第48話 救いようのない保護者達
「そもそも、あなたがたのご子息が退学にならなかったとしても、どのみち裁判にかけられて少年院などに送られることになりでしょう。そうなればもちろん学校に通う事なんてできない。それを理解されていますか?」
後藤さんは俺が今まで見たことないような怖い表情をしながら淡々と話していた。
その声音からは一切の温度が感じられず、冷徹な人間かのように見えた。
「「「……」」」
後藤さんがそういうと先ほどまで騒いでいた保護者たちは一斉に黙りこくってしまう。
それほどの威圧感が今の後藤さんにはあった。
「おかしいでしょ! なんで私が少年院なんかに入れられないといけないのよ! 悪いのは全部そこにいる女じゃない! 私の空を洗脳して自分のものにしようとして!」
保護者が黙ったら次は瑠奈が喚き始めた。
「おまえ、いい加減に!」
俺が瑠奈を怒鳴ろうとした瞬間、俺ではない声で瑠奈が怒鳴られていた。
「いい加減にしなさい! ずっとそんなことを言って! 空君があなたに冷たいのなんてあなたが空君にした行為を考えれば当たり前じゃない! 天音さんも空君を洗脳なんてしていないでしょうし、いったいどういう思考回路で空君が洗脳されたと思ったのかしら? もう私にはあなたが何を考えているのか一切わからないわ」
瑠奈の隣に座っていた瑠奈のお母さんがそう瑠奈を怒鳴っていた。
やはり、常識のある人間のようだ。
娘がなんでこう育ったのかは疑問が残るけど。
「うちの娘が本当にごめんなさい。天音さん、それから空君も」
おばさんは俺たちに向かって深々と頭を下げていた。
本当に申し訳なく思っているようだ。
「いえ、おばさんが謝ることじゃないですよ」
「そうですよ。頭を上げてください」
2人しておばさんをなだめていると他の保護者たちはそれぞれ同じ行動をとり始めた。
「そもそも堀井さんが私たちの子供をそそのかして、この事件を起こさせたんじゃないですか!」
「そうですよ! 私たちの子供に罪はないわ!」
「そうよそうよ!」
この人たちは一体何を考えてるのか?
ふざけているのだろうか?
この人の言っていることが間違っていることくらい小学生でもわかる。
「何を言っているんですか? 男子生徒三名は実行犯。最も罪を問われるべき人間です。堀井さんは確かに唆したのかもしれませんが実際に行動に移してはいません。教唆しただけです。教唆もいい行いではありませんが実行犯よりは幾分かマシでしょう? たちは悪いですけどね」
後藤さんが心底呆れたように補足してくれた。
この期に及んで瑠奈だけに罪を着せて自分たちが助かろうとするなんてイカれてる。
「え~っとこれ以上話す必要ってあるっすかね? 学校側の処分はもう決まってて天音先輩に対する謝罪等は後ほどできる。もっと言えばこの人たちはいらないっすよね? もうとっとと警察の方に連れて行ってもらった方が良くないっすか? これ以上続けても何の生産性もないでしょう?」
七海さんもどうやら呆れているらしく、めんどくさそうにそういった。
俺もこの意見に至っては全くの同意だ。
これ以上この場にいても不快になるだけだし天音さんもいい気はしないだろう。
「そうですね。これ以上無いのであればそうしてもらうほかありませんが保護者の皆様は何かありますか?」
司会を務めている教頭が保護者たちを見据えてそういうが保護者たちはだんまりを決め込んでいた。
どうやら何も言うことが無いらしい。
「では、話し合いはこれにて終わりといたします。では、後のことはお願いいします」
「承りました。では、あなた方はこれからわたしと一緒に署までご同行お願いします」
警官がそういって保護者たちと加害者たちはそれについていく。
「後藤さん、後ほどお話を伺います」
警官はそう言い残して会議室を出て行った。
とりあえずは無事に終わったと考えてもいいのだろうか?
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