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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第72話 瑠奈の目撃情報

 美空が永遠に俺の話をしてから二日がたった。

 瑠奈が精神病院から脱走してから三日目である。


「まだ捕まらないんですかね?」


「まあ、連絡がこないってことはまだ捕まってないってことなんだろうな~」


 全く厄介な話だ。

 瑠奈が早く捕まってくれないと俺は永遠とデートに行けないじゃないか。


「でも、そろそろ捕まってもいいころ合いだと思うのだけどね」


 三日間なんの報告も上がってこない。

 普通の人間が居住地なしに生活できるなんてたかが知れてる。

 もし今日見つからないようなら何かしらの協力者がいるとみて間違いないということになる。

 その相手が誰なのかはわからないけど。


「まあ、気にしてても仕方ないし俺たちは俺たちでいつも通りで過ごすしかないんじゃないか?」


「そうね。私たちは何もすることができないのだし」


「それもそうですね~じゃあ、私は学校に行ってきます」


「はいよ。一応下までだけど気を付けて行けよ?」


 下にはすでに送迎用の車が止まっている。

 美空と俺たちの高校ではまったくもって真反対なので車は二台用意されている。


「そうよ? 何があるかわからないから気を付けるのよ?」


「はい! 行ってきます」


 美空を見送って数分してから俺たちも家を出る。


「それじゃあ、お願いしますね」


「かしこまりました。永遠様」


 運転手の人がそう答えると車はゆっくりと動き出す。

 そのまま少しの時間が経過したのちに学校の校門付近で車が止まる。


「「ありがとうございます」」


「はい。お気をつけて学校に御向かいください」


 運転手の人にそう声を掛けられながら俺と永遠は車を降りる。

 もう三日目だから好奇の目にさらされるのは慣れているけどできれば俺は登校中も永遠とイチャイチャしたいから瑠奈には早く捕まってほしいものだ。


「この視線にも慣れたものね」


「だね。というか、俺たちが付き合い始めてからもその前もかなりこんな視線は向けられてたけどね」


 永遠と付き合う前、一緒に行動を始めたころからこんな視線はずっと向けられていた。

 今の視線に悪意は含まれてないけど前の視線には悪意とか殺意とかそういう悪感情が多分に含まれていた。


「そうもそうね」


 学校に着くなり普段と変わらない会話を繰り広げていた。


「柳先輩!」


「ん? どうしたんだそんなに慌てて」


 七海さんが走ってこっちにやってきていた。

 ここまで焦って走っているのは珍しい。

 なにか事件でもあったのだろうか?

 今回に関しては瑠奈のことを依頼していないし。


「堀井先輩が脱走したって本当ですか?」


「ああ、一応本当だな。どこから聞いたんだ?」


「後藤さんに教えてもらいました。それよりどうして私に教えてくれなかったんですか!?」


「いや、だって今回に関しては三日も待ってれば勝手に捕まるだろうしそこまで調べてもらう必要はないと思ったから」


 現に瑠奈は多分そろそろ捕まると思う。

 家には帰れないしかといって頼れるような友人もいなかったはずだ。

 唯一頼れそうな悟は現在行方不明。

 こうなってしまっては所持金もない女子高生が三日以上逃げつづけることなんて不可能だと思って七海さんには話さなかった。


「それはそうっすけど、なんか水臭いじゃないっすか! 先輩と私の仲なんですから」


「誤解を招くようなことを言うのはやめてくれ。ほら、俺の足を見てみろ。盛大に永遠に踏まれてるだろ?」


 そういって視線を向けるとしっかりと永遠に踏んずけられた俺の足があった。

 それなりに力が込められていてなかなかに痛い。


「っと、すいません。そういえば天音先輩は意外と嫉妬深い方でしたね。心配しなくても私は柳先輩を男としては見てないので安心してください」


「……そう。ならいいのだけどね」


 やっと足をどけてくれた。

 ありがたい。

 でも全く男として見られていないっていうのはなんだか微妙に傷つくんだけど。


「で、そんなに慌てていったい何の用なんだ?」


「いや、大したことではないんですけど堀井先輩らしき人の目撃情報がありまして」


「え!? いったいどこで?」


「それが学校なんすよね。朝の早い時間帯にそれらしい人物がいたって少し騒ぎになってて」


 そりゃあ騒ぎにもなるか。

 一体その目撃情報が本当なのかわからないけど学校の中でも警戒しないといけないのか。

 全く本当に疲れるな。


「まあ、それが本当だとしてもすぐに捕まるだろう。一応警戒はしておくな。ありがとう七海さん」


「いえいえ。天音先輩も気を付けてくださいね」


「ありがとう」


「じゃ、私はまだやることがあるんで」


 そういって七海さんは小走りで校舎のほうに向かって走って行ってしまった。


「あの子可愛いわよね」


「だね」


「……」


「いや、なんでそんな目で見るのさ?」


 永遠からものすごく冷たい視線を向けられている。

 なんでだ???


「彼女がいる前でほかの女の子をかわいいっていうなんてどうなのかしら???」


「いや、でもれっきとした事実だし。七海さんのことをかわいいとは思うけど俺にとっての一番は永遠だよ。ほかの誰でもない」


 永遠の手を握って目を見つめながら言う。

 永遠が安心できるように。


「……もう、空のそういうところってずるいわよね」


「ずるくなんかないだろ。俺は本当に永遠のことが好きだし永遠以外の女性なんて正直興味がないんだけど」


「それでも不安になるものはなるのよ」


「じゃあ、不安になったらいつでも言ってくれ。そのたびに俺は永遠を抱きしめでもするから」


「じゃあ抱きしめて?」


「ここ、思いっきり学校の昇降口なんですけど??? 人目とかいっぱいあるんですけど???」


 朝の時間ということもあって今のこの場所は生徒で溢れかえっていた。

 そのど真ん中で抱きしめるのはいかがなものなのか。


「でも、いつでもって言ったじゃない? もしかして空は私に嘘をつくの?」


「ぐっ……」


 そういわれてしまっては抱きしめる以外の選択肢がなくなってしまう。

 まあ、どうせもう悪目立ちしてるし今更か。

 俺はそう自分に言い訳をして永遠を抱きしめる。

 とくんとくんと自分のものではない心音が胸のあたりから伝わってきて心地いい。


「もういいわよ。安心した」


「そうか? わかった」


 少し名残惜しい気分になりながら俺は永遠から離れる。

 永遠の顔を見てみればその頬は少し紅潮していてかわいらしかった。


「じゃあ、またお昼休みにね」


「わかった。多分大丈夫だとは思うけど今日は学校でもあんまり一人にならないようにしてね」


「わかってるわよ。そういう空も気を付けてね? 真っ先に狙われるのはあなただろうから」


「もちろんわかってるよ。それじゃあまたあとでね」


 そうして俺たちはそれぞれの教室に向かうのだった。


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