第52話 人気者?
「なんもないんかい」
めちゃくちゃ警戒して美空を学校に送り届けたけど一切つけられてるような気配は感じられなかった。
「良いことでしょう? 何もないのは」
「いや、そうなんだけどさ。めちゃくちゃ警戒してたから何もなくて拍子抜けしたっていうか」
「まあ、それはそうね。私もずっと意識はしてたけどつけられてるみたいな感じは一切しなかったわ」
「だよね」
どうやら永遠も意識してくれてたらしいけど何も感じなかったらしい。
俺達素人ではやっぱり手詰まりか。
こりゃ七海さんの調査に期待するしかないな。
「とりあえず俺たちも学校に行こうか。下手にもたもたしてると遅刻しちまう」
「そうね。まだ時間に少し余裕はあるからゆっくり行きましょう」
「りょーかい」
のんびりと再び電車に乗り込んで学校に向かう。
その間も特につけられてるような気配はなくて安心すると同時に妙な違和感を感じたけどそれは深く考えないようにした。
◇
「おはよう柳君」
「おはよう一ノ瀬さん」
席に座って挨拶を交わす。
すっかりこれも日常としてしみ込んできた気がする。
「なんだか大変だったみたいだね柳君」
「まあね。でも本当に大変な思いをしたのは永遠だから」
「呼び方替えたんだね? 天音さんのこと」
「あ!? えっと……まあな」
ついいつも呼ぶみたいに名前で呼んでしまった。
どうしよ、ついこの間ばれないようにしようって決めたばかりなのに。
「いいと思うよ! 二人は付き合ってるわけだしいつまでも苗字で呼ぶって言うのはね」
「あ、ああ。そうなんだよ」
背中に嫌な汗が流れてくる。
一ノ瀬さんはこういうことを広めなさそうだけど今度からは気をつけないとな。
「でも、最近退学になる人多いね。藤田君に続いて三人も」
「あいつらは完全に自業自得だろう。退学になって当然だ」
「それはそうだね。女の子に無理やり迫るなんて許せないよ」
「本当にな」
どうやらこの前の一件は広まっているらしく一ノ瀬さんも知っていた。
てことは、全校生徒に広まっていてもおかしくはないんだろうな。
「でも、すごいよね。そんな現場に出くわして天音さんを助けるなんて。柳君の評判結構上がってるんだよ?」
「そりゃまたなんで」
「だって絶体絶命の学校のマドンナを助けたってことが広まったんだから評判も上がるんじゃない? それに柳君結構イケメンだし」
「そうなのか?」
自分の顔がいいなんてあんまり思った事無いんだけどな。
言われたこともなかったし。
「そうだよ~最近は狙ってるって女の子増えてるんだから」
「冗談はやめてくれ。ほら先生来たぞ」
「む~冗談じゃないんだけどな」
◇
「なんか、不愉快ね」
私は人生で一番不愉快な気持ちを味わっているのかもしれない。
理由は簡単。
目の前の光景が気に食わないからだ。
「なんで空が女の子に囲まれてるのよ」
お昼休みに空が来るのが遅かったから見に来てみれば空が女の子に囲まれてた。
理由はわかんないけど物凄く不愉快。
ネクタイの色からして大体が一年生。
「柳先輩連絡先教えてくださいよ~」
「あっ! ずるい私も」
「えっと、俺約束あるから通してほしいんだけど……」
「え~じゃあ連絡先教えてくださいよ!」
「……」
どうしよう。
すごくイライラしてきたわね。
家に帰ったら一発くらい空を引っ叩こうかしら。
「あれ? 天音先輩こんなところで何して、ひっ」
「どうしたのかしら? 杉浦さん」
「い、いえ。少し柳先輩に用があってきたんですけどあれはいったいどういう状況っすか?」
「私が知りたいわよ」
「で、ですよね~。ちょっと先輩引っ張ってきます!」
そういって杉浦さんは囲まれてる空のもとに歩いて行って腕を引っ張って連れてきてくれた。
「痛い痛いって七海さん!?」
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