第145話 なんで知ってるの??
「美空テスト勉強はどんな感じだ? いい感じに進んでるか?」
「お兄! うん。まあこのまま勉強続けてれば赤点は取らなそうだよ~」
「そうか。頑張れよ!」
「ありがとう! 永遠姉ここ教えてください!」
美空は永遠の方に歩いて行った。こう見てみると本当の姉妹みたいで微笑ましい。
「空先輩あの光景すっごく微笑ましくないですか?」
「わかる。美空も永遠も楽しそうで本当に尊い。楽しそうでよかった」
というか、美空の永遠の呼び方が永遠姉さんから永遠姉に変わってるところとかちょっとほっこりしちゃうな。
「空先輩は大学受験の勉強は進んでるっすか?」
「ぼちぼちかな。大学受験の勉強をしつつ補習を受けたりしてるから順調って胸を張っては言えないかな」
「それでも空先輩はしっかりやってると思うっすよ。だから無理したらダメっすからね? 少なくとも永遠先輩と美空さんを泣かせるような真似はしないで欲しいっす」
「そんなに心配しなくてももう前みたいに無理をするつもりはないよ」
「ならいいんすけどね」
七海は少し呆れた様子で俺を流し見てくる。なんでそんな目で見られないといけないのか。
……日頃の行いかな。
◇
今日で期末テストが終わった。あれ以降も美空は七海や永遠に勉強を教えてもらっていたからきっと何とかなっただろう。
俺の方もわからない問題とかはほとんどなくて及第点といった感触だった。
「お疲れ様空。その様子だと手ごたえはあるって感じかしら?」
「ああ、お疲れ様。俺の方はまあまあかな。永遠は、聞くまでもないかな?」
「ええ。今回ももちろん満点のつもりよ。帰ってくるまでは結果はわからないんだけどね」
えへへと永遠は笑みを見せた。その顔にクラスの中にいた男子生徒数人が見惚れていたのを俺は見逃しはしなかった。
今度足でも踏んでやろう。
「じゃあ、七海と合流して帰りますか!」
「そうね。今日はお疲れ様会ってことでお昼ご飯も夕飯も豪華にしようかしらね」
「それはすっごく楽しみだな~」
今日でテストも終わりということはこれで二学期の主要なイベントが終わったということだ。あとは適当に授業を受けて終業式を待つだけとなる。まあ、俺の場合は休日は補習があるんだけどさ。それでもクリスマスイブから三が日は完全に休みだから年末はゆっくりできそうである。
◇
「やっと終わったよ! お兄~」
「だな。出来栄えはどうだった?」
「うん! 二人に教えてもらった問題とかがたくさん出たから結構いい感じだと思う! 少なくとも赤点は確実にないかな! 三人とも本当にありがとう!」
「良いのよ。美空ちゃんの力になれてよかったわ」
「そうっすよ。まあ、テストは帰ってくるまでは油断ができないっすけどね」
「うう、意地悪だよぉ~七海ちゃん」
美空はがっくりとうなだれていた。でも、テストは帰ってくるまでがテストって言うのはわからなくもないから七海に同感だったりする。
「じゃあ、今日はおいしいものを作って食べましょう! テストお疲れ様ってことで!」
「そうですね。手伝いますよ永遠姉!」
「私も手伝うっす~」
「二人ともありがと。じゃあ、行きましょうか」
「俺も何か……」
「「「空・お兄・先輩は家事出来ないから座っといて」」」
三人同時にそんなことを言われて悲しくなりながら俺はおとなしくソファーに座って待つことにするのだった。
◇
「お兄って理性の化け物か何かなの?」
「何の話だよ」
夕飯を食べ終わって永遠がお風呂に七海が自室に行って俺と美空がリビングで二人の時にいきなりそんなことを聞かれた。
一体何の話だ?
「だってちょっと前にお兄永遠姉と一緒に寝てなかった?」
「なんで知ってるんだよ」
あれは二週間くらい前のことだけど……見てたってことは無いだろうけどなんで知っているのか。
「だって次の日永遠姉がお兄の部屋から出てきたし妙に幸せそうな顔をしてたからさすがに気が付くよ。でも手を出してはなさそうだったね」
「それ、実の兄に聞くのって嫌じゃないか?」
「それはそうだけどさ。なんでかな~って思って。普通の男子高校生なら手を出してるはずでしょ。でも、お兄は永遠姉に魅力を感じてないってのはありえないからなんでかなって」
「言わないとだめか?」
流石にこういう話を実の言うもとにするのはなかなかに恥ずかしい。というか気まずい。
でもこうなった美空は絶対に引かないから抵抗するだけ無駄であろう。
「もちろん!」
ですよね。
あんまり言いたくはないけど話すしかないのであれば話すとしよう。
「責任が取れないから。もちろんそういう事をしたい欲だってあるけどそれをして永遠を傷つけることだけはしたくないからさ。それが理由かな」
「お兄って本当に堅物だよね。お兄らしくもあるんだけどさ。でも永遠姉がそういう事をしたいって思ってたらどうするの? それって結構生殺しだよ?」
「……嫌なこと聞くなよ。そう言う時は俺だって覚悟を決めるさ。永遠が幸せなら俺はそれでいいからさ」
「はぁだめだこりゃ。教えてくれてありがと。あとプロポーズ頑張ってね」
美空は肩をすくめて自室に戻っていった。俺自身も自分がヘタレだってわかってはいるけどどうしても一歩を踏み込めないんだよな。
↓にある☆☆☆☆☆評価欄を、★★★★★にして応援して頂けると励みになります!




