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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第69話 瑠奈の脱走

「おはよ〜お兄。永遠姉さん」


「おはよう美空」


「おはよう美空ちゃん」


 翌日いつものように永遠の部屋のリビングで朝食をとる俺たちだが、なんだか美空の視線が生暖かく感じる。

 心なしか口角も上がっているし。


「なんだよ美空。そんなにニヤニヤして」


「いや〜これは永遠姉さんが永遠義姉さんになる日も近いのかな〜と思ってね」


 更にニヤニヤしながら美空は俺たちを見つめる。

 心当たりはある。

 普段は4人がけのテーブルに永遠と美空が隣同士で座っていたのだが、今はそうではない。

 具体的に言うと永遠は俺の隣に座っているのだ。


「上手く行ったみたいだね? お兄」


「まあ、お陰様でな。改めて言わせてもらうと俺たち付き合うことになりました」


「うん。まあ、2人の距離感見てればなんとなくわかったけど。おめでとう! よかったね永遠姉さん!」


「ありがとう美空ちゃん!」


 この反応を見るにどうやら永遠は結構前から俺に好意を持ってくれていたのかもしれない。

 ということは、だ。

 俺が永遠から距離を置こうとしたのは完全に余計なことだったのでは???

 ……うん、考えるのはやめよう。

 そしてこれからはしっかり永遠と話し合うことにしよう。


「なんでお兄はそんなに渋い顔をしてるの?」


「いや、ちょっとな。それよりもその口ぶりからすると美空はなんだかいろいろ知ってたみたいだな」


「そりゃね~見てたら大体わかるし。逆に永遠姉さんの好意に気づいてなかったお兄のほうがちょっと異常だと思うよ? 鈍感通り越してもはや異常者の域だね!」


「そこまでか……」


 確かに俺は自分のことを卑下しすぎて周りのことをよく見えてなかった節はあるのだろうけどさ。

 でも、否定できないところが悲しいところだな。


「美空ちゃんの言うとおりね。私は結構空に対して好意を示したと思ってたのに全く何もしてこないどころかいきなり避けられるんだもん。すっごく怖かったんだから」


「ごめんなさい」


「お兄次からはあんなことしたらダメだよ? 次したら私も本気で怒るからね」


「絶対しないよ。永遠から好意を伝えられたわけだしもう自分を卑下するのはやめる。ふさわしいかどうかなんて関係ない。俺は永遠が好きだ。他の誰にもくれてやるつもりはない」


 付き合ってないときに独占欲を抱くのはどうかと思ってたけど付き合った今なら多少の独占欲くらいは許されるであろう。


「空ってこういう時に大胆に物をいうわよね。でもそういう所私は大好きよ!」


「あの~朝っぱらからいちゃつくのやめてもらってもいいですかね? 胸焼けしそうだから」


 美空が呆れたようにため息をつきながら首を振っていた。

 少しは自嘲したほうがいいかもしれない。


 ◇


「それじゃあ学校に行きましょうか」


「うん」


 俺と永遠は家を出てから自然と手をつなぐ。

 勿論普通に手を繋ぐのではなく指を絡めあういわゆる恋人つなぎというものだ。

 永遠と手を繋ぐのは初めてではないものの恋人つなぎをするのは初めてなためとても緊張する。

 手汗が出てないか不安になるし。


「なんだかドキドキするね」


「永遠もか。俺も物凄くドキドキしてる」


「でも、このドキドキは心地いいな。幸せって感じ」


「わかる。俺も心地いいと思う」


 緊張はしてるけど嫌な緊張じゃない。

 むしろ、心地よくて本当に幸せな感じ。

 今俺は人生で一番の幸せを嚙みしめてる!


「今日は授業が終わったらどこかデートに行きましょう。どこがいいかしら?」


「それいいな~街を適当にぶらぶらするって言うのも悪くないしね」


「そうね。すっごく楽しそう!」


 付き合う前では考えられないような会話を交わしながら学校へと向かう。

 こんなに幸せな気分で学校に行くのは17年間生きてきて初めてだ。

 ある意味瑠奈に裏切られてよかったのかもしれない。


「そうそう、空は最近女の子に人気だって聞くけど絶対に浮気したらだめだからね? わかった?」


「わかってるって。そんなに心配しなくても永遠以外眼中にないから」


「ならいいけど。今日はすぐにお昼来てよ? 今まで避けられてたからお昼すっごく寂しかったんだからね?」


 永遠は俺に顔を近づけながらそういってくる。

 途端に永遠の整った顔が近づいてきてさらに鼓動が高鳴る。

 ……可愛すぎだろ。これは反則だ。

 そんな永遠の姿にノックアウトされてしまう俺だった。


 ◇


「先輩、天音先輩と正式に付き合えたんすね」


「ああ。おかげさまでな。なんか七海さんにもいろいろと手を貸してもらったみたいでありがとう」


「いえ、私はただ美空さんにお願いされたことをしただけなんで。それより先輩? 天音先輩を泣かしたら容赦しないっすからね?」


「もちろん。俺は永遠を手放すつもりはないし泣かしたりする気も全くない」


 昼休みが始まってすぐに七海さんと会話を交わしていた。

 多分七海さんにも多大な迷惑をかけたであろうことは容易に想像ができる。


「まあ、それならいいっす。どうぞお幸せに~」


「ありがとう。それじゃあ俺は行くから」


 あまり待たせてしまうと永遠が拗ねてしまう。


「ええ。じゃまた今度っす」


 そう言葉を交わして俺は七海さんと別れる。

 そしてすぐに永遠のいる教室に向かうのだった。


 ◇


「はい。あ~ん」


「あ~ん」


 永遠から差し出されたおかずを口に入れる。

 いつも食べている永遠の手作り弁当だがこうしてあ~んをされるといつもよりも数倍おいしく感じてしまう。

 ああ、なんて幸せなんだろう。


「おいしい?」


「もちろん! いつも永遠が作ってくれるお弁当はおいしいけどこうして食べさせてもらうともっとおいしく感じるよ」


「よかった~えへへ。頑張って作った甲斐があったわ」


 頬を緩ませながら笑う永遠を見て改めて可愛いと思う。

 そんな様子を見ていたのか教室に居る男子生徒たちが血涙を流しているのを感じるがそれがむしろ心地いい。


「そういえば空に言っておかないといけないことがあったんだけど」


「どうしたの?」


 改まって俺に言っておかないといけないこと?

 なにかあっただろうか。

 俺に心当たりがないってことは俺が知らないことなのか?


「堀井さんが精神病院から脱走したらしいわ。捜索は続いているらしいけどまだ見つかってないらしいわ」


「……マジかよ」


 瑠奈が脱走?

 精神病院側は何をしてるんだ。

 それよりも、今は警戒を強めないとな。

 あの時の瑠奈は正常には見えなかった。

 油断していると今度こそ取り返しのつかないことになりそうだ。


「ええ。私もさっき後藤さんから連絡が来たのよ」


「そっか、じゃあ今日のデートは残念だけど中止にしようか。さすがにちょっと危ないからね」


「そうだね。残念だけど家でもイチャイチャすることはできるし今日は家でゆっくりしようか」


「そうしようか。また今度の機会にデートに行こう!」


「もちろんよ。何なら今日はその計画を立ててもいいわね」


 そんなこんなで不穏な事件が起きたらしいが瑠奈は俺達の新居を知らないからよっぽどのことが無い限り大丈夫だと思う。

 それに、警察の人たちも捜索しているから数日以内には発見されるはずだ。

 それまでは残念だけど家でゆっくり過ごすことにしよう。

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