第135話 同居人追加
「後藤さんの伝言ですけど二人の両親について。もう問題を起こす可能性は無いといっていました。なぜかはわかりませんけど後藤さんが断言していたので間違いないかと」
「そっか」
「なんでかは七海も聞いてないんだな?」
「はい。頑なに教えてもらえませんでした。ですが、あの人があそこまで断言するというのはとても珍しいことです。その点に関しては信頼してもいいかもしれないっす」
確かに。
後藤さんはあまりそう言った事を断言する人物ではないように思える。
つまり、両親の件に関しては俺たちは気にしなくていいということになる。
何があったかは気になるけど後藤さんが七海に頑なに教えなかったということは俺たちが知らないほうがいい事ないしは知ってはいけないことという事だろう。
意識しないと忘れてしまいそうになるがあの人はそれなりに怖い人間だ。
だから、あの人がそこまでして口を噤んでいることを詮索したら藪蛇になるかもしれない。
気にはなるけど絶対に詮索しないようにしよう。
「わかった。教えてくれてありがとう」
「ありがとね! 七海ちゃん」
これで俺たちに残っていた問題はあらかた片付いた。
あとは文化祭終りに新居に引っ越して大学に合格すればそれで万事OKだ。
「じゃあ、伝言も言い終わったことですし先輩に少しお願いがあるんですけどいいですか?」
「いいぞっと言ってやりたいが内容次第だな。前に君のお願いを聞いて死にかけたのを俺は忘れて無いからな」
「あはは~その節は巻き込んでしまってすいませんでした」
「そうよ。あんまり空を危ない目に遭わせないで頂戴ね」
懐かしいな。
あの不審者の一件ももうかなり昔の話になってしまったのかと思うと時の流れの速さに驚いてしまう。
「今回は全然危ないことじゃないから大丈夫っす」
「内容を聞いても?」
「信用無いっすね」
そんなことは無いけど前科がある人間は多少警戒しないといけない。
まあ、七海がそんな嘘をつくとは微塵も思ってないから少し虐めてるだけなんだけど。
「単刀直入に言いますと私を先輩の家に泊めてもらえませんか? それもなかなか長い期間」
「は?」
俺の部屋に泊まる???
なんで?
「七海さんあなた実家暮らしのはずよね?」
「そうなんすけどこの間父親に家を引き払われて家が無い女の子になっちゃいました。助けてください」
「なにそれ!?」
普通そんなことあるのか?
いや、どう考えても普通ではないのか。
まあ、それは今度後藤さんに聞いてみるとして。
「それで、七海さんは空の部屋に泊めてほしいと? 私や美空ちゃんではなく?」
「いえ、どちらでも構いません。住めれば正直誰とでもいいんで」
「びっくりした~七海ちゃんがお兄のことを好きになっちゃったのかと思ったよ~」
「それはないっすよ。確かにいろいろ助けてもらったっすけど空先輩には永遠先輩がいるし仮に私が好きになっても空先輩は見向きもしてくんないっすよ」
「へぇ~お兄に永遠姉さんが居なかったらどう?」
美空がここで爆弾を投下しやがった。
全く今日は本当に厄日としか言いようがない。
どうしてこんな目に。
「美空脱線しすぎだ。それで誰かの家に泊めてほしいと?」
「そうっす。さすがに野宿はしんどいんで」
それはそうだ。
そろそろ本格的に寒くなってきているしこんな日に野宿なんてしたら死にかねない。
それになんだか状況が少しだけ一年前の俺に重なってしまう。
追い出されたりしたわけじゃないだろうけど家が無くなったという状況においては同じだから。
「……そんなに私のことを見つめなくても拒否したりしないわよ。七海さんには私もお世話になってるしこんな話を聞かされた後ではいさようならって言えるほど私は鬼ではないわ」
「ていうかさ。お兄が永遠姉さんのお父さんにもらった家にみんなで住めばいいんじゃないの? あそこ三人だとかなり広かったしまだまだ部屋は余ってたはずでしょ? それにもうすぐ私達も引っ越すんだから一緒に引っ越せばいいんじゃない?」
「確かに」
美空の提案はすごくいいものだった。
確かにすぐに引っ越すしあの屋敷は三人で過ごすには広すぎる。
四人でもまだスペースに余りがあるくらいだ。
「永遠もそれでいいかな?」
「もちろん! 同居人が増えることに関しては大歓迎だわ」
「ということで七海さえよかったら一緒に住もう。それまでは…」
「私の部屋に泊まればいいよ! 数日間くらいならそう窮屈にもならないだろうし」
「じゃあそれで。七海は荷物とかはあるのか? 家を引き払われたんだろ?」
家を引き払われたのなら元々の部屋にあったものなんかも廃棄されてるのか?
だとしたら七海のお父さんは相当にやばい人だが。
「あります。家を引き払う前に父が後藤さんの家に送ったらしいので」
「それって許可取ってた?」
「いえ、後藤さんはそれなりに怒ってましたよ? 私ではなく父にですけど。まあ、あの二人は昔から仲がいいみたいなんで大丈夫でしょう!」
可哀そうに後藤さん。
早めに引っ越しの手続きしないと。
「わかった。あとから後藤さんに連絡しておくよ」
こうして同居人が一人増えることになるのだった。
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