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恋人に浮気され親友に裏切られ両親に見捨てられた俺は、学校のマドンナに救われた  作者: 夜空 叶ト


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第133話 ラブラブお化け屋敷

「こことかどうっすか? お化け屋敷」


「いいんじゃないか? 俺はこういうの行ったことないから結構面白そう」


「うん! 私もこういうのは初めてだから楽しみだな~」


「そ、そうね。私もそれで構わないわ」


 ……永遠の手少し震えてるのか?

 怖いのが苦手だったりするのだろうか?


「さ、決まったのなら早く行きましょう」


「そうっすね。いつまでもここで立ち止まってたら邪魔でしょうし」


「だね~いこいこ」


「あ、ああ」


 永遠は率先して先に進んでしまった。

 全く、本当に大丈夫なんだろうか。


 ◇


「それでは二人一組になってこのお札を奥にある祠に納めて帰ってきてください。それではお気をつけて」


 中に入ると係の人にそう言われてお札を渡される。

 二人一組ということで組み分けは必然的に俺と永遠、美空と七海という分け方になった。


「じゃあお先に行くねお兄。永遠姉さん」


「お先っす~」


「ああ。楽しんでな。俺たちも後から行くけど」


「二人とも気を付けてね」


 七海と美空は楽しそうにしながら先に行った。

 あいつらテンション高いな~

 あれが若さか。

 一つしか歳変わらんけど。


「んで、大丈夫なのか永遠?」


「? なんの事かしら?」


「俺にまで隠さなくていいって。こういう感じの苦手なんじゃないのか?」


「……なんでわかったのよ」


「手、震えてるし。さっきの態度は少しだけらしくなかったしな」


 永遠がこういうことに率先して参加しようとするのは珍しいし永遠にしては表情が少し硬かった。

 加えて手の震え。

 俺でなくても気が付くだろう。


「空は気づくのね」


「そりゃあ彼氏だしな」


「ふふっ。頼もしい彼氏ね」


「そうでもないよ」


 そんな会話をしていると係の人がオッケーを出したのでお化け屋敷の中に足を踏み入れる。


「手繋ごうか」


「うん」


 柔らかい手の感触が伝わってきて心地がいい。

 ずっとこうしていたい。

 そう思うけどそういうわけにも行かない。


「結構本格的だな」


「そ、そうね。ひゃあああ~!?」


 文化祭にしては結構雰囲気があるしなかなかに怖い。

 そんな関心をしていると脅かし役の生徒が出てきて永遠が盛大に飛び上がっていた。

 なにこれ可愛い。


「大丈夫か?」


「だだだ、大丈夫よ! 早く先に行きましょう!」


 そう言う割に永遠はさっきから俺の腕に抱き着いて一向に動こうとしてない。

 さっきの脅かしが相当効いてるらしい。

 いつもの凛々しい感じの永遠とは違って今の永遠はすっごく可愛い。


「あの~永遠さん? 離してくれないと動けないっていうか。いや、嬉しいんだけどね? さすがにずっとここで留まってるわけにはいられないっていうか」


「わかってるんだけど、ちょっと怖くて。腰が抜けちゃって」


 マジか~

 永遠って結構怖いの苦手だったんだな。

 付き合ってもうそろそろ一年が経とうとしてるけど新たな発見だ。


「じゃあ、ちょっと失礼して。よっと」


「ひゃぁ!?」


「腰が抜けて動けないならしょうがない。歩けるようになるまでこうしてるけどいいか?」


「え、ええ。初めてされたかもしれないわね。お姫様抱っこ」


「するって言って結局できてなかったしな。じゃあさっさと行きますか」


 永遠って結構軽いんだな。

 こうして持ち上げたことは無かったからわかんなかった。

 華奢って言えばいいのかな。

 抱きしめてる時は力を入れすぎると折れてしまいそうだと思ってはいたけどこうやって持ち上げてみるとその華奢さがよくわかる。


「空って結構力持ちなのね」


「まあね。退院してから体はそれなりに鍛えるようにしてるからな。そうでないと永遠を守ることができないしな」


「そんなに私を守ることに固執しなくてもいいのよ? 私はあなたが私を守るために傷つくのは嫌だから。空が私のせいで擦り切れてしまうのを見たくないから」


「違うよ。俺は永遠を守ることに固執はしているけど傷ついてると思ったことは無い。事故に遭ったことだって永遠のせいじゃないし永遠のせいで俺が傷ついたり擦り切れたりすることなんてない。だって俺は常にそれ以上のものを君にもらっているから」


 そもそもの話、永遠が居なかったら俺はいないわけだしな。


「あなたって本当に……まあいいわ。そういう所も含めて私はあなたのことを好きになったのだしね」


「……なんだよいきなり」


「別に、いつも思ってることを言っただけだよ」


 なんだかこういうことをいきなり言われると無性に照れてしまう。

 全く破壊力がすんごい。


「そっか。俺も永遠のことが大好きだよ」


 腕の中にいる永遠の額にキスをした。


「っ///そう言うの反則だと思う」


「嫌だったか?」


「知らないっ!」


 そっぽを向いてしまった。

 少し虐めすぎてしまったかもしれないな。

 今度仕返しされるかも。


「っと、あれ祠じゃないか?」


「降ろしていいよ。もう歩けるから」


「そうか? じゃあはい」


 ゆっくりと永遠を地面に下ろす。

 少し残念な気がするけどいつまでもお姫様抱っこをするわけにはいかないし。

 今度またやろう。


「ありがとね。手は繋いでもいい?」


「もちろん」


 2人して手を繋いで歩いて祠にお札を収める。

 これで目的は達成。

 と思ったらお札を祠に収めた瞬間祠の裏から脅かし役の生徒が飛び出して来た。

 ある程度予想はできていたもののさすがにびくっとしてしまう。


「いやぁぁぁぁっぁぁ~!?」


 永遠は盛大に悲鳴をあげていた。

 これ、本格的なお化け屋敷とかに連れて行ったらどうなるんだろう?

 ……そうなったら絶対に止めよう。

 永遠のために。


「大丈夫?」


「ちょ、ちょっと大丈夫じゃないかも」


「もう一回お姫様抱っこする?」


「お願いするわ」


 また腰が抜けてしまったらしい。

 俺の恋人は案外怖がりだとさっき思ったけど度が過ぎた怖がりだったみたいだ。


「なんでお化け屋敷反対しなかったんだよ」


「恥ずかしくて」


「あの二人なら笑ったりしないだろうに」


「それでもよ。ちょっと恥ずかしかったの」


「そんなもんか。俺には正直に言ってくれても良かったんだぞ? 永遠が怖がっているのに無理に連れてきたりはしなかったのに」


「いえ、怖くはあったのだけどあなたとこういう所に来てみたかったって言うのは本当なのよ」


「そっか」


 これはなかなかに恥ずかしい。

 ここは暗いからお互いの表情は見えなかったけど見られていたらきっと俺の顔はとんでもなく赤かっただろう。


「照れてるでしょ?」


「どうだろうな。それよかそろそろ出口だけど降ろすか?」


祠まではそれなりに長い道だったが祠から出口まではすぐだった。


「じゃあ、降ろしてもらおうかしら。さすがにこれで外に出るのは恥ずかしいし」


「了解」


 さっきと同じ感じで俺は永遠を降ろした。


「お化け屋敷はどうだった?」


「空とじゃなかったら二度とこないわね」


「そんなにか」


 確かに文化祭で出るお化け屋敷にしてはレベルが高かった気がするけど全国のお化け屋敷はもっと怖いところがあるはずだ。

 絶対に永遠はそこには行っちゃいけないな。


「でも、空と一緒だったから楽しかったわよ」


「ならよかった。文化祭は始まったばかりだから楽しもうぜ」


「そうね! でも、もうお化け屋敷は勘弁よ」


 永遠は少しだけげっそりとした様子でそういっていた。

 やっぱりちょっと無理してたみたいだ。


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