第77話 まだ二か月なんだよね
「それで昨日はあの後どうなりました?」
「美空に説教されたよ。でも、なんか七海さんが美空にあのことを言ってくれたおかげで美空や永遠としっかり向き合えたんだと思う。だからありがとう」
「別にいいっすよ。それに忘れないで欲しいんすけど私だって先輩のことをある程度大切に思ってるんすからこれからはあんな行動したらダメっすよ」
「わかった。ありがとう」
屋上で俺は七海さんと昨日のことについて話していた。
昨日美空と真剣に向き合えたのは七海さんが美空にあのことを話してくれたからだと思ってお礼がしたかったんだ。
「いいっすって。それより、堀井先輩の件なんすけど黙秘を続けてるらしく三日間どこにいたのか。凶器類をどこから入手したのかまだわかってないらしいです」
「そっか。これからあいつはどうなるんだ?」
「多分ですけどもう一度精神病院に戻されると思います。それもここ付近の病院じゃなくてもっと離れたところに」
つまり次は脱走しても永遠や俺が襲われる危険性が極端に下がるというわけか。
対応としては良い気がする。
まあ、そもそも脱走なんてさせるなという話ではあるのだが。
「教えてくれてありがとう」
「いえ、ここら辺はしっかり共有したほうがいいと思いますし。それにこうやって先輩に報連相の大切さを説いていこうかなと思いまして」
「なるほど、そりゃ確かに大切だな」
全部の事情を知っている七海さんはいたずらっぽくそういってくる。
俺も七海さんを見習ってしっかり報連相をしていこうと思う。
「はい。じゃ私はそろそろ教室に戻りますね。それでは」
「あ~そのことなんだけど今日は俺たちと一緒に食べないか?」
「へ? 俺たちってことは天音先輩もですか?」
「ああ。この前七海さんが一人でお昼ご飯を食べてるって話をしたら永遠がなら三人で食べましょうって言っててな。今日は誘ってくるように言われてるんだ。どうかな?」
「全く、私が一人で食べてるとかそんな話しないでくださいよ……悲しくなるじゃないっすか」
「……ごめん」
話の流れで七海さんの話になったから言っちゃったけど言わないほうが良かったかな?
「いいんすか? 先輩と天音先輩がイチャイチャできる時間ですよ?」
「家でもイチャイチャはできるしご飯はみんなで食べる方がおいしいだろう? だから七海さんが迷惑じゃなかったら一緒に食べないか?」
「じゃあ、お言葉に甘えるっす」
七海さんは少し目をそらしながら了承してくれる。
「じゃ行こうか。七海さんってお弁当?」
「はい。自分で作ってるやつっすけど」
「自分で作れるなんてすごいじゃんか」
「普通ですよ。先輩は作れないんすか?」
「俺は料理ができないからなぁ~料理ができる七海さんや永遠、美空を俺は心の底から尊敬してるよ」
昔からたまに練習してはいるんだけど全くうまくできない。
分量とかを変えてるわけでもないしレシピの手順通りに作ってるはずなんだけどな。
「ま、早く行きましょ。天音先輩が待ってるんでしょ?」
「っとそうだな。じゃあ行こうか」
七海さんを連れて永遠のいる教室に向かう。
道中に物凄い目で(ゴミを見るかのような)見られたけど気にしないでおこう。
また、変な悪評とか広まるのかなぁ。
はぁ。
「いらっしゃい七海さん」
「お邪魔します。よかったんですか? せっかく柳先輩と一緒に過ごせる時間なのに」
「いいのよ。そう言うのは家でもできるし私は七海さんとも仲良くなりたいのよ」
「そ、そうっすか。なんかありがたいっすね」
「そんなに畏まらなくていいのよ? 私たちはあなたにたくさん助けられているのだからね」
永遠はそういって七海さんに微笑みかけた。
確かに俺たちは幾度も七海さんに救われてきた。
普段情報を提供されている件もしかり永遠が襲われそうになった時に情報を提供してくれた件もしかり。
俺たちは本当に数えきれないくらい七海さんに助けられてる。
今回だって七海さんのおかげで永遠や美空と真剣に向き合うことができたのだから。
今度何かを頼まれたら絶対に引き受けよう。
そう思いながら昼食をとる。
基本的には七海さんと永遠が会話をして俺が相槌を打つと言ったような感じだけどそうしているうちに七海さんも打ち解けてきたのか永遠と俺のことを名前呼びするまでには仲良くなれたと思う。
「なんか変な感じだな」
「何がっすか?」
「いや、すこし前までは絶望のどん底にいたのに今ではこうやって仲のいい大切な人ができてて。もしあの時絶望のどん底にいなかったら永遠と出会うことも七海さんと出会うこともなかったのかと思うと最終的にあの時浮気されてよかったのかもしれないって思ってた」
「まあ、確かにそうかもっすね。あの事件が無かったら少なくも私は空先輩とは関わってなかったかもしんないですし」
「そうね。私もあの時公園で見かけなかったらこうして空と恋人になれなかったのだと思うとよかったのかもしれないわね」
三人で昔の出来事を思い出す。
こうして考えてみるとまだ二か月ほどしか付き合いが無いのだ。
本当にこの子たちと出会えてよかった。
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