第89話 藤田悟の目撃情報
「たっだいま~お兄! 赤点全部回避できたよ! これも二人のおかげだよ! ありがとう~」
「わかった。わかったから抱き着いてくるな。でもよく頑張ったな」
「お疲れ様美空ちゃん。よく頑張ったわね」
「ありがとうございます永遠姉さん!」
これで一番不安だった美空のテスト結果もわかったから後は春休みまで頑張って学校に行くだけだ。
でも、これから本格的な受験が始まるため日常的に勉強を進めて行かなければいけない。
「今日はお祝いね。何か手の込んだものを作ろうかしら?」
「いいですね。私も手伝いますよ!」
2人は張り切ってキッチンに向かってしまった。
料理ができないとこういう会話についていけなかったりするから今度本格的に永遠に料理を教えてもらおうかな。
「っと、電話か?」
スマホが震えているから電話なのだろう。
相手は多分七海さんかな?
いっつも俺が暇なときに七海さんから電話がかかってくる気がする。
「もしもし? どうしたの?」
「あ、先輩今大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。何かあった?」
「それが、藤田先輩の目撃情報がありました」
「……それは本当か?」
悟の目撃情報?
やっと見つかったのか。
「ええ。今日の午前10時くらいに駅前で目撃されたみたいっす。あ、学校の最寄り駅っす」
「何をしてたのかわかるか?」
「いえ、そこまでは。私が聞いたのは学校の最寄り駅で目撃されたってだけですから。何をしていたかまではわかってないんですよ」
今更あいつはわざわざ何をしてたんだろうか?
俺に危害を加えるつもりなのかもう関わってこないのか。
まあ、気にするに越したことは無いだろうな。
「そっか。教えてくれてありがとう。永遠にも伝えておくよ」
「そうしてください。また何かわかったら伝えますね」
「ありがとう。それじゃあ、またね」
「はい。また」
電話を切ってから静かに考える。
そういえば悟はいつから俺のことを嫌っていたのか。
わざわざあんなことをするくらいには俺のことを嫌っていたのだろう。
今までそんな素振りは無かった気がするんだけど。
「今更考えても仕方ないか」
あいつは俺のこと陥れた。
そんな奴のことを今更気にしても何の意味も利益もない。
一瞬浮かんだ考えを捨ててそう割り切ることにする。
過去ばかり振り返っても何も手には入らないから。
「勉強でもしてるかな」
2人が料理を作っている間に何もしてないのはなんだか居心地が悪かったから机の上に教科書を広げて勉強を始める。
キッチンからは二人の仲よさそうな会話が聞こえてきてなんだかこっちまで楽しくなってくる。
いつまでもこんな感じに三人で過ごせたら幸せだなと思う。
◇
「ってなわけで一応二人も気を付けてくれ」
食後に永遠が入れてくれたお茶を飲みながら俺はさっき七海さんに聞いた話をした。
何も無いと信じたいけど何かあってからでは遅いので警戒しておくに越したことは無いだろう。
このお茶おいしいな。
「わかったわ。なんだかあなたといるとトラブルが絶えないわね」
「お兄はもしかしてトラブルメーカーだったのでは!?」
「そうかもしれない。二人には毎度迷惑かけてすまない」
「別にいいわよ。私はあなたが持ち込んでくる迷惑なんかどうでもいいくらいにあなたと一緒にいることのほうが大切なんだから」
「そうだよお兄。私もお兄のこと大切だから迷惑とか考えなくていいって」
俺には出来過ぎた恋人と妹だな。
「ありがとう二人とも。まあ、何も起きないと信じたいけどなるべく人通りが多い道を通って帰ってくれ」
「わかったよお兄」
「私は空と一緒にいるから大丈夫ね」
「俺を過信しすぎでは?」
「いいえ。そんなことないわ」
信頼を寄せてもらってるんだkらその信頼にこたえて何があっても永遠を守らないと。まあ、目撃情報があったってだけで警戒しすぎといわれたらそれまでなんだろうけど。
「じゃあ、そういう事だから二人とも警戒はしておいてくれな」
「了解!」
「わかったわ」
今回の件で個人的に動き回りたいけどさすがに前のことがあるからそれもできない。
今回はおとなしく後手に回るしかなさそうだ。
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