静になったのだろうか?
「……ありがとう」
どうしてもさっきの光景が頭から離れない。
いつも優しく微笑みかけてくれる空の顔は血に濡れていてい腕や足は変な方向に曲がっていて私がどれだけ声をかけてもピクリとも動かない空の姿が。
どうしても脳裏から離れない。
美空ちゃんに自分を責めるなって言われたけどそんなの私には無理だ。
私があの場にいなければ空はなんとかトラックを避けれたはずだ。
◇
あれからどれだけ時間が立ったのかわからない。
ここには時計が無いしかといってスマホを取り出す気にもなれなかった。
まだ手術中と点灯したままだからきっと手術はまだ続いているんだと思う。
「……空」
「永遠先輩、美空さん」
「七海ちゃん、来てくれたんだ」
「当たり前っすよ。それよりも空先輩は?」
「まだ手術中。救急車の中で一回心臓が止まったらしいんですけどもう一回動き出して今は手術中だよ。それからはずっとここにいるんでわかんないかな」
七海さんが来てくれた。
七海さんもかなり急いできてくれたらしくて額には汗が浮かんでいた。
「そうっすか。空先輩……」
まだ、この現状が現実だと理解できない。
いつも隣にいた空が今はいなくて。
もしかしたら助からないかもしれなくて……
そんな現実が私にはどうしても受け止められない。
空がいなくなってしまうのが怖くて仕方がない。
なんで、私と関わる人はいなくなっちゃうの……
「永遠姉さん、大丈夫……なわけないですよね。ごめんなさい。私が遊園地になんか誘ったせいで。危機感無かったですよね」
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