第134話 後藤礼二からの伝言
「あっ! 出てきた。結構時間かかったね」
「そうか?」
「そうっすよ。結構な時間暇だったんで」
「それは悪いな」
美空と七海はもっと早く終わっていたらしい。
まあ、2人がお化け屋敷で怖がってる姿とか全く想像できないな。
「でも、結構怖かったっすね。文化祭の出し物レベルではかなり怖かったと思います」
「だね~でも、脅かしてくるポイントが予想しやすかったからそこまでびっくりはしなかったかな~」
それは確かに。
脅かしてくるポイントは俺も結構簡単に予測することができた。
……永遠を除いて。
「そうね。案外大したことなかったわね」
どの口が言ってんだよ。
全く。
強がりでプライドが高いのは変わらないらしい。
俺の前では素直でいてくれるからいいけどな。
「ま、次の場所行くか。なんか面白そうな物あるかな?」
「探してみればいいんじゃない? 別に時間はあるし」
「そうね。といっても後二時間くらいしかないのだけどね」
お昼が終わって現在時刻は13時。
文化祭終了時間が16時なことを考えるとそこまで時間にいっぱい余裕があるわけではない。
「体育館行ってみる? 何かステージ企画があったはずだから」
「そうね。確か何か予定表みたいなものがあった気がするけど私は持っていないわね」
「俺も持ってないな」
「私も持ってないっす」
「私も」
皆予定表なるものは持っていなかったらしい。
残念である。
まあ、行ってみれば何かやってるだろう。
やっていて欲しいな~
◇
「ん~これはかなり人が多いな」
「そうね。こんなに多いと……」
「お兄違うとこ回んない?」
「賛成っす。こんなに人が多いと行く気にもなれないんで」
満場一致で体育館のステージ企画はスルーということになった。
だって人が多いんだもの。
「そういえばお兄のクラスにはまだ行ってなかったから行ってみたいかも」
「それもそうだな。ちょっと疲れたしあそこで休憩するか」
「賛成っす」
ずっと執事服を着て歩いてたからなんだか疲れた。
宣伝は十分にできただろうし目的は果たせただろう。
「あ! 柳君じゃん。どうしたの? 忘れ物?」
「いや、せっかくだから休憩でもしとこうかなって思って」
「なるほど! サービスは全くしないけどゆっくりしていってよ」
「いや、サービスしてくれないんかい!?」
俺のクラスメイトはしたたかであった。
まあ、美空相手にも俺もサービスする気は無かったから人のことは言えないか。
「んじゃ、席に案内するね。四名様で大丈夫かな?」
「ああ。それで頼む」
「四名様ご案内で~す」
クラスメイトに案内されて席に座る。
メニューにあるものを見ながら何にしようかと美空は悩んでいた。
……まだ食べるのか。
さっきあれだけ食べていたのにまだ食べれるなんて……
うちの妹の胃袋はすごい。
「空はどうする?」
「紅茶でいいかな。何か食べたいものがあるわけでもないし。というかこれ以上食べたら気持ち悪くなりそう」
「同感ね。私も紅茶にしようかしら。七海さんはどうする?」
「私はメロンソーダでいいですかね~私ももう何も入んないんで」
やっぱり普通の人間はあれだけ食べたら気持ち悪くなるらしい。
美空が少し異常なのだ。
今まで一緒に暮らしてきて全く気が付かなかった。
あいつ、あんなに食べてたっけ?
「じゃあ、注文するか」
クラスメイトを呼んで全員分の注文を終える。
「かしこまりました~それで、柳君が連れてる女の子は愛人か何かかな?」
むふふ~と笑いながら注文を聞きに来てくれたクラスメイトが盛大に爆弾を投下した。
最近俺が学校に復帰してから恋愛ネタでいじられることが増えた気がする。
別に虐められてるわけでもないし軽くいじってくる程度だからいいけどその場に永遠がいるとなると話が変わってくる。
例え妹であっても後輩であってもそんな風に言われれば彼女は嫉妬するのだ。
それを俺は最近知った。
「そんなわけないだろう!? ていうか恋人同伴で愛人とこんなところに来るかよ」
「それはそう。ていうか柳君はあんまり浮気とかしなさそうだもんね~」
「ま、お兄はそんな度胸ないでしょ」
「それはそうっすね。空先輩はそんな度胸が無いとは思いますし、結構誠実な人ですから浮気《《は》》できなさそうっすよね! 一回別れてから違う恋愛を始めることはありそうっすけど」
七海!?!?
なんでおさまりかけてたのに燃料を投下するの???
そんなことしたら俺が浮気はしないけど冷めたらすぐに別れるみたいな人間みたいになるから!?
「確かに! 柳君そんな感じするわ」
やめてやめて!?
これ以上余計なことを言わないで。
君たちの余計な発言の矛先全部俺に向けられるんだからね?
君たちは何もないと思うけど後々俺が永遠に怒られるんだからね???
「大丈夫よ。そんなことがあっても絶対に逃がしはしないから。ね? 空」
「はい! もちろんですっ! ていうか永遠は別れる気なんてさらさらないから」
「そういうとこっすよ先輩。こんなとこで惚気るのはやめてください」
「そうだよお兄! 永遠姉さんが顔真っ赤にして俯いちゃったじゃんか」
「……言わないで美空ちゃん」
永遠を顔を手で覆って完全に俯いてしまった。
これって俺が悪いの?
「あ、あはは~じゃあ、出来上がったら持ってくるからゆっくりしてて」
「ありがと」
クラスメイトの女の子は気まずそうにしながらそそくさと戻っていった。
この空気どうしてくれんだよ。
◇
「そういえば空先輩に言いましたっけ? 後藤さんからの伝言」
「ん? 聞いてないな」
注文したものが届いてそれぞれ一息をついているころに七海がいきなりそんなことを切り出してくる。
後藤さんからの伝言?
なにか頼んでることとかあったかな?
「それが空先輩たちのご両親についてです」
「……それはここで聞いても大丈夫な話か?」
「もちろんっす。じゃなきゃここでこんな話を切り出したりはしません」
「聞かせてもらってもいいかな。七海ちゃん」
美空が真剣な眼差しで七海を見据える。
俺も七海の話には興味がある。
両親の、あの人たちがどうなったのか。
盗聴器まで仕掛けてきて何がしたかったのか。
今どうしているのか。
後藤さんなら有益なことを教えてくれそうだ。
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