第61話 絶叫!?ジェットコースター
「遊園地なんていつぶりかしら?」
「俺も最近は全く来てなかったな」
「私もだよ~この三人で来れて嬉しいな」
休日、遊園地にたどり着いた俺たちはそれぞれの感想を言い合っていた。
遊園地なんて小学生時代に数回来た程度だろ。
だからかあまり記憶にない。
「早速回ろうよ! 時間は有限だよ!」
「それもそうね。行きましょうか空」
「だな。まだ早い時間帯ではあるけどもたもたしてたらあっという間に夜になっちまうな」
遊園地というのはそういうものだ。
並ぶ時間のほうが長くてアトラクションを楽しむ時間のほうが少ない。
二時間並んで三分程度のアトラクションを楽しむのだ。
もし、一人なら苦痛過ぎて早々に帰宅する自信があるが今日は一人じゃない。
最愛の妹と永遠。
この二人となら並んでいる時間も楽しいだろう。
「まずはなにに乗る? ジェットコースターとか?」
「俺は構わないぞ? 永遠はどうだ?」
「私も構わないわ。昔来たときはジェットコースターはならなかったから気になるわね」
「じゃあさっそく行こう! 早めに行って並ばないとね!」
美空は終始はしゃいでいて見ていてとても微笑ましい。
永遠もそんな美空を見て微笑んでいる。
やっと平和が戻ってきたって感じだな。
◇
「それにしても人が多いわね」
「そりゃ結構有名な遊園地だし、しかも休日だからね」
「それもそうね。一人の時には絶対に来たくないかもしれないわ」
「それは俺も同じだな。絶対に嫌だな一人は」
「そんなの私も一緒だよ~こういう所は中に良い人たちと来るから楽しいんだよ!」
全く持って美空と同意見だな。
こんな長い並び時間を一人で来るなんてやはり苦痛だ。
「まあ、今はそんなこと考えても仕方ないからみんなで楽しもうよ!」
「そうね。せっかく来たんだから楽しまないと損よね」
こうしてみると美空と永遠は姉妹のように見える。
永遠はあまりにもスペックが高すぎるから俺の妹って感じではないけど。
「そんなに私たちを見てどうしたの?」
「いや、少し考え事をしてたんだ。気にしないでくれ」
「また厄介ごとかしら?」
「いいや全然そんなことは無い」
永遠に見惚れてたなんて言えるわけないんだよな~
見た目は完全に俺の好みドストライクだし。
白銀の長髪に澄んだ空のような綺麗な青い瞳。
身長は少し高めでスタイルもいいと来た。
それに加えて内面もいいと来たんだから惚れないほうがおかしい。
これが叶わぬ恋じゃなければよかったんだけどな。
まあ、俺みたいな人間がこの子のそばにいられるだけで幸福と考えるべきだろうが。
「そう? ならいいのだけど」
「お兄、永遠姉さんそろそろ私たちの番だよ?」
「おっ! やっとか」
「早く行きましょう。待たせては悪いわ」
こうして俺達三人はジェットコースターに乗り込む。
二人掛けのシートにどういう順番で座ろうかと思っていたのだが美空が「私は一人でいいからお兄と永遠姉さんで座りなよ!」と言ってくれたので隣のシートには永遠が座っている。
「……緊張してきたわ」
「珍しいな。永遠が緊張するなんて」
「別に珍しくもなんともないわよ。初めてのことに緊張するなんて普通のことでしょう?」
「それはそうなんだけどね」
今まで永遠にはいろいろ助けられてきたけどそのどんな状況でも永遠は堂々としていてかっこよかった。
普通の人が緊張して固まってしまうような状況でも永遠はずっと堂々としていた。
「空は少し私のことを買い被りすぎよ。私はそんなに大層な人間じゃないわよ」
「そんなことないと思うけど」
「そんなことあるわよ。空は唯一私の弱い部分を知っている人間なのだからね」
弱い部分か。
それはきっと空音さんのことを言っているのだろう。
俺は顔も見たことは無いけど空音さんの話をする永遠はとても優しい顔つきをしていた。
話でも聞いた通りきっとかけがえのない存在だったのだろう。
「それでも永遠は俺にとって尊敬できる人物だよ」
「そういってもらえてうれしいわ。これからも空に尊敬されるような人間であれるよう頑張るわ」
「そのままでも十分尊敬してるけどね」
俺たちは苦笑しあいながらジェットコースターが出発するのを待つ。
すぐにアナウンスとともにジェットコースターが出発する。
今乗っているジェットコースターはかなりの高度から急降下するタイプでシンプルではあるがそれゆえにスリルも抜群という代物だ。
「ちょっと待ってちょっと待って!? 高くないかしら? ねえ空これ高くないかしら」
「高いね。まあ、ジェットコースターってそういうもんだし?」
「それはそうなのだけど! そうなのだけど~」
隣に座る永遠はかなり動揺していた。
いつものようなクールな雰囲気は息をひそめて今は年相応の女の子といった印象を受ける。
「え!? まってここから落ちるの? 噓でしょ~」
「ほら来るよ! あはははは~」
「いやぁ~~~」
次の瞬間隣から可愛らしい悲鳴が響き渡った。
初めて聞く永遠の悲鳴は一生忘れることが無いと思う。
◇
「……酷い目に遭ったわ」
「え~楽しかったじゃんか! もう一回乗ろうよ!」
「それは勘弁して頂戴。もう乗りたくはないわ」
永遠は顔を青くしながらそうつぶやいた。
どうやら初めてのジェットコースターがかなり堪えたらしい。
「美空やめてやれ。多分これ本当に苦手な感じだから」
「む~さすがに無理強いはできないね。じゃあ次はコーヒーカップにでも乗ろう!」
「それなら永遠も行けそうか?」
「ええ。ジェットコースターじゃなければ何でもいいわよ」
「じゃあ行こう!」
相変わらず元気な美空とは対照的に永遠はぐったりしている。
これは、もうジェットコースターには乗らないだろうな。
あまり見ない永遠の姿を見て物珍しく思いながら俺は二人についていった。
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