第158話 空君の人格形成者
「本当に空君には感謝しかないな」
「ですね。あんなに表情豊かな永遠は初めて見ましたよ。私たちは昔からなかなか永遠とずっと一緒にいてあげることができなかった。だから永遠には寂しい思いをさせてしまっていると昔から思っていましたもんね」
「ああ。でも、今の永遠は本当に幸せそうで。あんな永遠の姿を見たら空君がどんな人間なのか軽く予想がつく。修二にも七海君にも彼の素性や人間性について調べてもらったがこれといった問題もなし。性格の良い好青年だ」
「それにかっこいいですしね。彼はきっと誠実な人ですよ。優しい目をしていましたから」
「そうだな」
でも、彼は優しすぎると私は思う。世の中最低のクズなんてゴロゴロいる。少し前に空君がじわった苦痛は確かに苦痛だろうけど社会にでればそれ以上の苦痛を味わうことだってあるだろうしもっと深い絶望に落とされる時が来るかもしれない。
そんな時に立ち上がれるような子に育ってほしい。
「あなたの考えてることは理解できますがきっと彼なら大丈夫ですよ。どんな困難も苦痛も永遠と二人で乗り越えてくれる。そんな予感がしますから」
「だな。さて、私達も久しぶりに我が家に帰るかね」
「そうですね! 久しぶりに帰れるので実は少し楽しみにしてました!」
「私もだ。それじゃあ行こう」
最愛の妻と二人で車に乗り込み日本の我が家に向かう。帰ってくるのはかなり久しぶりなため私もウキウキしていた。
◇
人間の本質はそうそう変わらないと私は思う。昔から優しい人間が根っこからの悪人になることは不可能だしその逆もまた不可能だと私は考えている。
空君の本質は優しい人間だと思う。だが、なぜ彼が優しい人間に育ったのかはいささか疑問ではある。
修二の調査にも七海君の調査にも彼の人格が優れていることが報告に上がってきているがなぜ優しくなったかは謎である。
「きっと彼の性格の土台を作ったのは堀井瑠奈……か」
空君の幼馴染であり元恋人。彼を幼少期から知っており彼の人格を形成するに至った人物であると言えるだろう。
彼が成長するにはきっと彼女の存在が必要不可欠、というかしっかりした形で決別しないといつまでも空君の未練として残ってしまうような気がしてならない。
「どうしたものかな」
私は一人腕を組んで思案する。彼にはもっと成長してもらわないといけない。
そのために私が何をすればいいのか。いまだに私は悩んでいた。
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