第58話 退学後の悟
「なんで俺が退学なんかに。これも全部あいつのせいだ」
空の野郎が余計なことをしなければこんなことにはならなかったのに。
全部あいつが俺から奪っていった。
ゆるせねぇ。
絶対に殺してやる。
いや、それだけじゃ生ぬるい。
あいつの大切なものを全部あいつの前で奪ってあの顔を絶望に染めてから殺してやる。
「あいつの大切な物ってなんだ? 今までは瑠奈だっただろうけどそれはもう俺が奪ったしな」
あいつの帰る家も学校での居場所も彼女も全部奪ってやった。
あいつには今何が残ってる?
「そういえばあいつはどこに住んでるのかっていう疑問はそのままにしてたっけか?」
あいつが家を追い出されたのは知ってる。
だが、あいつはその後も普通に学校に通っていた。
何処かに拠点があるはずだ。
まずはそこがどこかを知る必要があるな。
「どうせ両親は俺に関心なんか無いだろうし好きかってやらせてもらうぜ」
仕事が忙しいらしく最近は全く顔を見てねぇがまあいつものことだな。
「まあ、しばらくは警戒されてるだろうからおとなしくしとくか」
流石にこんな事件を起こしてすぐはあのバカも警戒してるだろうし。
ちっやることがねえな。
◇
「なんで俺がこんな目に遭わないといけねえんだよ」
退学してから数日
スマホの通知が鳴りやまねえ。
メッセージを送ってくるには全部野球部の人間からだ。
やれお前のせいで甲子園に行けなくなったとか、俺たちの青春を返せとか。
全く鬱陶しいぜ。
誰のおかげでこんな弱小校が甲子園に行けたと思ってんだよ。
「それに甲子園に行けなくなったのは教員のせいだろうが。なんで俺が責められないといけないんだよ」
どう考えても俺は悪くないだろ?
そもそも俺がいなけりゃそもそも俺がいないと甲子園に行けない弱小校だったくせに何が青春を返せだ。
なめやがって。
イライラして仕方がない。
だが、何よりも一番イライラするのは空の野郎のことだ。
「あんな写真や動画まで撮りやがって復讐のつもりか。クソが」
あいつのせいで俺の華やかな人生は終わりを告げた。
許せねえ。
それをしたあいつがのうのうと楽しく生きてやがるのが気に食わねえ。
「絶対に復讐してやる」
だが、問題はどんな方法で奴に復讐するかということだ。
「まあ、やっぱり最初はあいつが今どこに住んでるのかを調べるのがいいな」
少し時間を置く必要はあるがその間はあいつの周りに事でも調べてればいいだろう。
復讐するには相手のことをしっかり知っておかないとな。
今度は絶対に下手は踏まねえ。
絶対にあいつを地獄のどん底のさらにそこに叩き落してやる。
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