第83話 恋人との添い寝
「ああ~さすがに緊張するな」
湯船につかりながら一人そうこぼす。
前も一回だけ一緒に寝たことはあったけど今は関係性が違う。
前は信頼できる友人のような関係性だったけど今は恋人だ。
そして、恋人同士が同じベッドの上で寝る……
ダメだ。深く考えるのはやめよう。
このままじゃあのぼせるし風呂で悶々としててもいたずらに時間を浪費するだけだ。
「上がるか」
完全にほてり切った体と頭を冷やすために頭から冷水を浴びてから浴槽を出る。
寒っ。
そういえば今が真冬なことを忘れてた。
全く完全に浮かれてるな俺。
「でも、浮かれるなっていうのは無理だよなぁ~」
俺と同じ状況になったやつがもしいたとしたら絶対に浮かれると思う。
いや、浮かれなかったら完全に異常者だろ。
「だから俺はおかしくない。むしろ男子高校生として正常だな! うん」
自分にそう言い聞かせてから俺は服を着て身なりを整える。
ワックスとかをつけるわけでもおしゃれな服を着るわけでもないけどなんかこう心構えみたいなものだ。
「あんまり待たせても悪いしそろそろ行きますか!」
深呼吸をして俺は部屋を出る。
永遠の部屋までは全く距離はないけど今日はなんだかこの廊下がすごく長く感じる。
さっきから心臓がバクバクしすぎて倒れそうだ。
こんなに緊張してるのなんていつ以来だろうか?
「おし。行くか」
永遠の部屋の扉を鍵をつかってあけて中に入る。
そのまま永遠の私室の前に立ってノックする。
「永遠入っていい?」
「ええもちろんよ」
返答を聞いてから俺は永遠の私室に入る。
そこには寝間着姿で髪を下ろした永遠がいてさらに心臓の鼓動が速くなる。
いつもは髪を結んでいる永遠しか見ないけどこうして髪を下ろしてる永遠もすっごく可愛い。
今度髪型のリクエストとかしたらやってくれるかな?
「おまたせ」
「そんなに待ってないわよ。空は結構お風呂は短く済ませるタイプなのね」
「まあね。そんなに風呂でやることもないし。それより永遠その服すっごく似合ってる」
「ありがと。これ私のお気に入りなの」
そういって永遠はその場で一回転する。
シンプルな寝間着だけど青色を基調としていてもこもこのパーカーだった。
はっきり言って物凄く可愛い。
「空も似合ってるわよ? あんまりそういう格好を見ないから新鮮でいいわね」
「ありがと。そういってもらえてうれしいよ」
褒められるのはシンプルに嬉しい。
寝間着なんてあんまり種類を持ってないけどなるべくいい感じの見た目のものを着てきてよかった。
「じゃあ、寝ましょうか。今日は空も疲れたでしょう?」
「うん。いろいろありすぎて疲れたけど永遠や美空と話し合えて本当に良かったよ」
「そうね。これで空の性格が治ればさらにいいわね」
「善処するよ」
少なくとももう何も話さずに一人で行動をすることはやめようと思う。
永遠か美空にしっかり相談してから何か行動を起こそうと思う。
「まあ、それでいいわよ。じゃあ電気消すけどいいかしら?」
「ああ。構わないよ」
永遠はすぐに部屋の電気を消す。
部屋を照らしているのはエアコンの明かりだけだ。
「なんだかドキドキするわね」
「そりゃね。前もこうして一緒に寝たときはドキドキしたけどあの時は恋人同士じゃなかったから今よりは緊張してなかったかもな」
「それもそうね。なんだかすごく鼓動が速いわ」
永遠がベッドに入りながらそういう。
正直顔はよく見えないけどその方がありがたかった。
多分今の俺の顔は真っ赤だから。
「なんだか不思議よね。私達まだ出会って二か月くらいしか経ってないのにこうして同じベッドで寝てるなんて」
「だね。でも俺は嬉しいよ。一緒のベッドで寝てることもそうだし永遠と付き合えたことだってさ」
「それは私もよ」
2人であおむけになりながらそう言いあう。
少し前まで絶望の中にいたのに今では幸せの絶頂にいる。
やっぱりこう考えると瑠奈と悟には多少は感謝したほうがいいのかもしれない。
こうして永遠と巡り合うことができたから。
「……空」
「どうしたの?」
「抱き着いていい?」
弱弱しい声で永遠がそういう。
やっぱりそんなお願いを断れるわけもなくて俺は永遠を抱きしめる。
女の子特有の甘い匂いが鼻孔をくすぐってさらに心臓の鼓動が速くなる。
……そろそろなくなるんじゃないかな?
「空の心臓すごい高鳴ってる」
「だって、永遠が可愛いから」
俺の胸に顔をうずめる永遠を見ながらそういう。
顔はよく見えないけど可愛い。
とにかくかわいい。
「うれしい。空もかっこいいよ」
なんだか他の人間が聞いたらドン引きしそうなくらい甘々な会話を繰り広げている気がするがそんなことはどうでもいいのだ。
永遠の心音も聞こえてくる。
全身で永遠のぬくもりを感じられる。
こんなに幸せな日があっただろうか?
断言するない。
今日が人生で一番幸せな日だ。
「お休み永遠」
「おやすみなさい。空」
最初は緊張しすぎてどうにかなりそうだったけど今はなんだか安心感のようなものに包まれてて落ち着く。
次第に眠気がやってきて俺は簡単に意識を手放した。
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