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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第66話 美空のお説教

 あれから一週間何かと理由をつけてお昼の時間は一人? で過ごしていた。

 結局一人になることは少ないんだけど。


「で、今日もここにいるんすね」


「七海さんこそ毎回毎回屋上でお昼ご飯食べてるの?」


「そうっすよ。私は恋愛関係で変ないざこざに巻き込まれたくないのでね」


「……嫌味かよ」


 七海さんは少し嫌な笑みを浮かべながら皮肉を言ってきた。

 恋愛関係で大問題を抱えていた俺には効きすぎる皮肉であった。

 それをわかって言ってるんだから七海さんも人が悪い。


「そうっすよ。それよりも早く天音先輩と仲直りしたらどうっすか? 私修羅場とかごめんですよ?」


「修羅場とかなんないだろ。なんで俺が七海さんと話してるだけで修羅場になるんだよ。あははは」


「本当そういうところだと思いますよ? 本当に!」


「なんで怒ってるんだよ」


 理不尽ではないだろうか?

 俺は特に七海さんに対して悪いことをしていないはずなのに。


「それが分かってないから怒ってるんですよ!! 全く先輩と話してると疲れます」


「ええ~そんな理不尽な」


「いいから先輩はくだらないことはやめて天音先輩と仲直りしてくださいよ」


「だから、喧嘩してないって。そもそも永遠が俺なんかと喧嘩するわけないだろ?」


「……もういいっす。今日家でゆっくり話し合ってください」


 家で話し合う?

 そんなことをするつもりはないけどなんだか七海さんの顔が怖い。

 こういう顔をするときは大体よくないことを考えているないしはする前兆だ。


「それでは私はこれで失礼しますね。一応アドバイスです。しっかり今日自分から話し合ってください。これは最後警告です」


「最後警告?」


「では」


「あっちょっと!?」


 七海さんはそれだけ言い残して屋上を去ってしまった。

 一体何だったというのか。


「寒いな。俺もそろそろ教室に戻るかな」


 七海さんの言った事は気にはなるけどどうせ考えてもわかんないだろうし今は気に止めておくくらいにしよう。

 はぁ~午後の授業も頑張らないとな。


 ◇


「お兄私から少し話があります」


「どうしたいきなり。飯が終わってすぐの時間に」


「お兄って最近永遠姉さんのこと避けてるの?」


「なんだよいきなり」


 避けてるか避けてないかで言えば確かに避けてるのだろうけど美空に馬鹿正直に避けてるって言ったら面倒なことになる未来しか見えない。

 なので適当にはぐらかしてみる。


「いや、別に避けてるなんてことは無いぞ? さっきだって一緒の部屋で夕飯食べたじゃないか」


「それはそうだけど、家じゃなくて学校でって意味」


「確かに最近永遠とは昼ご飯は一緒に食べてはいないけどそれは俺にも予定があるってだけで別に避けてるわけじゃない」


「あくまで私には何も話すつもりが無いってこと?」


「話す話さないじゃなくてそもそも美空の勘違いじゃないか」


 こういえば明確な証拠でもない限り引き下がるしかない。

 いくら美空でも何の根拠もなしにこれ以上は何も言ってこないはず。

 騙してるようでなんだか罪悪感が湧いてくるけどこれも永遠と俺のためだ。

 我慢するしかあるまい。


「ふ~ん。そう言うこと言うなら私も容赦しないから」


 そういってすぐに美空はポケットから黒い機械をを取り出して少し操作すると音声が流れ始める。

 ん? 待てよ。この音声は!?


「なんで美空が七海さんと俺の会話内容の録音なんか持ってるんだよ!?」


 流れ始めたのはここ一週間七海さんと話した内容についてだった。

 それも俺が永遠に関することを話したときだけ音声が流れていてそれ以外の会話はカットされていた。

 こんなことをする人物に俺は心当たりが一人しかいない。


「嵌めやがったな、七海さん」


 俺は小声で怨嗟を吐き出すことしかできずに美空の前で縮こまる。

 これではお説教されている子供ではないか。

 だが、気分は完全に説教をされている子供なので仕方ない。


「それで、もう一回聞くけど永遠姉さんのことを避けてるよね? 最近」


「……」


「沈黙なんかで逃げられると思わないでね? 今の私結構怒ってるから」


 珍しく美空はとても不機嫌そうな声でそういってくる。

 本当に不機嫌なんだな。


「えっと、まあ、はい。避けてるというよりは距離を置こうと思っただけなんですけど」


「距離を置く? 一体何で?」


「それは……」


「答えなさい。いくらお兄でも本当に怒るよ?」


「……わかりました」


 それから俺はほとんど七海さんに話した内容と同じ話を美空にもした。

 最近永遠のことが頭から離れないこと。

 そのせいで自分がなにかやらかさないか怖いこと。

 だから、この感情が消えるまで永遠から距離を置こうとしていたこと。

 これらを正直に話した。


「お兄は本当に鈍感で馬鹿で人の気持ちなんて何もわかってないんだね。はぁ我が兄ながら救いようがないというか、永遠姉さんに申し訳なくなってくるよ」


「そこまで言わなくてもいいだろ」


「いや、言うよ。それだけお兄はやばいことしてるんだから」


 心底呆れたというように首を横に振ってため息をこぼす。

 一体なんだというんだ。


「というわけなので後は当事者同士で話し合ってください」


 言いながら美空はポケットからスマホをとりだした。

 画面を見てみれば通話中と表示されておりその相手は……


「そうね。今からそっちに向かうから空が逃げないように捕まえておいて頂戴」


「了解です」


 美空は返事をするとすぐに俺のことを拘束してきた。

 どうやら今美空に話した内容は全て永遠に筒抜けだったようだ。


「さて、あきらめて二人でしっかり話すんだね」


 どうやら完全に詰みのようだ。

 それから永遠が部屋に来る少しの間俺は処刑台に上る受刑者のような気分で永遠を待つのだった。

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