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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第45話 縮まる距離

「じゃあ、私は部屋に戻るね。お休みお兄永遠姉さん」


「おやすみなさい。美空ちゃん」


「お休み美空」


 夕飯を食べ終わって少し時間が経ち、それぞれがぼちぼち部屋に戻る時間帯だ。

 俺もそろそろ部屋に戻るか。

 明日のことについては天音さんに話したから俺が話すことは無い。

 俺も明日どういう対応をするか考えないといけない。


「じゃあ、俺もそろそろ部屋に戻ろうかな」


「待って!」


「え……?」


 俺が部屋を出て行こうとしたら天音さんに腕を掴まれた。


「……今日は一緒にいてほしい」


 天音さんは目を潤ませながら腕の裾を掴んできている。

 その手は少し震えている。


「わかったよ。どう一緒にいればいい?」


 流石に一緒のベッドで寝るなんて言うことは無いだろう。

 一緒の部屋にいるとかか?

 だとしたら俺は一睡もできないわけだがそれでもいいだろう。

 考えをまとめるのにはむしろちょうどいい。


「一緒に寝てほしい。同じベッドで」


「うんだよね。じゃあ、俺は椅子にでも座ろうかなって、え!?」


 天音さんは今なんて言った?

 同じベッドで?


「……え?」


「だから同じベッドで寝てほしいって言ったの! 何度も言わせないでくれるかしら!」


 天音さんは顔を真っ赤にしながら俺の胸をぽかぽか叩いてきた。

 ちょっとかわいい。

 いや、めちゃくちゃ可愛い。

 てか、同じベッド?

 絶対俺寝れなくない?


「わかった。それは良いんだが先に部屋で風呂に入ってきてもいいか? あ! もちろん変な意味ではないぞ? 今日はまだ風呂に入ってないからであって」


「わかってるわよ。そういう面ではあなたを信頼しているし、そもそもそうでなかったら私はあなたをこの家には泊めていないわ」


「……確かに」


 そういえば最初に住まわせてもらう時に試験がどうとか言ってたような気がする。

 詳しくは覚えてないけど。

 なにかを試されていたのは確かなのだろうな。


「そういうわけだからいいわよ。できるだけ早く戻ってきてくれると嬉しいわ」


「わかった。最速で入ってくるよ」


 俺は心臓が張り裂けるような錯覚を抱きながら天音さんの部屋を後にした。


 ◇


「戻ってきたよ」


「おかえりなさい。早かったのね」


「そりゃあね。最速でって言ったし」


 心臓は未だに高鳴っている。

 正直鼓動が速すぎて心臓が痛いくらいだ。


「じゃあ、行きましょうか。さすがの私も今日は疲れたわ」


「だろうね。さすがにあんなことがあって疲れて無かったらそれはそれで心配だよ」


「それもそうね」


 2人で何てことない話をして気を紛らわせる。

 天音さんは先ほどと違ってすました顔をしている。

 もしかして、緊張してるのは俺だけなのか?

 だとしたら、なんだか複雑な気持ちだ。


 ◇


「じゃあ、電気消すわよ?」


「ああ」


 ベッドに入った後に天音さんが部屋の電気を消す。

 どうしよう。

 本当に心臓が潰れそうだ。


「ねえ、空」


「なに?」


 隣り合って寝ている天音さんから声をかけられる。

 結構広いベッドだから体が触れ合うようなことは無い。

 それでも、隣に天音さんが寝ているとなると否応なしに意識してしまう。


「私はね、今まで危険とは程遠いところで暮らしてきたの。幼稚園、小学校は送迎してもらっていたの。中学校でも特にこれといった危険もなく過ごして来たわ。唯一の悲劇といえば空音の事件でしょうね。でも、それは私の精神を傷つけた物であって私が直接的な害を与えられたことは無いの」


 なるほど。

 天音さんはやはりかなり裕福な家庭で過ごしてきたのだろう。

 でも、多分天音さんの両親は忙しいか何かで家に帰っていなかったのもかもしれない。

 俺が言えたことじゃないけど対人関係が乏しかったのはそれが理由かもしれない。


「だから、今回襲われそうになった時本当に怖かった。初めてあそこまでの恐怖を感じたの。だから、空が助けに来てくれた時本当にうれしかった。それと同じくらいに安心したの」


「あれは本当に偶然だ。俺があの場に行けたのは七海さんが情報をくれたからだ。何より今回の一件は俺がすべて悪い。天音さんを一人にしたこともそうだし、七海さんからもらった情報をしっかりと共有していればこんなことにはならなかった。そこにお礼を言われる権利は俺にはない」


 瑠奈があそこまでするなんて考えてもなかった。

 そういう俺の考えの甘さが今回の事件を招いた。

 いつまでも俺は甘ったれで肝心なところで抜けていてどうしようもない人間だ。


「そんなことないわ。きっとあなたが私に助言を伝えていなくても彼女はああいう強硬に走っていたと思うわ。だからあなたの責任ではない。ここまで言ってもまだあなたが自分のことを責めるというのなら私から贖罪の機会をあげる。それを達成したらあなたは今回の件で自分を責めないというのはどうかしら?」


 やっぱり天音さんは優しいな。

 俺が自分を許せるような条件をわざわざ出してくれている。

 本当にこの人は優しい。


「わかった。条件は全て飲むよ。何でも言ってくれ」


 この好意に甘えないと天音さんにむしろ失礼になってしまう。


「そう? 私から出す条件はただ一つ。あなたが私のことを名前で呼ぶことよ」


 天音さんに後ろから抱きしめられる。

 少し落ち着いていた心臓が一気に早くなる。


「そ、それだけでいいのか?」


 何とか返答したけど声が上ずっていると思う。

 恥かしい。


「ええ。気に食わなかったのよ。あの後輩の子は名前で呼んでいて私のことはずっと苗字で呼ばれているのが」


「それは、確かにそうだけど。そんなことに不満を抱いていたのか?」


「悪いかしら? それでどうするの? 私を名前で呼ぶのか呼ばないのか」


「もちろん呼ばせていただきますよ。と、永遠」


 少しどもってしまう。

 やはり知り合って少ししか経っていない女の子を名前で呼ぶのは緊張する。


「なんだか遠慮が感じられるわね? もう一回言ってもらえるかしら?」


「う……永遠」


「よろしい。今日はこれくらいで勘弁してあげるわ」


「ありがとう」


「最後にもう一つこっちを向いてくれないかしら?」


「ん? 一体何なんだ?」


 俺が無防備にも永遠のほうに寝返りを打つとそのまま抱き着かれた。


「助けてくれてありがとう」


 素直にそう感謝を伝えられる。

 ここで俺が言うべき言葉は既に決まっているだろう。


「どういたしまして」


 こうして俺たちは抱き合って眠った。

 どうやら俺もかなり疲れていたらしくしばらくすると俺の意識も沈んでいった。

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