第131話 この子は俺の恋人だ
「お兄さん連絡先教えてよ~」
「この後私達と一緒に回りませんか~」
「……申し訳ありません。当店はそのようなサービスは承っておりませんので」
文化祭が始まってから一時間ほどが経過した。
うちのクラスはかなり人気があるようで男性女性問わずに行列ができていた。
だが、今の感じで女性客にはずっと連絡先を聞かれたりこの後一緒に回らないか誘われたりして大変だった。
気疲れする。
「ざんね~ん」
「頑張ってねおにーさん」
「ありがとうございます」
でも、こんな感じですぐに引き下がってくれるからありがたい。
ここで食い下がられたら厄介極まりなのだ。
本当にね。
さっきから永遠に視線がすんごいことになってる。
数人は視線だけで殺せそうだけど……
「あっ! 先輩。約束通り来ましたよ~」
「いらっしゃい。とりあえず席に案内するね」
「お願いするっす」
接客をしているうちに七海が来てくれた。
表情は穏やかだからあの一件以降クラスでは何の問題もないらしい。
「じゃ、この席で。注文が決まったらまた呼んで」
「はいっす。それより先輩あれいいんすか?」
「あれって?」
七海は指をさす方向を見るとそこにはチャラそうな男に絡まれてる永遠がいた。
「なるほど。ありがと。行ってくる」
「がんばってくださ~い」
◇
「ねぇちゃんめっちゃ可愛いじゃん。このあと一緒に文化祭回んない?」
「絶対俺らと回れば楽しいからさ! いいっしょ」
「いえ、この後予定がありますので」
「そんな釣れないこと言わずにさぁ~」
「そこまでです。当店ではそのようなサービスは承っておりませんしそれ以上は迷惑行為に該当します」
男が永遠の腕を掴もうとしていたのですぐに割り込んだ。
全く嫌がってる女の子に無理に迫るなんて碌な男じゃないな。
「は? なんだお前。俺ら今この子と話してんだけど? 部外者は引っ込んでろよ」
「部外者ではありません。私はここの店員ですので」
「関係ね~よ。俺はこの子個人として話してるわけ。メイドとしてじゃなく個人としてな! だからお前は部外者。わかる?」
「そうか。じゃあ俺も執事としてではなく俺個人として話させてもらおう。この子は俺の恋人だ。ちょっかい出すな」
チャラい二人組を見据えながら俺はそういう。
自分でも驚くくらいには低い声が出た。
そりゃあそうだ。
自分の彼女にちょっかいを出されて嬉しい人間なんていない。
イライラしてしかるべきだろう。
「お前みたいなのがか?」
「笑えるな」
「全然笑ってもらって構わないがここまで迷惑行為をしたんだ。出て行ってもらいましょうか」
「そんなのお前が決める資格ねえだろ!」
「いいや。ありますよ。ね? 先生方」
俺の視線の先には腕組みをしている体育の先生がいた。
「そうだな。あなた方の行為は少し目に余る。少しついてきて貰いましょうか」
先生はそういった二人組を引きずっていった。
頼もしい先生がいてよかった。
「あ、ありがと空」
「全然。永遠が無事でよかったよ。何かあったらすぐに呼んでくれ。面倒な人が来たらすぐに俺に変わってくれていいから」
「うん。ありがと」
一件落着したところで俺は仕事に戻る。
「先輩って結構すごいっすよね? あの二人結構体格良かったのに怖くなかったんですか?」
「永遠が傷つくより俺が傷ついたほうがましだからな。それにナイフ持って追っかけてくるわけでもないしトラックに轢かれるわけでもないからそれまで怖くはなかったな」
「先輩……基準がおかしいです」
なんか七海に引かれてる気がしたけど仕方ないだろう。
今まで変な状況に陥りすぎて感覚がマヒしてしまっているのだ。
「ま、いいだろ。ビビッてなんもできないよかマシだからな」
「それはそうっすけど。あっ注文いいっすか?」
「もちろん」
それから七海の注文を聞いて厨房にそれを伝えた。
メロンソーダとパンケーキ。
普通に可愛らしいものを食べるんだなと思った。
本人には言わないけど。
◇
「二人ともお疲れ様。せっかくならその服で文化祭回ってきたら? 宣伝にもなるし」
「俺は良いけど永遠はダメ」
「どうして?」
「俺以外の子にあんまり見てほしくないから」
我ながら独占欲が強いなと思うけど仕方がない。
俺は永遠が大好きなのだから。
「ふ~ん柳君はこういってるけど天音さんはどうする?」
「……着替えてから行くわ」
「照れてる~かわいい~」
永遠は顔を真っ赤にして俯いていた。
うん。俺の彼女やっぱりめっちゃ可愛い。
愛おしすぎてヤバイ。
「んじゃ俺は外で待ってるね」
「うん。着替えたらすぐに行くね」
「お疲れ様二人とも。この後の文化祭楽しんできてね! あと柳君は宣伝もよろしく!」
「できる限りやっておくよ。それじゃ」
永遠と一緒に文化祭を回りながら少し宣伝するくらいならお安い御用だ。
あ~早く永遠来ないかな~
永遠が来るまでの間数人に声をかけられたからしっかり店のことを宣伝しておいた。
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