第155話 未来の息子
「なんで婚約なの? 年齢的に私達結婚できるわよね?」
「絶対聞いてくると思った。簡単だよ。今の俺はそれなりに金を持ってるけどこの金は俺の実力で得た物じゃない。せめてこの金が全部無くなっても自分で安定した生活を送れるくらいの収入源ができてからにしようかなって。結婚する以上俺は永遠を幸せにする責任があるからな」
「でたまた責任だ。今でも空には充分に幸せにしてもらってるよ?」
「結婚したらそれ以上に幸せにしないといけないな」
結婚って言うのはそんなに簡単なものじゃないと俺は思う。何があっても永遠を幸せにできるように安定した仕事や収入を得てから結婚はしたい。でも、俺は永遠を他の誰にも取られたくはなかった。だから婚約という選択肢を取ったのだ。
「空ってバカ真面目よね。そういう所も好きだけど」
「バカは余計だろ。指輪のサイズ大きすぎたり小さすぎたりしないか?」
「うん。大丈夫。驚くくらいぴったりだよ! なんで私の指のサイズ知ってたの?」
「前に一緒に寝たときにちょっと調べてみたんだ。勝手なことしてごめん」
「そこは全然良いけど。おかげでクリスマスに最高のサプライズをしてもらえたわけだし」
そうか、今日はクリスマスだったな。つまりあの出来事を見てしまってから丸一年が経過したってことか。
一年前には深い絶望を味わっていたのに今は隣に最愛の恋人、いやもう婚約者か。
永遠がいて帰れば美空や七海がいる。幸せを具現化したような現状だ。
「喜んでもらえてよかったよ」
「すごくうれしかったよ! いつ本当に結婚してくれるの?」
「……大学を卒業して安定した職に就いたら、かな?」
「それってすごく先じゃない? 私そこまで待てるかな」
「できるだけ努力するさ。まずは大学受験から」
こんなところで躓いていたら話にならない。受験に合格して永遠と同じ大学に入って就職して職に就いて永遠と結婚する。
その結果にたどり着くまで立ち止まるわけにはいかない。どんな困難に直面しても立ち止まるわけにはいかない。
「俺は永遠を絶対に幸せにする。だから待っててくれると嬉しいな」
「言われなくても待ってるわよ。私だって空以外の男性に興味なんてないんだから」
手を繋いで家に向かう。いつもと変わらない帰路だけど変わったことと言えば俺と永遠との関係性がより深くなったことくらいだろうか。
「お熱くていいね~私は少しばかり胸が熱くなったよ」
「そうですね~永遠にもこんなに素晴らしい殿方がそばにいてくれるってだけで私は安心です」
俺たちが家に向かって歩いているといきなり声をかけられた。その声には聞き覚えがあった。つい最近聞いたことがある声だ。優しくて少し永遠に似ている声。
……永遠に似ている声?
振り返って声をかけてきた人物を見て俺は心臓が止まるかと思った。
「久遠さんにセツナさん!?」
「なんでお父様とお母様がここにいるんですか? 海外に戻ったんじゃあ?」
「いやいや、戻っていたさ。でもそろそろ年末だし。空君達の顔も見たいと思ってたから帰ってきたんだよ。久しぶりだね空君、永遠」
「お久しぶりですね空君。永遠も元気そうで何よりだわ」
少し前にあった久遠さんとセツナさんが立っていた。俺も永遠もこっちの戻っているなんて聞いていなかったからかなり驚いた。
「はい。お二人もお久しぶりです」
「二ヶ月ぶりくらいかな? 立ち話はなんだし場所を変えないか? 空君の家でいいかな?」
「大丈夫です。俺の家って言っても久遠さんに頂いたものですが」
「それはもう立派な君の家じゃないか。車で送っていくよ」
「ありがとうございます」
「ありがとうお父様」
「いいんだよ。未来の私の《《息子》》のためだ」
なんだかめちゃくちゃ恥かしいことを言われた気がするけどいったん無視をして久遠さんの車に乗せてもらうことにした。
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