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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第149話 敗戦処理

 永遠と夕飯の準備をしていたら美空がリビングにやってきた。表情はいつも通りなんだけどなんだか雰囲気が違うような気がする。

 七海に何かあったのか?


「お兄ちょっと七海ちゃんの様子を見に行ってあげて。お願い」


「え? ああ。わかった」


 明るく言われたけどとんでもない圧を感じてすぐに頷いてしまう。

 まあ、俺も様子は気になってたし見に行くのは良いか。


「ちょっと行ってくる。何かあったら呼んでくれ永遠」


「わかったわ。七海さんの事よろしくね」


「永遠姉の手伝いは私がするからお兄は七海ちゃんのことをよろしく!」


「あいよ」


 キッチンを美空に任せて俺は言われた通りに七海の部屋に向かう。体調でも悪いのかそれとも悩み事があるのか。

 どっちかくらい美空に聞いておけばよかったな。


「七海? 入ってもいいか?」


「大丈夫っすよ」


 ノックをして七海の部屋に入る。引っ越してからあまり時間は経っていないのに俺の部屋とは大違いで可愛らしい小物などがたくさん置かれていた。

 普段はクールだけど可愛いものが好きみたいだな。意外なギャップだ。


「体調は大丈夫か?」


「はい。体調に問題は無いっすよ。少しだけ悩み事があるだけです」


「それは、俺が聞いていいことなのか?」


 七海も永遠と同様に複雑な環境下で育っている。その悩みに下手に俺が介入してもいいことなのか。それがわからないから一応の確認をしてみた。


「できれば空先輩に聞いてほしいんす。聞いていただけますか?」


「もちろん。聞いていいのなら聞くよ。協力できることがあるのなら俺の出来る範囲で協力するし。前みたいな刃傷沙汰は勘弁願いたいけどな」


 出来る限り七海を安心させるようにおどけたように微笑みかける。七海の様子からして七海の悩みはそれなりに重い話を聞くことになるのだろうと予測する。


「さすがにあんな事件そうそう起きないっすよ。いつまで引きづるんすか?」


「いつまでも? とは言わないけど高校卒業までは引きずろうかなってね。冗談だよ。じゃあ話を聞いてもいいかな?」


「なんか納得いかないっすけどわかりました。聞いてくれるというならそれで十分っす」


 七海は座りなおして深呼吸をする。それだけ話すのに勇気を要するという事なのだろうか?


「空先輩、好きです」


「…………は?」


 好き、とはどういう意味で言っているんだろうか?

 好きにはかなりの種類がある。友人などに向ける親愛。

 家族などに向ける家族愛。恋人や思い人に向ける恋愛。この場合彼女はどの意味での好きと言ったのだ?

 わからない。でも、絶対に茶化したりごまかしたりしてはいけないことはわかる。


「その、なんだ。好きって言うのは恋愛対象としての好きって認識であってるか?」


 ここでしっかり確認しておかないと食い違いが生まれてしまう。そしてこういった場合のすれ違いは致命的になりかねない。


「そう、です。私は先輩のことを、柳空を一人の男性として好きです」


 今まで見たことが無いくらいに顔を真っ赤にして俯いていた。

 この様子を見れば七海が本気であることはわかる。

 でも、俺には永遠がいる。永遠のことが大好きで一生一緒にいたい。

 だから、他の女の子の気持ちに答えることはできない。


「ごめん。気持ちは嬉しいんだけど君の気持ちに答えることはできない。俺は永遠が好きなんだ。永遠とずっと居たいしクリスマスにはプロポーズしようと思ってるんだ」


 ここで変にプロポーズのことを隠すのは不誠実な気がして素直に話すことにした。

 告白をしてくれた彼女には酷な話だと思うけどこの後にプロポーズをしたことを知ったら気分が悪くなってしまうかもしれない。


「知ってたっすよ。先輩が永遠先輩の事しか見て無いことも私に可能性が全くないことも。でも、このまま胸に気持ちをためておくと後悔するって美空さんに言われて気持ちだけでも伝えようと思ったんす。先輩の気持ちも考えずにごめんなさい」


「いや、謝る必要は無い。むしろ答えられない事の方が申し訳ない」


「そんなことを思う必要は無いっす。これからも今までみたいに仲良くしてくれると嬉しいっす」


 申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でも、はっきりと言わない一線というのは存在する。俺個人としてはこのまま仲良く友人としての付き合いを続けていきたい。

 でも、それを告白を振った人間が言うのは卑怯だ。

 それは俺のエゴでしかないから。


「こんな話をしてごめんなさい」


「謝らないでくれ。それと俺からもこれから仲良くしてくれると嬉しい」


 七海はとっても綺麗な笑顔で笑っていた。両目の端に光る何かがあったけど俺はそれに気が付かないふりをして七海の部屋を後にした。

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