第91話 耳かきって素晴らしい
頭を永遠の膝に乗せた瞬間俺は感動した。
初めて味わう女の子の柔肌に。
「俺、今まで生きてきてよかったかもしれない……」
「ちょっと大げさすぎない???」
「大げさじゃないよ。本当になんか生きててよかったと思う」
生まれてこの方17年。
こうして好きな女の子に膝枕をしてもらえる日が来るなんて思ってもみなかった。
うん、本当に最高!
「そんなにかしら。まあいいわ。それよりも耳かきするから頭をどっちかに向けてくれない?」
「わ、わかった」
どっちかに頭を向けるってことは頬に直接永遠の太ももが当たるわけで……
どっちを向くか非常に迷う。
でも、永遠のほうを向いてしまったらなんか理性がさよならしてしまう気がするので永遠のお腹と逆方向に頭を向けた。
そうしたら左頬に永遠の太ももの感触が直に伝わってきた。
これは……持つかな俺の理性。
なんだか少し不安になった。
でも、こんなちっぽけな不安よりも嬉しさが勝っているのだから俺も男である。
「なんだか子供みたいで可愛いわね」
「実際俺はまだ子供だからね」
「子供にしては思考がひねくれすぎよ。わかってると思うけど今回は一人で先走ったらだめだからね? もしそんなことしたら本気で怒るから」
「わかってるよ。俺ももう一人だけで動くつもりは無いし自分を犠牲にする気もないから安心してくれ」
前のように自分の身を危険にさらす気はない。
勿論永遠や美空が危険な目に遭っていたなら話は別だけど自分から進んで犠牲になろうとは絶対にしない。
それが二人との約束だから。
「ならよかったわ。耳かき始めるから痛かったら言って頂戴」
「うん。お願いします」
そういえば誰かに耳かきをしてもらうなんて初めてかもしれない。
小さいころからそういう事をしてくれる人がいなかったから。
「気持ちいい」
「そう? 私は誰かの耳かきをするなんて初めてだから少し不安だったんだけどそういってもらえてうれしいわ」
「そうなの? めっちゃ上手だと思う。めちゃくちゃ気持ちい」
気持ちいいというか心地いいというか。
なんだかすごく安心する。
これは世の男たちが夢見るのも納得だ。
「ふふっ空って私には自分の感情を素直に伝えてくれるわよね」
「そうかな? まあ確かに他人には本心を大体隠してるけど大体みんなそんなもんじゃないの?」
「それはそうなんだけどあなたの場合はそれが顕著なのよ。だからこうやって素直に感想を言ってもらえてなんだかうれしいのよ」
「俺は永遠と美空には嘘をつかないって決めてるし本心をありのままに打ち明けるとも決めてるから。二人に嘘ついても意味ないし」
「それもそうね。私もあなた達に嘘をつくことは無いから安心して頂戴」
「そりゃあ安心だ」
会話をしながらも永遠は耳かきを続けてくれている。
それがあまりにも気持ちよくてすぐにでも眠ってしまいそうだった。
最初は理性がどうこう思ってたけどそんなの心配しなくてよかったみたい。
そもそも俺に手を出す勇気とか全くなかったわ。
無駄な心配でした。
「っと、こっちの耳はこれくらいでいいかしら。じゃあ反対をむいて頂戴」
「わかっ……た」
「空? どうかしたの?」
反対をむくってことは永遠のお腹を見るってことで。
いや、衣服越しだけど緊張してしまう。
俺みたいな日陰者には刺激が強すぎるのでは???
「いや何でもないよ」
でもここで動かなかったらそれはそれであれなのでおとなしく反対に頭を向ける。
頬に感じる感触は変わらないんだけど永遠のお腹が目の前にあるってだけでなんだか緊張がとまらない。
バクバクと鼓動が高鳴っていく。
「じゃあこっちも始めるわね」
「お願いします」
それから約数分緊張でおかしくなりそうになりながらも耳かきをしてもらった。
緊張はしたけどめっちゃ気持ちよかった。
今度は普通に頼んだらやってくれないかな。
と思うくらいには気持ちが良かった。
テストを頑張った甲斐があったというものだ。
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