表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/167

第44話 自己嫌悪と触らぬ七海に祟りなし

「空、今日はいろいろとごめんなさいね」


「いや、天音さんが謝ることじゃないでしょ。悪いのはあいつらだし何よりも助言をもらっていたのにも関わらずに天音さんを一人にした俺が一番悪い」


 本当に最悪だ。

 助言をもらっていたのに天音さんを一人にして危険な目に遭わせた。

 どう考えても迂闊としか言いようがない。


「それは違うわ。あなたを休ませたのは私だし何より助けに来てくれたじゃない。あの時の空は本当にかっこよかったわよ」


「そういってもらえてうれしいけどやっぱり今回の件に関しては俺が悪いよ」


 ここだけは本当に弁明の余地がない。

 もし七海さんにメッセージをもらっていなかったと思うと本当に考えたくもない。

 俺はもう誰も失いたくないんだ。


「全く、あなたのそういう自責思考が過ぎるところは治したほうがいいと思うわよ?」


「これくらい普通でしょ。それよりも天音さんが無事で本当に良かったよ」


「ありがとう。それともう少しだけ手を握っててもいいかしら?」


「もちろん。少しと言わずに気のすむまで握っててくれていいから」


 手を握るくらいお安い御用だ。

 本当に天音さんが無事でよかった。


「これからどうなるのでしょうね」


「わからない。七海さんが今佐々木先生に状況を説明してると思うけど、今後どうなるかまではわからない。けど少なくとも今回の事件に関与した四人の退学は確定だと思う。それに加えてあいつらに裁判を仕掛けるかどうかは別にしてね」


 今回の一件は学校が処理できる範疇を優に超えている。

 退学は確定としてもここから先に警察が介入してくるのはまず間違いないだろう。

 でも、裁判とかの事情に俺は明るくないからどうなるかまではわからない。


「そうね、というより杉浦さんっていったい何者なの?」


「それは俺もあんまりわかんないんだよね。父親が探偵らしいんだけどそれ以外は特に何もわかってない」


 少し前、あの厄介ごとに巻き込まれたときに聞いた話だ。

 どこまでが本当でどこからが嘘か全くわからないけど。


「本当に謎な子ね。杉浦さんは私の身に起こることを予期していたみたいだし本当に何者なんだか」


「だね。俺に言ってきた助言といい今回の証拠だって先読みが過ぎる。未来から来たって言われたほうが納得できるレベルだよ。本当に」


 ただ、何を考えているかは全くわからない。

 善人なのか悪人なのかそれすらわからない。

 今回俺たちを助けてくれた理由も何一つわからない。

 謎が多すぎて信用なんてできるわけなかった。


「でも、あの子のおかげであなたが駆けつけてきてくれたのだものね。感謝しないと」


「だね。もし、七海さんからメッセージを送られてなかったら俺は何もできなかっただろうし」


「何度も言うけど空は自分を責めすぎないでね。私は空が悪いなんて思ってないから」


「……わかった」


 それは無理な話だ。

 確かに今回天音さんは結果的には無事だった。

 でも、怖い思いをさせたし何より自分自身の詰めの甘さをそのままにしておくことはできない。

 本当に今回七海さんが気まぐれでもなんでもメッセージを送ってくれたから助けられたわけであってそれが無かったら俺は何もできずに家にいたことだろう。

 そして、すべてが終わった後にこの話を聞かされるのだ。

 そんなのは絶対にごめんだ。

 考えたくもない。


「とりあえず私は一度後藤さんに連絡するわ。今日あったことを」


「そうだね。それがいいと思う。俺も美空に連絡しておくよ。帰るのはもう少し遅くなりそうだし」


 この後どんなことが起こるかはわからないけどすぐに帰れるなんてことは無いのだろう。

 今回の件は本当に俺が悪い。

 助言云々を抜きにしても天音さんが狙われた理由は俺と関わっていたからだ。


「クソっ……」


 天音さんが後藤さんに電話をかけている間に俺は一人自己嫌悪に浸るのだった。


 ◇


「ということで今日は二人とも帰っていいぞ。話は杉浦から聞いたし証拠の映像も見せてもらった。明日加害者四人とその保護者を交えた話し合いをする。まあ、話し合いというよりは事実確認と処罰についてだ。あの四人がしたことは許されることじゃないしそのあとには警察の方に来てもらう予定でもあるからそのつもりで頼む」


「わかりました」


 七海さんにメッセージをもらい会議室に戻ると佐々木先生にそう言われた。

 どうやら、今日はこれで帰ることができるらしい。


「天音大丈夫か?」


「はい。大丈夫です。空が一緒にいてくれるので」


「そうか。柳。天音のことを頼んだぞ」


「言われなくてもそのつもりですよ」


 誰に言われなくても今の天音さんを一人にする気はない。


「そうか。じゃあ、明日二人で学校に来てくれ。さっき言ったみたいに話し合いするから」


「わかりました。では失礼します」


「失礼します」


 俺たちは佐々木先生に見送られながら会議室を後にした。


 ◇


「おかえりお兄、永遠姉さん! 大丈夫だったの?」


「大丈夫よ。心配してくれてありがとうね美空ちゃん」


「心配するなんて当たり前だよ! 本当に何もなかったの?」


「一応は。危なかったけど空が助けてくれたしね」


 家に着くなり美空が天音さんに飛びついていた。

 さっき連絡したときにある程度の事情は話してあるから相当に心配していたのだろう。

 もちろん、美空に報告するときに天音さんの許可は取っている。


「そうなのお兄!? お手柄だね!」


「別にそんなんじゃない。今回の件は俺が悪いから当たり前のことをしただけだよ」


「全く空はずっとそんなことを言って、」


「永遠姉さんお兄はこうなったらずっと自分を責め続けちゃうからあきらめた方がいいよ。少ししたら落ち着くだろうし」


 やっぱり美空は俺のことをよく理解してるな。

 本当次からはあんなことが起きないように気をつけないと。


「わかったわ。それより夕飯にしましょうか」


「私手伝うよ~」


「ありがとう。それじゃあ、お願いするわね」


 そうして二人はキッチンのほうに消えていった。


「正直、この時間ってなかなかに暇なんだよな~」


 2人が料理をしている間に何もすることが無いとなんだか申し訳なくなってくる。

 やっぱり、俺も今度料理を教えてもらおうかな。

 そう考えながらソファーに座っているとスマホが振動してくる。


「一体誰だ?」


 そんな風に口から言葉が出るけど相手なんて予想がついている。

 俺のスマホに連絡先が登録されているのは三人。

 天音さんと美空と七海さん。

 天音さんと美空はキッチンにいるからまず、電話なんかかけてこない。

 となると、七海さんか迷惑電話かの二択になる。


「まあ、タイミングから見て七海さんだろうな」


 今日の一件についての話だろうか?

 そう考えながらスマホを取り出すとやはり七海さんの名前が表示されていた。


「もしもし?」


 ベランダに移動してから電話に出る。


「遅いですよ先輩! 私が電話かけたらワンコール以内に出てください!」


「無茶言うなよ!? それで、一体何の用なんだ?」


「そんなわかりきったことをわざわざ聞かないでくださいよ。今日の天音先輩の一件です」


「まあ、だろうな」


 予想通りの話題でなんだか安心する。

 ここで下手に追加の厄介ごとが出てきたらさすがに眩暈がしてくる。


「大体わかってると思うっすけど明日の話し合いで加害者の生徒は多分一回警察に連れていかれるっす」


「だろうな。今回の一件はいたずらとかじゃあ済ませられない問題だもんな」


 というか普通にれっきとした犯罪だ。

 許される行為じゃない。


「です。それでなんですが男子生徒三人はおそらくですが少年院などに入れられることになると思います。ですけど、堀井先輩に関してはわかりません」


「どうしてだ?」


 あいつのしてきたことを考えればあいつも男子生徒と同様に少年院に送られるのが妥当ではないのだろうか?


「堀井先輩はずっと柳先輩が洗脳されたといって他のことに聞く耳を持っていませんでした。これを家庭裁判所で行われる少年審判でも言い続ければもしかしたら精神鑑定になるかもしれません」


「そうなのか?」


 確かに最近の瑠奈の様子は普通ではなかった気がする。

 といってもかかわってないからどうなのかはわからないんだけど。


「ええ。その場合無罪になるかもしれないです」


「マジかよ」


 もしそうなったらまたあいつがあんなことをしてくるのか?

 そうなったら目も当てられない。

 正直言ってマジで無理。


「まあ、どうなるかは裁判をしないとわかんないっすけどね。こういう可能性があることを頭の片隅に置いといてください。天音先輩にも情報を共有しておいてくださいね」


「わかった。君は本当に何者なんだ……」


 あまりにもいろんなことに詳しすぎてつい口から疑問がこぼれ出てしまった。


「先輩、詮索はやめなさい。私は先輩や天音先輩に危害を加えるつもりはありません。ですが、私のことを調べたりしたらその限りではありませんよ?」


 今までの可愛い声音ではなく底冷えするような冷たくて一切温度を感じ取れない硬質な声で七海さんは俺にくぎを刺して来た。


「……わかった」


「よろしい。では明日話し合いの席で会いましょう」


 そう言って七海さんは電話を切った。


「本当に彼女は何者なんだよ……」


 知りたくはあるが詮索をすれば手痛いしっぺ返しが来ることだろう。

 触らぬ神にたたりなし。

 七海さんを詮索するのはよしておこう。

 そう決意して俺はリビングに戻った。

↓にある☆☆☆☆☆評価欄を、★★★★★にして応援して頂けると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ