第50話 ストーカー事件!?
あれから三週間
特に何事もなく日常は過ぎていった。
学校内でも変に襲われることなく両親も何の干渉もしてこない。
ごく普通で平凡な日々。
「あんな事件があったなんて嘘みたいだよな」
「そうね。そういえば男子三人は少年院に送られることになりそうよ」
「そうなのか?」
「ええ。ほかにもいろいろと悪いことをしていたらしくてね。後藤さんが徹底的に調べ上げたらしいわ」
さすが後藤さん優秀だ。
いつもはやさしい後藤さんも今回の一件ではかなりご立腹らしく、あいつらの人生を終わらせるレベルで様々な証拠を集めたんだろうな。
なんか、想像できる。
「三人はわかったけど瑠奈はどうなったんだ?」
今の言い方的に瑠奈は少年院送りにはなっていないのだろう。
でも、あんな事件を起こして無罪なんてあり得るのだろうか?
「堀井さんは精神病院に入ることになりそうなのよね。もう検査を受けて精神病を患っていることが分かったらしいわ」
「……そうなんだ」
それが分かったからって同情はできない。
やったことがやったことだしそもそもその前に俺は浮気されて冤罪まで流されている。
そのことを忘れるつもりなんてないのだから。
「ええ。しばらくは出てこれないんじゃないかしら? 男子生徒三人も同様にね」
「ならよかったよ。逆恨みとかで襲われたらたまったもんじゃないしな」
「それもそうね。とりあえずはあと少しで春休み。ぜひとも平穏に過ごしたいところだわ」
「全くだよ。今年は始まって早々いろいろありすぎたからね」
思い返してみれば永遠と出会ったのも今年に入ってからなのだ。
なんだか、そんな気はしないな。
もっとずっと前から一緒にいたような感覚だ。
「まあ、あんな事件そうそう起こらないわよ」
「うん」
なんだか、ここまで言うとフラグになりそうな気がしてならないんだけど……
「お兄、相談があるんだけど」
「どうした?」
そんな話をしていると美空がリビングにやってきた。
深刻な顔をしているので相談というのは結構重めのものかもしれない。
姿勢を正して美空に向き合う。
「私は席を外したほうがいいかしら?」
「ううん。永遠姉さんにも相談に乗ってほしいから聞いてくれると嬉しいかな」
「そういうことならわかったわ。美空ちゃんも座ったら?」
今、俺と永遠はリビングにあるソファーに座っているから美空もソファーに座るように永遠が促す。
「うん」
やっぱり顔色は優れてなくて相当な出来事があったんだと思う。
どうやら平穏なんて簡単には享受できないらしい。
「それで、何があったのか聞いてもいいか?」
「うん、それが最近私つけられてるみたいなの」
「つけられてるっていうのは、ストーカーということかしら?」
永遠が怪訝な顔をしながら美空に問いかける。
どうやら永遠も美空の様子から、ただ事ではないと感じ取ったらしく真剣に聞いている。
美空に真剣に寄り添ってくれてありがたい。
俺はどうしても性別の違いがあるからわからないことも多い。
その点永遠なら同性だし美空からも慕われてるから安心できる。
「多分。詳しく姿を見ていないから、本当につけられてるかはわかんないんだけど」
「なるほどな。いつからだ?」
「つい最近。三日前くらいからつけられてるかもって感じてたんだけど、確信に変わったは今日かな。人通りの少ない道を歩いてたんだけど、その時に後ろから一定間隔で足音がずっとなってたの」
怖いな。
どう考えても十中八九ストーカーじゃないか。
「それは怖いわね。でも、どうしたものかしら。ただストーキングされてる主張だけだと警察は動いてくれないことが多いのよね」
それは俺も聞いたことがある。
警察は何か実害が起きてからしか積極的に動いてはくれないと。
でも、この状況で俺はどういう対応を取ればいいのかわからない。
とりあえず、送り迎えでもするか?
「とりあえず、行きと帰りは一緒に行こうか。ごめん永遠」
「何謝っているのよ。あなたの判断が正しいわ。私も一緒に行ってあげるから謝らないで頂戴」
「いいのか?」
「当り前じゃない。美空ちゃんはわたしにとっても妹みたいなものよ。三人で一緒に登下校しましょう」
「ありがとう! お兄、永遠姉さん」
そういうわけでしばらくは三人で登下校をして様子を見ることにした。
俺は俺で少しだけやることが増えたな。
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